"古道具屋の制服" 第8話
涙は、凍りついていた族のをほんのしだけ溶かし始めた。 失われた絆は戻らない。 しかし今この瞬、2は初めて同じ痛みと悔を分かちっていた。 それは劇の真相に向きうための、あまりにも遅すぎた第歩だった。
鉄壁のアリバイ
が提示した容疑者たちへの聞き込みは、分い記憶の壁と権力という名の鎧に阻まれ、遅々としてまなかった。 苛ちを募らせた刑事は、度原点にち返ることを決めた。 全ての始まりとなった所――古具「港や」である。
何かがおかしい。 そもそも、なぜ15も誰の目にも触れなかったタンスが、今になってにてきたのか。 は再び主の藤の元を訪れた。 藤は相変わらず曖昧な証言を繰り返したが、が粘りく質問をねるうち、ぽつりとな事実を漏らした。
「あのタンスを運んできた男……そういや、軽トラの荷台に古い釣り竿やらクーラーボックスやらをたくさん積んでいたな。漁師か、釣りが趣のかもしれん」
その些細な報が突破となった。 警察はの周辺に設置されていた数ない防犯カメラの映像を徹底に洗い直した。 15と違い、今はデジタル化の波が樽の古い商にも及んでいた。 鮮ではない映像、の軒先をかすめるように映ったトラックの体とナンバーの部。
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それらをにつなぎわせ、照をねた結果、ついに1台の軽トラックが特定された。
所者は浜田慎介。樽で働く50代の現役漁師だった。 浜田の所は、佐藤からわずか2区画しかれていない古いアパートのだった。
が部と共にそのドアをノックすると、から現れたのは、潮と陽にく刻まれた顔を持つ寡黙そうな男だった。 部にを踏み入れると、魚の臭さと属が錆びたような匂いが混じりった、港特の活臭がをついた。
「浜田さん、先『港や』へ古い切りタンスを持ち込みましたね」
の問いに、浜田は顔ひとつ変えず静かに頷いた。
「ああ、それが何か」
「あのタンスのから、15に失踪した佐藤み咲さんの学が見つかったんですよ。体、あのタンスをどこでに入れたんですか?」
は男の反応を鋭く観察した。 しかし浜田の表は、まるでき止まりのののように、何の揺らぎも見せない。
「さあな。昔、故郷をれるっていうからいくつか荷物を預かったんだ。そのの1つだ。もうあいつも帰ってこねえし、俺もこのアパートを引き払うんでな。いらねえもんを処分しただけだ。そのご友の名は忘れた」
く突き放すような答え。その頑なな態度には確信をめた。この男は何かをっている。
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「浜田さん、あんたは昔、佐藤さんのの隣にんでいたな。み咲さんのこともっていたはずだ。とぼけても無駄ですよ」
その言葉に、浜田の目が初めて鈍いを宿した。 しかしそれは揺ではなく、まるでい昔を懐かしむかのような議なだった。
「ああ、み咲ちゃんか……いい子だったな」
は畳みかけるように核を突いた。
「失踪当、彼女に会いましたか? 事件について何かっていることがあるんじゃないですか」
その瞬、部の空気が変わった。 浜田はゆっくりとちがり、部の棚から1冊の古びた帳を取りした。 それは員帳だった。彼はそれを無言でテーブルのに置いた。
「刑事さん、悪いが違いだ。俺はあの、本にはいなかった」
が帳をに取ると、そこには各国の港の入国スタンプが几帳面に押されていた。 ページの隅にはインクが擦れた文字で『丸』と名が記されている。 警察署に戻って記録を照会した結果は、完璧なものだった。 20013、浜田が乗り組んでいた漁「丸」はベーリング域で操業していた。 当の航誌、乗り組員の証言、話の通信記録――その全てが、彼が失踪事件のあったに樽にいなかったことを、鉄壁の事実として証していた。
完璧すぎるアリバイ。それはいかなる疑も差し挟む余のない証だった。
捜査は完全に振りしに戻った。
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