"柿の葉の封印" 第6話
失踪の原因は経済な困窮による夜逃げだったのか。
状況としては分に考えられる。
しかし裕のには依然として疑問が残っていた。
もし本当にただの夜逃げなら、朝の準備を途で放棄するだろうか。
そして母・千子はなぜあの謎めいたを残す必があったのか。
父の融トラブルと母の涙、。つの事実はまだ本の線で繋がっていなかった。
父・正隆が残した苦悩の融取引記録。
その事実は裕のにつの仮説を芽えさせていた。
借苦による夜逃げ。
それがこの穏な失踪劇の、あまりにもありふれた、しかし最も現実な真相なのかもしれない。
だが、そう結論付けるには母のが謎として残りすぎた。
泣きながら柿の葉寿司を作り「守る」と呟いた母。
そして謎の言葉を記したあの。
まるでつの異なる事件が同にしていたかのようなちぐはぐな印象が拭えない。
真実を歪めている元凶はやはりあの男。
裕は疑の矛先をの力者・葉の敷へと向かう決を固めた。
葉の敷はのでも段とい垣に囲まれた堂々たる構えの本だった。
なをくぐり、玄関で名を告げると、奥から現れたのは体つきががっしりとした目の鋭い老だった。
彼こそ葉の当主、葉正部そのだった。
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通された広な座敷は、まるで空気に力が増したかのように静まり返っており、壁にかけられた墨画の墨の匂いが威圧をさらにめているようだった。
蜂の親族だと聞いたが、葉は裕を睨みつけるように見据え、い声で言った。
今更あののことを探りに来ようというのかね。
25 に何があったのかりたいんです。父や母がなぜ消えなければならなかったのか。
裕がまっすぐにそう告げると、葉の表がわずかに歪んだ。
これ以昔のことをほじくり返すな。
その声にはりともしみともつかない響きがあった。
このにはな、そっとしておかねばならん傷がある。おのような親族が面半分で探し回していいもんやない。
葉の目は脅しているようだった。しかしその奥に、ほんの瞬いしみと疲労のがよぎったのを裕は見逃さなかった。
まるでい負い目を抱え続けてきた男が見せる孤独の翳り。彼は何かをっている。そしてそれを必に守ろうとしている。
裕がさらに何かを言おうとした、「もう話は終わりだ」というたい声と共にがしっかりと閉められた。
何も聞きせず、玄関でち尽くす。やはりこの男が黒幕なのか。
だが、あの目に宿ったしみのは体何だったのか。
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裕が混乱していると、背から柔らかな声がかけられた。
振り返るとそこには 30 代半ばくらいの品の良い女性がっていた。葉にどことなく面が似ている。
「父が申し訳ありません。私、娘の苗と申します」
と名乗った女性は々とをげた。
彼女は裕を気のない敷の脇へと誘うと、震える声でこう続けた。
ずっと胸に秘めていたことがあるんです。誰にも言えなかったこと。
苗は失踪したの女と同いで、子供の頃はよく遊ぶ仲だったという。
そして事件があったあの夜のことを、彼女は今でもはっきりと覚えていた。
私の部の窓からちょうど蜂さんのが見えるんです。
夜更けた頃、寝つけずにいた苗のに、どこからか声が聞こえてきた。
それは違いなく蜂夫妻の声だった。
しかし聞こえてきたのはのではない、に浮かぶ壁の倉のからだった。
ひんやりとした暗の、その声だけが妙に鮮に響いてきたのを今でも覚えているという。
っていたのはこの辺りのでした。でもいつも聞いていた優しい声とは全然違ったんです。
苗は記憶をたどるように目を伏せた。
同じ箇所を何度も何度も繰り返し、急に声がきくなったかとえばふっと途切れてしまう。
まるで誰かに何かをらせようとしているような、必で切ない声でした。
その異様なの景に、裕は肌がつのをじた。
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