"銀の指輪の応募者" 第1話
京・丸ノ内のど真ん。本の建築業界の頂点に君臨し、数万の建築先者たちがをかけて見る職、それが建設の本社ビルだった。
朝を浴びてそびえつ38階建てのガラス張りのビルは、まるでをつくかのように威堂々と輝いていた。しかし、その巨なガラス扉の内側には、部の喧騒を完全に遮断した、張り詰めた緊張がのようにく漂っていた。
今は、建設の入社員建築設計職の、公最終面接がわれるだった。
ロビーの磨きげられた理ののを、コツコツと靴のヒールの音が絶えなく響き渡っていた。名学の卒業証を懐にしたエリート応募者たちが、皺つない級なスーツ姿で、息を潜めてずらりと子に座っていた。
誰もをこうとはしなかった。背筋を伸ばし、極限の緊張を孕んだ面持ちで、ただ自分の番が来るのをじっと待っていた。
そのだった。
ロビー正面のきなガラスの回転ドアが、勢いよく音をてていた。そのたく然とした空には、到底似つかわしくない、みすぼらしいなりの青が1、息を切らせて慌てて入ってきた。
彼の名は、ユト。今で30歳になる青だった。
ユトは、古くて褪せた綿のズボンに、襟元がすっかり潰れた物のシャツという姿だった。
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シャツの袖は擦り切れて糸がほつれ、革靴の代わりに履いた古い運靴の靴底は、片方が剥がれて歩くたびに「ペタペタ」とけない音をてた。
まるでどこかから全力疾してきたかのように、額には粒の汗が浮かび、息が顎の先までがっていた。彼の荒い息遣いだけが、静まり返ったロビーに々しく響き渡る。
そして、ユトの背には、古びたおんぶ紐が固く結ばれていた。
その紐ので、まだ1歳になったばかりの彼の息子、ハルトが、さな体をかしてもぞもぞといていた。
「う、うあぁ……」
赤ちゃんの々しい泣き声が、理のロビーのい井にぶつかって、さくこだました。
ユトは片で本能におんぶ紐の底を支え、子供が揺れないようにしっかりと固定した。もう片方のには、角がすり切れて破れた類カバンを胸にしっかりと抱きしめていた。
彼は息を切らしながら、ロビーの案内デスクに向かって必に歩みをめた。歩踏みすたびに、おんぶ紐ののハルトの体が軽く揺れる。ユトはその度、背を丸めて子供をおしそうにかばった。
周りの面接待者たちが、斉に彼の方へ首を向けた。
眉を顰める者、あからさまにで笑う者、隣の席の者の肘をそっと突いてひそひそと囁きう者。ありとあらゆる淡な線が、刃物のようにユトの全を囲んだ。
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「あの、体何かしら? 子供を背負って面接会に来るなんて。ここを所の遊びとでもっているのかしらね」
誰かのから、やかしの混じった蔑みの言葉が漏れた。
すぐ隣の席の別の応募者が、相槌を打つようにい声でで笑った。
「あんななりのが建設に応募したのか。どうせ提する類もめちゃくちゃだろう。警備で追い返されるレベルじゃないか」
クスクスという躾な笑い声が、待席のあちこちから聞こえてきた。ユトは顔が燃えるようにくなるのをじ、さらにくをげた。しかし、奥歯をくい縛り、歩みを止めようとはしなかった。
案内デスクにたどり着く、まさにそのだった。
綺麗に髪を撫でつけ、アイロン掛けのき届いた級スーツを着た事部が、でづいてきた。彼は徹な線をらせ、ユトのくを遮るようにちはだかった。
「おい」
事部の声は、トゲトゲしく、威圧なものだった。
「正気か? ここをどこだとっているんだ。神聖な面接会に赤ん坊を背負って乗り込んできて騒ぎを起こすとは。の応募者の迷惑になるのが分からないのか」
その声に、ロビー全体がを打ったように静まり返った。
待席に座っていた応募者たちの線が、斉に彼らに注がれる。
誰として、ユトの方をする者はいなかった。むしろ、当然の処置だというように頷いたり、腕を組んで見物したりするような、ややかな差しばかりだった。
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