"柿の木の下の守護" 第6話
「お母さん……。僕も、そろそろの理をしなければならないとっています。みさは……もう、この世にはいないかもしれないと、どうしてもうようになってしまって……」
義母がハッと顔をげた。その濁った瞳が、きなショックで激しく揺れている。 佐藤健太はその義母の目を、真っ直ぐに見つめ返しながら、言葉をさらにねた。 「法な続きとして、失踪宣告届の続きを、そろそろめておくのが、みさにとっても、お母さんにとっても、番良い選択だとうんです。いつまでも、こうして苦しいまま待ち続けるわけにはいきませんから」
彼の目から、粒の涙がぽろぽろと零れ落ちた。 それは、誰が見ても本物のしみに暮れる夫の涙にしか見えなかった。 しかし、妻の遺体すら発見されてもいないこの段階で、夫のからた「みさはもういない」という、あまりにもすぎる過形の表現は、、執の捜査記録のな項として残されることになる。
そのは、誰も彼の邪悪な図に気づかないまま、義母はただ「健太さん……」と呟き、義理の息子のをく握りしめて、しばらくの激しく泣き続けた。 する肉親を失った母親の、をよじるようなみとしみの力が、そのまま男ののに預けられた。 彼女は、目ので泣いている義理の息子の涙が、自分の流している血の涙と、全く同じ種類のものだと盲信した。
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それこそが、この事件の最も残酷な部分であった。
義母が泣きながら、義理の息子の濡れた頬をハンカチで優しく拭いてあげている、その涙の主の脳は、すでに次の法な資産移転の順を酷に計算し尽くしていた。 「75億円」という莫な数字が、彼の暗いので、ゆっくりと、しかし確実に、自分の名義へとき換えられていく。 世の々は、この稀代の犯罪者が演じる「劇の純夫」を完全に信じ込んだ。 そして、その固な信頼の台ので、悪魔の仮面はさらに固く、剥がれないように固まっていった。
それから、17という気のくなるようない歳が流れた。 が来て青葉が茂り、の嵐が過ぎり、の葉が散って、のい氷が溶けた。 そしてもう1度、が巡り、さらにもう1度、が来た。 そうして17回もの季節が過ぎる、この世界の々は誰もらなかった。 あの実の柿のが、毎になれば実らせる、異様なほどの濃な甘みが、体どこから来ていたのかを。
義母は、にもいもしなかった。 毎自分が縁側から眺め、をやっていたその柿のの、わずか30センチメートルの暗のに、する娘のみさが静かに押し込められていたことを。 2007521のけ方、まだ周囲が静まり返っている、柿のの根元のが、男のによって再び力任せに押し固められた。
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散らばった乾いた落葉が、その々しい掘り返しの跡のを覆い隠す。 朝、静かにたい朝がりた。
何事もなかったかのように、佐藤健太はその以も、毎週のように実を親切に訪ねてきた。 1週に1度、あるいは2度、彼は仕事帰りに実にち寄り、義母の作った料理を美しそうにべ、義母が淹れてくれたお茶をみ、義母からの温かい慰めの言葉を受け入れ続けた。 彼はからりる際、必ず義母への産をにしていた。 級な漢方のサプリメントが1箱、季節の級果物の詰めわせが1パック、あるいはデパの価なギフトセット。
義母は彼がやってくるたびに、玄関先でそのきなを握りしめて涙ぐんだ。 「健太さん、本当にありがとう……。あなたがこうして、みさがいなくなったも私を気遣ってくれるから、私は何とかきていけるのよ。みさがここにいたら、どんなにんだことか……」 佐藤健太はその温かい言葉を受けるたび、殊さらに神妙にをげた。 彼の浮かべる表は、常に点の隙もない、愁に満ちたものだった。
柿のは、変わらずその所にち続けていた。 妻のみさがこの世から消えた、まさにそののにも、は見事な実を結んだ。 鮮やかなオレンジの柿が、枝ごとに鈴なりになってそうに揺れている。
佐藤健太は、実を訪れた際、義母と緒に柿ののに並んでち、い竿をに持って、器用に柿の実を1つずつ収穫していった。
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