"半纏に縫われた遺言" 第27話
美もまた、その信託契約の文字を目にした瞬、初めてすべての言葉を失ってを閉ざした。 自分たちがこれまで企み、実してきたすべての犯罪為が、最初から何のもない、ただの無駄だったのだという恐ろしい現実に、このようやく気付いたのだ。
3つ目。田健が、私のから冊のさな帳を受け取り、それを捜査官たちのできくいた。 私が栃の奥の施設のトイレので、毎晩、鉛の先でびっしりとき留め続けた、連の犯罪の記だった。 田健は、その帳のページをめくりながら、個のに響き渡る声で朗読し始めた。 『114、嫁の美が、母親の座から4000万円の現を、偽の指印を用いて法に引きす。……1118、院に対し、偽造委任状に使用するための、完全なる疎通能の診断の発を求め、その報酬として現入りの封筒を渡す』
付、、正確な額が、切の隙なくびっしりと記録されていた。 田健がその事実を読みげるたびに、畳のの美の顔は、へと無残に変していった。 突如、息子の裕が、畳のに自分の額を激しく叩きつけた。 ゴン、ゴン、という、鈍く苦しい破壊音が、古い造のに激しく響き渡った。 「……お母さん! ごめんなさい! 本当にごめんなさい! 会社が完全に潰れそうで、に追われて、もうどうしようもなかったんだ……! 度だけ、度だけでいいから、僕を許してください……!」
広告
息子の声は完全に枯れ果て、涙とが畳のにボタボタと混ざりって落ちていった。 に額を擦り付ける息子の額には、激しく叩きつけたせいで、真っ赤な血の跡が気に残っていた。 その隣で、美は顔を頑なに背けたまま、唇を血がるほどく噛み締めていた。 彼女が、最まで親ので泣くまいとを張っているのか、それとも、自分の犯した罪への反省が微もないのかは、裁士の私にも分からなかった。
母親としての胸の片方が、きながらにして々しく引き裂かれるかのような、極限の痛みに襲われた。 (……これが、私のたったの息子なんだねえ。私のお腹を痛めて産み、48、切に育ててきたが子がねえ……今、私の元で、畳に額を血がるほど打ち付けて、許しを請うて泣いているよ……) 48歳になった息子の、乱れた部を見つめると、そこには髪がチラホラと、しそうに混ざりっているのが見えた。 あの息子の髪の毛本本も、かつて私が懸命に働き、ご飯をべさせて伸ばしてやった、私の命の欠片だったのだ。
親の胸というものは、子供がどれほどの罪を犯して悪になろうとも、その子が痛みを訴えれば、自分の胸も緒に激しく痛むように来ているのだ。 しかし、私は今、その母親としての激しい痛みを、喉の奥底へと完全にみ込まなければならなかった。
広告
ここで私がの親のに流され、この息子を簡単に許してしまえば、夫が命をかけて守ろうとした、あのな孫娘の桜の未来が、連の欲によって瞬で消しられてしまうのだから。
私は、のの裕の姿を見ろした。 線を逸らすことなく、い、ただたく見ろし続けた。 息子の背が激しく震え、子供のように啜り泣くその声が、私の胸の奥を激しくえぐり続けたが、私の職の目は、決して逸らされることはなかった。 私は息を吸い込み、彼らに向かって、最の向けの言葉を放った。 「……裕。あんたたち夫婦はねえ、今すぐ破産しなさい。おたちが犯した罪のさの分だけ、の底まで落ちて、どこまでも無様に転がり続けなさい」 私は呼吸置き、さらに酷に言い放った。 「……私の仕事の、絹のの端切れ枚だってねえ、おたちの汚い命綱には、絶対に貸してやらないからね」
部のが、私の言葉のに、しんと静まり返った。 裕の激しい嗚咽の声だけが、料亭の古い造ののへと、たく染み込んでいった。 私は踵を返し、度も息子の顔を振り返ることなく、襖をけて個からてった。 ドアを閉めるまさにその瞬の、背から「……お母さん……っ!」
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
二十人分の祝い膳を押しつけられたので、家を出ました
義母から「家族のお祝いだから」と押し付けられたのは、二十人分の料理作りと高額な費用負担。 夫も義妹も、私を一人の家族ではなく、都合よく使える存在として扱っていた。 五年間、我慢し続けた嫁・美咲は、ある決断をする。 それは、義妹の息子の一歳祝いの前日に、すべてを捨てて家を出ることだった。 しかし、静かに準備を進める中で、美咲は夫と義母が隠していた驚くべき事実を知る。 そこには、単なる身勝手な家族関係では終わらない、彼女を縛り続けるための計画が隠されていた。 そして迎えた祝いの日。 親戚二十人が待つ食卓に残されたのは、豪華な料理ではなく、誰も予想しなかった「空っぽの祝い膳」だった。 奪われ続けた人生を取り戻すため、美咲が選んだ静かな反撃とは――。嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 284 -
