"世田谷一家殺害事件:隠された真実" 第4話
の側面だけを見れば、子は誰よりも族をし、平を願う信仰い母親だった。夫の幹夫は論理と数字で構成される徹なビジネスの世界で、妻は信仰と祈りで結ばれた精神の世界できていた。
あまりにも異なるつの世界だが、は互いの領域に干渉せず、絶妙なバランスで理の族を築いていた。果たして、そこに歪みはしなかったのか。
捜査本部では、の背景から導きされる複数の犯シナリオが再検討された。つは幹夫の仕事関連、彼が保する密報を狙った企業スパイや組織による襲撃。慣れた犯、巧妙な証拠偽装は、プロの作員を彷彿とさせる。
もうつは子の宗教関連、教団内のトラブルや反対勢力による見せしめの襲撃。犯の残虐性、特に女性と幼い子供への無慈な攻撃は、い敵をじさせる。
「夫の仕事の敵か、妻の信仰の敵か。全く違う方向を向いています」
はを抱えた。能性はすぎるのに、核を突くがかりはつもない。どちらの能性を追っても、犯が残した国際な遺留品の数々がある程度説できてしまう。それこそが、捜査を迷わせる罠だった。
黒田は25の資料の隅にさく記載されたメモを見つけた。当の聞き込み担当者が残した隣民の証言だ。
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「事件のし、宮沢さんのので、夜に誰かが話しっているような声を聞いた。男性の声だった。だが確証はなく、気のせいかとった」
当はありふれた証言として度がいと判断され、放置されていた。だが今の黒田には、その声が幹夫と子のにまれた見えない亀裂の音のように聞こえた。
互いの世界を尊するあまり、踏み込めない領域が広がりすぎてはいなかったか。閉鎖な族という空ので、だけが抱える秘密や悩みがしなかったのか。
夜、自宅に戻った黒田は仏壇にをわせた。そこには数にくなった妻の写真が置かれている。結婚数、自分は妻の全てを理解できていただろうか。妻が抱えたさな悩み、にさなかったに、気づけていただろうか。
答えは否だ。族だからこそ見えない、見ようともしない素顔が誰にでもある。そのいが、初めて宮沢夫妻の苦悩に触れた気がして、黒田の瞳から静かに滴の涙がこぼれ落ちた。
被害者もまた、々と同じく誰にも見せない顔を持つのだ。宮沢夫妻が抱えたと。それは理の族像といういの、誰にも気づかれずに伸び続けたいだったのかもしれない。
そして犯は、そののを正確に把握していた。
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だからこそ、この、この族をピンポイントで選び、襲撃したのだ。
捜査本部の型モニターには、25と変わらぬ遺留品リストが映しされていた。韓国製のいスニーカー、フィリピン式軍隊格闘術の痕跡、の空いたフランス製の入ったヒップバッグ。
バラバラの国籍を示す証拠たちは、つの格に収束しない奇妙なプロフィールをみしている。まるで世界のパーツを無造作につなぎわせた、フランケンシュタインの怪物のようだ。
「どうう、?」
黒田の問いに、は種類の砂の分析報告を指でなぞった。
「片方はカリフォルニア砂漠の砂、もう片方は神奈川県浦半島の岸砂です。つの砂が、捜査員の考を太平の両岸に引き裂いていく。まるで『捕まえてみろ』と世界に挑戦状を叩きつけているようです。報がすぎて、核がぼやけてしまう」
「これらが全て真実だとすれば、犯はスパイ並みの異例の経歴の持ち主ということになる」
「そうだ。々は25、そう信じ込まされてきた」
黒田の言葉には、の無が滲んでいた。
2001当、テレビのワイドショーは連、国際組織の犯、特殊訓練を受けた国の凶だと報じ、週刊誌には犯像に関する憶測記事が乱れんだ。
これは本社会が抱く、得体のれない部からの脅威への漠然とした恐怖を巧みに刺激し、巨な混乱の渦をみした。
犯は警察だけでなく、本国民全体をミスリードしていたのだ。
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