"半纏に縫われた遺言" 第4話
(ああ……本当に、終わってしまったんだねえ) その徹ないが、胸の真んを鋭い刃物のように貫いたが、私は表つ変えることなく、静かに部座席へと乗り込んだ。
が静かに発し、浅のを抜けした。 部座席のシートにく腰掛け、バックミラーの向こう側へと、み慣れた浅のがしずつざかっていくのを眺めていた。 40、最初のお客を迎え、最のかりを消し、夫と肩を並べて歩き続けたあの狭いが、点のようにさくなっていく。 つ角の柱に貼られた「佐々裁」のさな案内板が瞬だけ目に入ったが、がきな通りへと曲がると、またたくに界から消えっていった。
私は静かに、半纏の内側の襟元へとを差し入れた。 夫が器用な付きで、私のためにを込めて刺繍してくれた「久」という文字の凹凸が、親指の先に触れた。 末く、緒にいようというを込めて、あのが選んでくれた文字だった。 縫い目が揃いでゴツゴツとしたその触が、この孤独な瞬においては、世界で最もい約束のようにじられた。 親指でその刺繍をぎゅっと握りしめながら、私はざかっていく浅の空を眺めていた。
の席では、美が誰かと楽しそうに携帯話で話している声が響いていたが、私のには何も入ってこなかった。
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ただ、肋骨の横にしっかりと当たる、実印のい触だけが、はっきりとそこにしていた。 夫が最に私に残してくれた、武器のみ。 今に限って、そのみがずっしりと、そして何よりも頼もしくじられた。
が速に乗ると、私は窓のを流れる景をじっと凝していた。 もし彼らの言う通り箱根へ向かうのであれば、は名速に乗るはずだった。 しかし、は首都速を抜け、いつのにか方面、栃へと続く国へと入っていった。 助席の隙から、カーナビゲーションの画面に表示された目の文字が、チラリと界に入った。 そこに表示されていたのは、「箱根」ではなかった。
背筋にツッとたいものがるのをじながらも、私は決してをかなかった。 敵の俵に入ると決めたからには、ここで焦っての内を見せるわけにはいかない。 代わりに、私は窓のを過ぎっていく緑の標識を文字も逃さず、徹に目に焼き付け続けた。 栃のインターチェンジをりると、はだんだんと気のない、鬱蒼としたへと吸い込まれていった。 の両側にはい雑林が広がり、すれ違うもほとんどしなかった。
に入ってから1以る、裕は言も発しなかった。 ハンドルを握りしめる彼の両にだけ、異常なほどの力がこもっていた。
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助席に座っていた美が、鏡を見ながらを直し、ふとろの部座席を振り返った。 「お義母さん、温泉に入るに、こちらの提携している病院にちょっとだけ寄りますね。血圧とか、認能力を無料でチェックしてくれる素らしい施設があるんです。私たちが類だけもらってきますからね」
彼女の声は、驚くほど滑らかだった。 何度も、何度も自宅で練習してきた特の、自然なき継ぎをしない、淀みのない話し方だった。 私は目を半分閉じ、疲れ果てて眠っている老のふりをした。 しかし、のでは、絡まった糸を解きほぐすように、急速に考が回転していた。 (無料検診、だって? その言葉の裏にどれほどい罠があるか、40、着物のお客たちの目を見てきてきた私が、分からないはずがないじゃないか……)
さらにが30分ほどった頃だろうか。 はくねくねとした急なを登りきり、の腹にポツンと佇む、の4階建ての建物のでした。 周囲の駐のアスファルトはあちこちが激しくひび割れ、その隙から茶い雑がい茂り、建物の壁のペンキは無残に剥げ落ちていた。 正面玄関のに掲げられた、古びた板の文字が私の目にび込んできた。 「寿の里・介護施設」
自ドアがくと同に、ツンとした消毒薬の匂いと、茹ですぎた古いおむつの匂いが混ざりった嫌な空気が、腔をく突いた。
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