"災いの男、女だけの島" 第2話
彼は完全にきりでした。
喉が焼けるような乾きを覚えました。
まずはみを探さねばなりません。
吉助はふらつく取りで森の方へと歩きしました。
森は彼がる本のそれとは全く異なっておりました。
枝葉が広く茂り、名もらぬ鮮やかなが乱れ咲いていました。
空気は濃く湿り気を帯び、鳥のさえずりが妙にきく響きます。
森の奥へ入れば入るほど、ここが自分のる本のではないかもしれないという漠然としたに襲われました。
しばらく彷徨った、彼は岩の隙から湧きるさな清を見つけました。
彼は飢え渇くようにでをすくいみました。
たく清らかなが喉を潤すと、ようやく正気が戻ってくるようでした。
彼はで顔を洗い、乱れた髪をえようと務めました。
そして再び周囲をうかがいました。
果たしてここにははんでいるのだろうか。
もしんでいるならどのような者たちだろうか。
をんで気力を取り戻した吉助は再び森をかき分けてみました。
獣のような細いをしばらく歩きました。
するとに々のから細く煙がっているのが見えました。
の暮らす気配です。
彼は堵してをめました。
森が途切れ、けた所にました。
ここには信じがたい景が広がっておりました。
広告
さな集落があったのです。
々はとを組みわせて作られており、粗末ながら頑丈そうに見えました。
庭先には魚を干す網や漁具らしきものが置かれています。
違いなくがむでした。
吉助はほっと息をつき、の入へとづきました。
誠を尽くしてたちに事を話し、助けを求めるつもりでした。
ところがにづくにつれ奇妙なことに気づきました。
は静かでしたが確かに々が働いておりました。
ある所では数が網の入れをし、別の所では畑を耕しておりました。
しかし、その誰もが女だったのです。
太い腕でい荷物を運ぶ者も女であれば、根を直すためにはしごを登る者も女でした。
子供たちの声も聞こえましたが、の男の姿はただのも見当たりません。
吉助は瞬、自分が狐につまされてを見ているのではないかと疑いました。
彼は目を擦り、もう度よく見ました。
しかし何も変わりません。
彼女たちは皆、彼がこれまで見てきた女たちとは違う姿をしていました。
に焼けた健康な肌、引き締まった体つき、そして迷いのないつきで仕事をこなしています。
着ている着物もきやすいようにく着つけてありました。
ここは体どこなのだ?
吉助がの入で呆然とち尽くしていると、井戸端でを汲んでいたの娘が彼に気づきました。
広告
娘はに持っていた桶を取り落としました。
ガランという音と共に桶が転がり、の静けさが破られました。
娘は信じられないものを見たというように恐怖に引きつった顔で吉助を指差し鳴をあげました。
その娘の名は千代と申しました。
彼女はこの島でまれ、まれてから度も島のの世界を見たことがありませんでした。
彼女がる男というは、おばあ様たちの昔話のだけてくる、々から流れつく稀な、あるいはに度の神が運んでくるとされるいのようなき物でした。
この島ではそうした稀な漂流者によってのみ命が繋がれてきたのです。
ところが今、目のに言い伝えでしか聞かぬ奇妙な着物をに着けた全く異質なき物がっているのです。
彼女は恐ろしかったものの、同に得体のれぬ好奇も覚えました。
千代の鳴を聞きつけ、の女たちがを止めて集まってきました。
彼女たちはに鎌や釘、あるいは魚を突く槍まで握りしめていました。
その目に宿るのは歓迎や好奇ではありません。
それは警戒、そして見らぬに対するい審でした。
彼女たちは吉助を巻きに取り囲みましたが、定の距からはづこうとしません。
彼女たちにとって吉助はというよりは、が吐きした吉な異物のように見えたのです。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
