"木の墓の少女" 第5話
最の疑問は1つだった。
織の遺体は、どうやってあのの根元に置かれたのか。
自殺なのか。
事故なのか。
それとも殺なのか。
問題のは、母からわずか30mの距にあった。窓からも見える所である。
農の所者に気づかれず、誰かが遺体を運び込むことは、ほとんど能にわれた。
捜査を率いた優太刑事は、25の経験を持つベテランだった。
彼が最初に向かったのは、ただ1き残っている当の関係者、倍健のもとだった。
2021118、倍健は岐阜県警本部での事聴取に応じた。
53歳になっていた健は、し痩せた顔で取調の子に座っていた。両を膝のに置き、線を落としていた。
刑事は、古い失踪事件の資料を机に置いた。
「織さんについて、もう度お話を聞かせてください」
健は20と同じ話を繰り返した。
織は2001222に自分で仕事を辞めた。京へくと言い、荷物をまとめて農をていった。父も自分も、そののことはらない。
は静かに聞いていた。
そして資料を1枚めくり、写真を健のに置いた。
のから見つかった遺骨の写真だった。
「この遺体は、あなたたちの農の敷内にありました」
健の顔がこわばった。
「なぜ当、通報しなかったのですか」
「りませんでした」
健はすぐに答えた。
広告
「本当に、そこに遺体があったなんてりませんでした。あのは敷の隅にありました。滅にかない所だったんです」
はその言葉を信じなかった。
は母から30mしかれていない。敷の隅とはいえ、農で活するがまったく気づかないというには無理があった。
は直接尋ねた。
「倍さん、あなたは織さんを殺しましたか」
健は青ざめた。
「違います。決して、私は彼女を傷つけていません。彼女は本当にったんです」
は嘘発見器による検査を求めた。健は同した。
結果は曖昧だった。
な質問への回答、健にはい緊張反応が見られた。けれど、それが嘘をするとは限らなかった。殺の疑いをかけられた恐怖による反応とも考えられた。
方で、法医学の専たちは骨と発見所の詳細な分析を続けていた。
法医類学者の鈴彩子博士は、1つ1つの骨を顕微鏡で調べ、傷の痕跡を探した。
背骨といくつかの肋骨には、圧迫骨折に相当する微細な亀裂が見つかった。い所からの落やい衝撃によってじた能性がある。だが、これらの損傷は、が骨の周囲で成し、期圧力をかけた結果である能性も否定できなかった。
毒物検査はできなかった。
部組織が完全に分解していたからである。
広告
ただし、の根の周囲の壌や空洞内のサンプルから、森林壌には自然にしにくい物質が検された。分析の結果、それは1990代から2000代にかけて農業用肥料や殺虫剤に含まれていた化物と致した。
それは、遺体が農がまだ稼働していた期にそこに置かれたことを裏付けていた。
刑事は、織という物と、農での活をもう度洗い直すことにした。
彼は当のを探し、何かから話を聞いた。
学代の古い友、川美由は、20011に織と最に会ったと語った。
2は郡のカフェで会った。美由はその、織がひどく落ち込み、そうに見えることに気づいていた。
「何かあったの?」
そう尋ねると、織は曖昧に答えた。
「仕事のことでし。あと、私のを複雑にしているがいるの」
詳しいことは話さなかった。
別の証言もあった。
農に定期に商品を配達していた配達員は、20012、織が失踪する1週か2週の来事を覚えていた。
彼が種の配送に訪れた、母のからきな声が聞こえた。
男が鳴り、女が泣いていた。
配達員は介入しなかった。自分の問題ではないとったからだ。
しかし、その農は普段とても静かだったため、その来事だけは記憶に残っていた。
これらの証言を聞いたは、織と倍の誰かとのに、な対があった能性を考えた。
1123、は健を再び事聴取に呼んだ。
今回、はよりく迫った。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51