"失敗作のグッバイ" 第4話
隣のから、姑の声が聞こえた。話をしているらしく、声の調子がいつもよりかった。
「そうなのよ。全然できないの。字も読めないし、暗記カードもだめ。覚えが悪くて困っているの」
私は包丁を持つを止めた。
姑はさらに続けた。
「涼介はあの子くらいの齢でもう全部できていたのに。本当に私の息子は才だったのに、どうしてこうなったのかしら」
そして、笑いながら言った。
「やっぱり卒の嫁が産した失敗作だから、仕方ないのかしらね」
血の気が引いた。
実はその、では徹が昼寝をしていた。
姑の声は、眠っているはずの徹にも届いていたかもしれない。
しかも姑は、徹を「失敗作」と呼んだ。
私は包丁を置き、へ向かった。
その途で、夫と鉢わせた。
「奈々子。今の、聞こえたか?」
夫の目は鋭かった。
私がうなずくと、2でへ入った。
「今の何だよ」
夫がい声で言うと、姑は慌てて話を切った。
「あら、話に部へ入ってくるなんて」
「俺たちのなんだから別にいいだろ。それより、今のやり取りは何だ」
私は姑を見据えた。
「徹のことを、失敗作と言いましたよね」
しの沈黙のあと、姑は笑った。
「あら、聞こえていたの? 冗談よ、冗談。本気にしないで」
夫の声がさらにくなった。
「冗談で言う言葉じゃないだろ」
姑はなおも言い訳をした。
「でもね、正直ちょっと配なのよ。
広告
あの子、本当に字が読めなくて」
「徹は2歳だ。2歳の子どもが字を読めないのは普通だ」
夫はそこで言葉を切り、はっきり告げた。
「同居は今で終わりだ」
姑の目がきくいた。
「え、でも修繕が」
「るかよ。今までけで同居させてやっていたんだ。これ以息子をコケにするなら、俺たちも相応の対応を取る」
騒ぎを聞きつけた舅がやって来て、
「涼介、落ち着け」
と言った。
けれど夫は、むしろ静だった。
「落ち着いている。そので言う。今切、俺たちに関わるな」
事実の絶縁宣言だった。
義両親は当然抵抗した。
「徹は孫なのよ。もう会わせてくれないの?」
姑は涙声で訴えた。
しかし夫は揺るがなかった。
「失敗作なら会わなくていいだろ。親としても、そんなことを言うに息子を会わせたくない」
そう言って、夫は義両親の荷物をまとめ始めた。
最には玄関先に荷物をし、
「もっとくこうするべきだった」
と吐き捨てるように言って、義両親を追いした。
義両親がったあとのは、驚くほど穏やかだった。
徹は好きなおもちゃでのびのび遊んだ。アニメも見た。卓では好きなキャラクターの話をし、夫は張のたびに徹の好きなおもちゃを買ってきた。
徹の笑顔はらかに増え、私たちもそれにつられて笑うことが増えた。
方で、義両親からは何度か連絡が来た。
広告
姑から私宛てに、
「あれは本当に冗談だったの。ごめんなさい」
というメッセージ。
舅から夫へ、
「涼介、そろそろ落ち着いたか。話しろ」
というい文章。
義兄からも、
「さすがにたすぎるんじゃないか。母さんも反省しているよ」
という仲裁の連絡が来た。
しかし、私たちは義両親からの連絡をすべて無した。話しったところで、落としどころなどないとっていたからだ。
息子が傷つく環境からざける。
それが最善だと判断した。
半が過ぎる頃には、義両親からの連絡はなくなった。
そして、それから約10のが流れた。
ある、スマホのメッセージアプリが鳴った。
画面を見た夫が、眉をげた。
「来た」
「誰から?」
「母さん」
いこと連絡などなかった相の名に、私はわず夫の元を覗き込んだ。
夫は文面を読みげた。
「久しぶりに孫に会わせてくれないか、だってさ」
私はため息をついた。
「急に連絡してきたのは、あの件かしら」
夫もうなずいた。
「たぶん、どこかで聞いたんだろうな」
私たちの息子、徹は学になっていた。
そしてし、全国の英語ディベート会で優勝した。その記事が聞に載ったのだ。
夫はスマホを置いた。
「どうする?」
私は即答した。
「とりあえず無で」
しかし数、休の昼にインターホンが鳴った。
モニターを見ると、そこには義両親がっていた。
10ぶりに見る顔だった。
「何の用ですか?」
インターホン越しに私が尋ねると、姑は泣きそうな顔で言った。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
二十人分の祝い膳を押しつけられたので、家を出ました
義母から「家族のお祝いだから」と押し付けられたのは、二十人分の料理作りと高額な費用負担。 夫も義妹も、私を一人の家族ではなく、都合よく使える存在として扱っていた。 五年間、我慢し続けた嫁・美咲は、ある決断をする。 それは、義妹の息子の一歳祝いの前日に、すべてを捨てて家を出ることだった。 しかし、静かに準備を進める中で、美咲は夫と義母が隠していた驚くべき事実を知る。 そこには、単なる身勝手な家族関係では終わらない、彼女を縛り続けるための計画が隠されていた。 そして迎えた祝いの日。 親戚二十人が待つ食卓に残されたのは、豪華な料理ではなく、誰も予想しなかった「空っぽの祝い膳」だった。 奪われ続けた人生を取り戻すため、美咲が選んだ静かな反撃とは――。嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 284 -