不当解雇された高卒技術者の特許逆転劇
精密機械メーカーの技術者・中村誠は、高卒叩き上げであることを理由に、名門大卒のエリート上司・北川部長から「掃除とオイル交換しかできない無能な雑用係」と見下されていた。ある日、大口顧客向けの製品に二百個超の大量不良が発生。北川は自らの設定ミスを隠蔽し、誠を犯人に仕立て上げて責任を押し付ける。深夜に真相を暴くアクセスログのUSBメモリーを確保した誠だったが、直後に車に撥ねられ全治三ヶ月の重傷を負ってしまう。病室から連絡を入れると、北川は「好都合だ、クビにしておく」と嘲笑し電話を切った。だが誠が病室のベッドから特許庁へ出願した一枚の技術書類と、彼が去って完全沈黙した工場の製造ラインが、欺瞞に満ちた組織に前代未聞の崩壊をもたらす――。職場逆転|人生逆転2.5万字5 430 -
完結第14話
高卒エースを掃除係に落とした無能社長
大手玩具メーカーの営業エース・篠田零司は、高卒叩き上げながら十二年間にわたりトップの成績を維持してきた。だが、恩師である先代の矢吹会長が病で倒れ、新社長に就任した倉島哲也から全社報告会で突如「先月の達成率は三十パーセント、部内最下位のお荷物だ」と虚偽の数字で公開処刑される。強烈な学歴コンプレックスと嫉妬を燃やす倉島は、篠田を社長室の雑用係へと追いやったばかりか、彼が一年かけて心血を注いだ総額百億円の大型独占契約を故意に破談へ追い込む暴挙に出る。しかし、篠田の手元には「確定売上高一億四千二百万円」を証明する売上管理ファイルの原本が存在していた。理不尽の極みの中で静かに退職届を差し出した篠田。だが、現場の異変を察知した車椅子の矢吹会長が立ち上がり、握りつぶされた証拠が暴かれたとき、欺瞞に満ちた社長室に前代未聞の鉄槌が下される――。職場逆転|人生逆転2.9万字5 208 -
完結第23話
締め出された新社長
父から印刷会社を継ぎ、代表取締役として誰よりも早く出社した初日の朝、私のカードキーだけが赤く点滅して通用口が開かなかった。清掃員や入社三カ月の新人、配送トラックが次々と通過していく中、古参の会計は「先代の指示で権限を削除した」と告げる。社内では判断を下せる者がおらず、営業と現場の怒号が響き合い、輪転機が完全に停止した。私は閉ざされたガラス扉の脇にパイプ椅子を置き、冷たい缶コーヒーを握りしめた。職場逆転|人生逆転|怒り|親子関係|修羅場3.5万字5 216 -
完結第14話
年商一兆円の父にワインをかけた婚約者
創業家の御曹司との顔合わせ当日。ボロ車で駆けつけた私の父を見た義母は、「貧乏人の娘が」と父の頭から赤ワインを浴びせかけた。婚約者も冷笑し、父を詐欺師呼ばわりしてロビーで土下座を迫る始末。 だが、父は一言も取り乱さず、静かにワインを拭った。 「この縁談はなかったことに」 指輪を投げ返し、父の向かった先は日本中が恐れる巨大財閥の最上階。傲慢な親子が信じていた“金と権力のルール”で、静かな断罪劇が幕を開ける。因果応報|人生逆転|金銭問題|修羅場2.1万字5 129 -
完結第13話
二十七年目の嘘
58歳で急死した夫の遺品を整理していた美智子は、引き出しの奥から27年前の「採用内定通知書」を見つける。当時不合格だと思い込んでいた東京の出版社からのものだった。封筒の裏には夫の筆跡で「辞退連絡済」。夫はなぜ私の人生を勝手に奪ったのか。さらに、夫の出世作となった伝説の住宅企画が、かつて自分が書いた企画ノートそのものだったことを知る。奪われた名前と人生を取り戻すため、妻が下した決断とは。人生逆転|夫婦|真実|第二の人生|親子関係2.0万字5 57