"柿の木の下の守護" 第11話
もし……もし、すでに違ったことになってしまっているのであれば、どうかあの子を、たい所から救いし、らかに休ませてあげてください……」
その祈りは、毎欠かさず1ずつ、静かに続けられた。 5が過ぎても、10が過ぎても、彼女の祈りが止まることはただの1度もなかった。 娘の部は、失踪したあのの夜のまま、完全に保されていた。 義母は、みさの部のクローゼットから、何1つとして片付けたり処分したりはしなかった。 化粧台のに置かれたままの使い古したも、勉机のに並んだ法学の分い専も、ハンガーに掛かったままののワンピースも、すべてがあのの位置のままだった。
埃が溜まらないよう、彼女は毎、雑巾を持って部の隅々まで丁寧に拭き掃除をした。 窓をきくけてのを入れ、部の空気を循環させる。 実にち寄る健太が買ってきてくれた漢方薬の袋を、彼女は優しくで撫で、部の片隅へと然と積みげていった。 「みさが帰ってきたら、すぐにこれをませてあげるのよ。あの子、昔から無理をするとすぐに体調を崩すから……。1きりで、どんなに体が傷んでいることか……」
15分の、膨な数の漢方薬の箱と袋が、部の壁面を井に届くほど埋め尽くしていった。 その果てしないのに、義母の肉体もまた、確実に崩壊へと向かっていた。
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労と眠から始まった原因のめまいと力のが、齢と共に徐々に悪化していったのだ。 最初は、周囲の景ががかかったようにぼやけて見えていたのが、5が経つと、の輪郭だけしか判別できなくなった。 10が経つ頃には、部の暗、との境目だけしか識別できなくなっていた。
病院の医師からは、「度のストレスによる神経の萎縮で、これ以は現代医療のの施しようがありません」とたく告げられた。 それでも、目が見えなくなっても、義母は毎、決まったに庭へとた。 製の杖をトントンと突きながら、探りでゆっくりと歩みて、柿ののに置かれた古い縁台に腰掛ける。 く濁った目を虚空に向け、見えない柿のをじっと見げた。 が吹いて、柿の葉がザーッと擦れう音を、彼女はを澄まして聴いた。 になれば、熟した柿の実が放つ、独特の甘い匂いを先で静かに嗅いだ。
みさが幼い頃、このきな柿のに登ろうとしてを滑らせ、面に落ちて膝を派にすりむいて泣きしたこと。 に収穫した量の柿を使って、台所で緒に干し柿を作ったり、甘いジャムを煮詰めたりしたこと。 こののの縁台に座って、最の娘と交わした、何千回、何万回もののない温かい会話の記憶。
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義母は、両目が見えなくなってしまっても、そのすべての景を、脳裏ので鮮に記憶し続けていた。
「みさ……。お母さんが、またここに来たわよ。今も、あんたが番好きだった柿のの横に座っているからね……」 老母の声はく、切なく震えていた。 何の返事も、暗からは聞こえなかった。 ただ、5のいが、彼女の頬を通り過ぎていっただけだった。
その柿のの、わずか30センチメートルのたいので、佐藤みさは、17ずっと、好きな母親のその震える声をで聴き続けていたのである。
17の、義母は義理の息子である健太が実を訪れるたびに、くがらぐのをじていた。 彼がからろしてくれる美しいべ物を縁側で分けい、彼が優しい声でかけてくれる労わりの言葉に、疲れたを寄りかからせてきてきた。 娘のいないがのきすぎる空席を、優秀な義理の息子が、本当の子供のようにして埋めてくれているのだと、彼女は盲信していた。 その固な信頼の支えがなければ、彼女の肉体はもっとに、絶望で持ちこたえられずに壊れていただろう。 それこそが、この事件における、最も残酷で歪んだ真実であった。
自分のする娘を力任せに絞め殺し、に埋めた張本が、娘の帰りを待って泣いている母親の肩を優しく抱き、慰めていたのだ。
娘の肉体を肥やしにして実った柿の果実を、竿で摘み取って、母親のへと優しく差ししていた。
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