"洞窟に残った少年の声" 第7話
会の混乱の、佐々議員は静かに言った。
「証、この録音を聞いていただきます」
型スクリーンに、実の最のテープが再された。
「僕は、彼らが何をしたか見た。絶対に忘れない」
幼いの声が、公聴会に響いた。
続いて、を塞がれたような音とい鳴。そこで音声は途切れた。
誰も言葉を発しなかった。
渡辺はうなだれたまま、肩を震わせ始めた。
「申し訳ありません……本当に、申し訳ありません」
「何が申し訳ないのですか。具体に答えてください」
渡辺は震える声で、22よりさらにの来事を語り始めた。
1982、造所の察で林と関係を持ったこと。
その、彼女が妊娠したことをったこと。
政治なを守るため、すべてを隠そうとしたこと。
「鈴次郎氏の事故に、あなたは関与したのですか」
渡辺は唇を震わせた。
「私は……事故が起こるように、仕向けました」
会がきくざわめいた。
「林さんは精神病院へ。子どもは施設へ。そうすれば終わるとっていた」
「その、なぜ田実君を芸能界へ?」
「見守っていたかった。私の子どもだったからです。しかし、あの子はしずつ真実にづいていた。198756の夜、私と監督の会話を聞いてしまった」
「それで、あの子を殺したのですか」
渡辺は顔をげられなかった。
「私は直接はしていません。
広告
ただ、あの子は危険だとい……誰かに頼みました」
「誰に頼んだのですか」
渡辺は答えなかった。
そのの夕方、全国のニュースが渡辺の告を報じた。
22隠されてきた真実が、ついに表にた。
しかし、正義はすぐには訪れなかった。
事件からいが経っており、直接の殺害を証する証拠は乏しかった。渡辺浩司は臣を辞任したが、逮捕はすぐにはわれなかった。
検察は証拠分を理由に、宅で捜査を続けると発表した。
民のりはさらにきくなった。
その夜、川子は実の写真ので涙を流した。
「実君、ごめんね。真実はた。でも、まだ正義は終わっていない」
彼女は写真に向かって静かに誓った。
「君の声が無駄にならないように、最まで追い続けるから」
201057。
田実が姿を消してから、ちょうど23が経っただった。
奥秩父のい、実のバッグが見つかった洞窟の入りに、さな追悼館が建てられた。
「田実記館」
製の素朴な板がに揺れていた。
館内には、ガラスケースのに実の古びたバッグが展示されていた。その隣には、さなテープレコーダーとカセットテープ。そして、林が27、投函できないままき続けたの束が置かれていた。
壁には、の実の写真、ドラマ『』の撮スチール、そして最に残された8mmフィルムの面がきく引き伸ばされていた。
広告
岩に隠れ、さなテープレコーダーを握る11歳の。
その目には恐怖があった。
けれど同に、真実を残そうとする志もあった。
写真のには、実の最の言葉が刻まれていた。
「もし僕が戻れなかったら、真実を話してください」
林は、毎のようにその所を訪れた。
阪から片4以かかる距だった。それでも彼女は朝5のバスに乗り、館から入りで待った。
扉がくと、最初に実のバッグのへき、膝をついた。
「実、お母さん、また来たよ」
そう言って、ガラスケースを丁寧に拭いた。清掃員が別にいたが、実のバッグが入ったケースだけは、自分で拭きたかった。
「昨もたくさんのがあなたに会いに来たわ。同じくらいの子どもたちも来ていたの。みんな、あなたがどれだけ勇敢だったか話していたわ」
の声はもう震えていなかった。
27の沈黙を破った、彼女はしずつ、息子と会話する方法を取り戻していた。
「お母さんが守ってあげられなくて、本当にごめんなさい。でも、もう世界があなたの方よ」
彼女は子に座り、実が幼い頃に好きだった子守をった。
館内を訪れた々は、そのを聞きながら静かにを止めた。
27遅れの子守。
それは、ひとりの母が失った息子へようやく届けられた祈りだった。
方、京では川子が1冊の本をきげていた。
タイトルは『真実は葬れない――田実の最の証言』。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51