"双子の消えた春" 第5話
それでも信夫さんと子さんは諦めませんでした。夫婦はしばらく京にとまり、自分たちので息子たちの方を探し始めました。学に問いわせ、入学式の名簿を確認してもらいましたけれども、也と達也の名のところには席の印がついていませんでした。式の会にははついに度も姿を表していなかったのです。
宿の周りのを軒軒訪ねて歩きました。「このを見ませんでしたか?」そう言って双子の写真を差しします。似た笑顔の。けれども商の々は皆なさそうに首を振るばかりでした。「さあ、どこかで見たような気もするけど、何せ学さんがい町だからね」
そんなに々が過ぎていきました。子さんは夜になると宿で声を殺して泣きました。夫の信夫さんはそんな妻の傍らでただじっと握りしめた拳を見つめていることしかできませんでした。
状況が変わったのはそれから数が経った頃です。夫婦の必の訴えと、荷物がそっくり残されているという自然さがようやく警察をかしました。事件性が完全には否定できないという判断のもと、本格な捜査が始まることになったのです。元の警察署だけでなく野県警、そして双子が姿を消した京を管轄する警庁、これら各関が連携して方を追うことになりました。
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捜査を担当することになったのは警庁の笠原という名の代半ばの刑事でした。笠原刑事は決して数のいではありませんでしたが、その目には数えきれないほどの事件を見てきたものだけが持つ、静かでいがありました。彼は両親の話を言も漏らすまいとするようにじっと聞きました。そして聞き終わるとい声でこう言ったのです。
「お父さん、お母さん、必ず見つけます。私を信じてください」その言葉に子さんは堰を切ったように泣きました。これまで誰にもまともに取りってもらえなかった訴えをようやく本気で受け止めてくれるが現れた。その堵が涙となって溢れしたのです。
笠原刑事をはじめとする捜査員たちはまず双子の取りを丹に辿ることから始めました。入学式の朝午過ぎに宿をた、そのはどこへ向かったのか。捜査員たちは宿から学までの筋を何度も何度も歩きました。最寄りの駅の改札につ駅員に写真を見せて聞き込みをしました。
当はまだに防犯カメラなどというものはほとんどありません。頼りになるのはの記憶との証言だけでしたけれども、調べれば調べるほど奇妙なことがらかになっていきました。双子は最寄りの駅の改札を通っていなかったのです。
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朝の通勤通学の帯、改札にはたくさんのがいたはずです。それでも双子のようにそっくりな顔をした若者が、お揃いの黒いスーツで並んで通れば誰かの記憶に残っていてもおかしくありませんけれども、そんな証言はつもてきませんでした。
タクシーの会社にも問いわせました。その朝、その界隈で双子の若者を乗せたという運転はもいませんでした。バスの運転にも聞き込みをしました。やはり同じです。
宿をたはずのがどの交通関にも乗った痕跡がない。そして向かったはずの学にもたどり着いていない。まるで宿のをた、そのわずか数百メートルのに双子はすっと空気に溶けて消えてしまったかのようでした。
「妙だな」捜査会議の席で笠原刑事は腕を組んでくつぶやきました。「自分から姿を消すにしては取りがなさすぎる。かと言って無理やり連れられたにしては騒ぎがなさすぎる。朝の通りのある帯です。もし誰かが双子を無理やりに押し込めたりすれば必ず誰かが目撃するはずです。鳴のつもがったはずですけれども、そうした証言も切てきませんでした」
自分から消えたのでもない、連れられたのでもない。では体何があったのか。
捜査は暗礁に乗りげかけていました。
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