完結第16話
十字の紙片と売られた生家
「母さん、老人ホームに入れ。この家も売る」息子夫婦はカナダ移住を前に、相場の半値以下の査定書と山奥の隔離施設のパンフレットを突きつけてきた。共働きで多忙な彼らに代わり、十年間孫娘を育て上げ、遺産から数百万円を用立ててきた私への仕打ちがこれだった。絶望に沈む私の手に、高校生の孫娘が震えながら押し込んだのは、固く折られた「十文字のチラシの紙片」。「明日の朝までに、実印と通帳は絶対に渡さないで」。深夜二時、一人で開いたその紙には、全てを覆す戦慄の計画が記されていた。私は仏壇の隠し金庫に手を伸ばし――。祖父母と孫|介護2.4万字5 426 -
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 200 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251 -
完結第23話
義母が突然、結婚指輪をくれた
夫が亡くなった日、義母は「もう家族じゃない」と私と娘を雨の中に追い出した。それから二年、一度の連絡もなかった義母が娘の小学校入学を控えた夕暮れ、四十年間外さなかった結婚指輪を私の指に無理やり嵌めて頭を下げた。翌日、親族が集まる祝いの席で和解を受け入れようとした私の前で、義母は冷たい笑みを浮かべ、夫が生前に娘の氏の変更書類を用意していたのではないかと問い詰めてきた。私の手の中で箸が止まった。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場3.5万字5 127 -
完結第20話
長女にだけ渡された鍵
父の四十九日。「お前が一番しっかりしている」と病床の父から金庫の鍵を託された長女の私は、弟と妹の前で鉄の扉を開けた。だが中にあった私の通帳は残高一万円で、二百八十万円あった預金は弟の名義で全額引き出されていた。問い詰める私に弟は「親父に頼まれた」と父の直筆の手紙を突きつけ、妹も父と交わした別の密約を叫び始める。そこへ男が現れ、父が実家を担保に借りた五百万円の借用書を突きつけてきた。裡切られた|兄弟姉妹|相続|金銭問題|修羅場3.0万字5 92 -
完結第21話
母がナイフで砕いた自分の名前
母の七十歳の祝いで、私は家族に尽くし続けた母に自分の人生を取り戻してほしい一心から、ケーキのプレートに書かれた夫の姓を削り落とし、母の旧姓を書き直した。これで母は喜んでくれるはずだった。しかし母は青ざめ、「誰が戻りたいなんて言ったの」と私を睨みつけると、ナイフを掴んで自分の名前を何度も突き刺し粉々に叩き割った。家族全員から責め立てられた私は、母の部屋で底面を無残に削り取られた大量の人形を見つける。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係|修羅場3.1万字5 137 -
完結第19話
棺の中の男を、夫は知らない
親を捨てて逃げた冷酷な男だと親族中から罵倒される義兄の葬儀で、義母は涙を流し、夫を支えの孝行息子だと称えていた。だが焼香台へ進む夫の前に立ちはだかった私は、「あなた、本当に棺の中にいるその人を知っているの」と告げた。夫が隠していたのは、過去五年間、毎月義兄へ送り続け、そのたびに全額突き返されていた六十回分の送金記録だった。血の気を引かせる夫と親戚の前で、私はその明細を祭壇の上に広げた。兄弟姉妹|親不孝|絶縁|親子関係|修羅場2.8万字5 88 -
完結第21話
妹のドレスを二十センチ切った
妹の結婚式を数時間後に控えた深夜二時、私はリビングで特注のウェディングドレスに裁ち鋏を入れた。事故で右足に傷が残る妹に対し、相手の家族は配慮という名目で足を隠す重いドレスを強要し、当日は動かず座り続けるよう言い含めていた。母の怒声が響き、私の頬に平手打ちが飛ぶ。泣き崩れる妹の足元には、前裾だけが二十センチ切り落とされた純白の布が散らばっていた。私は鋏を置き、「今日これを着て出なさい」とだけ告げた。裡切られた|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|修羅場3.1万字5 94