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 199 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251 -
完結第15話
不当解雇された高卒技術者の特許逆転劇
精密機械メーカーの技術者・中村誠は、高卒叩き上げであることを理由に、名門大卒のエリート上司・北川部長から「掃除とオイル交換しかできない無能な雑用係」と見下されていた。ある日、大口顧客向けの製品に二百個超の大量不良が発生。北川は自らの設定ミスを隠蔽し、誠を犯人に仕立て上げて責任を押し付ける。深夜に真相を暴くアクセスログのUSBメモリーを確保した誠だったが、直後に車に撥ねられ全治三ヶ月の重傷を負ってしまう。病室から連絡を入れると、北川は「好都合だ、クビにしておく」と嘲笑し電話を切った。だが誠が病室のベッドから特許庁へ出願した一枚の技術書類と、彼が去って完全沈黙した工場の製造ラインが、欺瞞に満ちた組織に前代未聞の崩壊をもたらす――。職場逆転|人生逆転2.5万字5 430 -
完結第14話
高卒エースを掃除係に落とした無能社長
大手玩具メーカーの営業エース・篠田零司は、高卒叩き上げながら十二年間にわたりトップの成績を維持してきた。だが、恩師である先代の矢吹会長が病で倒れ、新社長に就任した倉島哲也から全社報告会で突如「先月の達成率は三十パーセント、部内最下位のお荷物だ」と虚偽の数字で公開処刑される。強烈な学歴コンプレックスと嫉妬を燃やす倉島は、篠田を社長室の雑用係へと追いやったばかりか、彼が一年かけて心血を注いだ総額百億円の大型独占契約を故意に破談へ追い込む暴挙に出る。しかし、篠田の手元には「確定売上高一億四千二百万円」を証明する売上管理ファイルの原本が存在していた。理不尽の極みの中で静かに退職届を差し出した篠田。だが、現場の異変を察知した車椅子の矢吹会長が立ち上がり、握りつぶされた証拠が暴かれたとき、欺瞞に満ちた社長室に前代未聞の鉄槌が下される――。職場逆転|人生逆転2.9万字5 204 -
完結第23話
義母が突然、結婚指輪をくれた
夫が亡くなった日、義母は「もう家族じゃない」と私と娘を雨の中に追い出した。それから二年、一度の連絡もなかった義母が娘の小学校入学を控えた夕暮れ、四十年間外さなかった結婚指輪を私の指に無理やり嵌めて頭を下げた。翌日、親族が集まる祝いの席で和解を受け入れようとした私の前で、義母は冷たい笑みを浮かべ、夫が生前に娘の氏の変更書類を用意していたのではないかと問い詰めてきた。私の手の中で箸が止まった。裡切られた|祖父母と孫|嫁姑|親子関係|修羅場3.5万字5 127 -
完結第21話
母がナイフで砕いた自分の名前
母の七十歳の祝いで、私は家族に尽くし続けた母に自分の人生を取り戻してほしい一心から、ケーキのプレートに書かれた夫の姓を削り落とし、母の旧姓を書き直した。これで母は喜んでくれるはずだった。しかし母は青ざめ、「誰が戻りたいなんて言ったの」と私を睨みつけると、ナイフを掴んで自分の名前を何度も突き刺し粉々に叩き割った。家族全員から責め立てられた私は、母の部屋で底面を無残に削り取られた大量の人形を見つける。怒り|兄弟姉妹|真相|親子関係|修羅場3.1万字5 137 -
完結第19話
棺の中の男を、夫は知らない
親を捨てて逃げた冷酷な男だと親族中から罵倒される義兄の葬儀で、義母は涙を流し、夫を支えの孝行息子だと称えていた。だが焼香台へ進む夫の前に立ちはだかった私は、「あなた、本当に棺の中にいるその人を知っているの」と告げた。夫が隠していたのは、過去五年間、毎月義兄へ送り続け、そのたびに全額突き返されていた六十回分の送金記録だった。血の気を引かせる夫と親戚の前で、私はその明細を祭壇の上に広げた。兄弟姉妹|親不孝|絶縁|親子関係|修羅場2.8万字5 88 -
完結第21話
妹のドレスを二十センチ切った
妹の結婚式を数時間後に控えた深夜二時、私はリビングで特注のウェディングドレスに裁ち鋏を入れた。事故で右足に傷が残る妹に対し、相手の家族は配慮という名目で足を隠す重いドレスを強要し、当日は動かず座り続けるよう言い含めていた。母の怒声が響き、私の頬に平手打ちが飛ぶ。泣き崩れる妹の足元には、前裾だけが二十センチ切り落とされた純白の布が散らばっていた。私は鋏を置き、「今日これを着て出なさい」とだけ告げた。裡切られた|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|修羅場3.1万字5 94 -
完結第25話
祖父が私に遺した最後の拒否権
亡くなった祖父の果園を三千二百万円で売却するため、東京で働く私は十年ぶりに実家へ呼び戻された。生活苦に喘ぐ父と妹の結婚資金のため、名義を持つ父は契約を急いでいたが、司法書士が出したのは「長孫である私の書面同意がなければ売却は無効」という祖父の遺言だった。早く終わらせようとペンを握った私は、ふと買い手企業がここを何にするつもりなのか尋ねた。山を削り大型トラックの夜間中継所にすると聞かされた瞬間、私は手元のペンを静かに机へと置いた。祖父母と孫|相続|親子関係|金銭問題3.7万字5 111