"半纏に縫われた遺言" 第5話
華やかな温泉リゾートの匂いとは、ほどの差があった。 私はわざと困惑した表を作り、板を見げながら裕に尋ねた。 「……裕、ここは体何の温泉なんだい? 温泉じゃなくて、介護施設じゃないか」
美がすぐにのドアをけ、私の腕を引に組み込んできた。 親しげな態度を装ってはいたが、私の腕を掴む彼女の指の力は尋常ではなく、老の力ではとても振り払うことができなかった。 「お義母さん、温泉はこの建物の裏側に、別館としてあるんですよ。ここでまず、基本な体検査を受ける決まりになっているんですから」 それは、あまりにも見え透いた嘘だった。建物の裏には、枯れた雑が鬱蒼とい茂る広い空きが広がっているだけだった。
胸がドきりときく波打った。 (まさか、とっていたことが、本当に現実のモノになるなんてねえ……) のでは激しいりが渦巻いていたが、私はそれを切顔にさなかった。 からりてロビーへ向かおうとしたその、美が私のにち塞がり、を差ししてきた。 「お義母さん、ここは精密な医療器があって磁波を遮断するエリアなので、携帯話を度私に預けなさい。これも、温泉を利用するための厳格な条件なんですからね」
美の細い指先が、ガラケーを奪い取ろうと、私の半纏のポケットのまで慮なく探りを入れてきた。
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私はわざと抵抗せず、しく彼女に携帯話を差しした。 携帯を私のから奪い取った瞬、美の目に浮かんだ、邪悪な堵のを確認することの方が、今の私にとっては遥かにだった。 やはり、この嫁の第の目は、私をこの奥に閉じ込め、の世界から完全に切りすことだったのだ。
しかし、この欲い嫁は何もらない。 3の法事の、私は桜の部の押入れの奥に、もう1台の予備のプリペイド式ガラケーを、誰にも見つからないように隠して置いてきたという事実を。
建物のロビーに歩を踏み入れた瞬、胃が雑巾のようにねじれる覚に襲われた。 そこには、目の定まらない老たちが子に座らされ、微だにせず壁ばかりをじっと見つめていた。 ロビーの片隅では、髪の痩せこけたおばあさんが、誰にも聞こえないような掠れた声で、寂しそうに子守唄をずさんでいた。 その横を、若い介護士の男が、声をかけることもなく面倒くさそうな顔をして通り過ぎていった。 その介護士の目には、を見る温かみなど微もしなかった。ただの「畜」や「物品」を管理する、徹な目だった。
40、お客様の体型や顔、その目のきだけを見て、そのに最も似う最級のを選び続けてきた私には、その差しの正体が何であるかが目で分かった。
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(ここは、を優しく介護する所なんかじゃない。を、ぬまでにさないように閉じ込める檻だ……)
裕が先にって廊をみ、突き当たりにある「院」とかれたドアをノックしてけた。 部の奥のきなデスクから、36歳くらいの若い男がちがった。 「院」と呼ばれたその男の目は、獲物を狙う商売のようにギラギラと鈍くっていた。 「ああ、佐々裕さんのお母様ですね。ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ、お掛けください」
院の声は非常に丁寧だったが、私を見るその目は、持ち込まれた商品の保状態を確かめるような、酷な目だった。 受付のテーブルのには、数枚の類が綺麗に並べられており、私が座るように指示された子は、部の入りのドアを完全に背にするように配置されていた。 万がにも、私が途で逃げさないよう、退を塞いでおいたのだ。 裕が私の背を押し、子に座るよう促した。
私は抵抗せず、しくその子に腰掛けた。 そして、懐から夫の古い拡鏡を取りし、老で文字が見えないふりをしながら、テーブルのの類のタイトルをからざっと盗み見た。 『度認障害の疑いのある患者の保護施設への制入所同』
文字、文字の黒いインクが、私の目玉を鋭い針で突き刺すかのように、脳裏へと突き刺さった。
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