"雪夜の妻" 第21話
顔面は気になり、目は虚ろに宙をさまよっています。
彼は自分が全てを失ったことを、ついに悟ったのです。
富も、名誉も、族も、全ては彼自の見栄と欲が引き起こした結果でした。
私は静かにちがりました。
真のドレスの裾が、音もなく揺れます。
「きましょう、先。おじい様と皆様が待っています」
「はい、由美様」
私はにへたり込む健を、1度も振り返ることなく控のドアへ向かって歩きしました。
ドアノブにをかけた、背からかすかな音が聞こえました。
それは声で泣き叫ぶわけでもなく、りに任せて暴れるわけでもありません。
全てを失った男の、絶望に満ちたくぐもった泣き声でした。
健は両で顔を覆い、肩を刻みに震わせていました。
かつてさな会社の社として威張っていた面は、もうどこにもありません。
彼の喉からは、言葉にならない空気の漏れる音だけが響いていました。
言い訳も、命乞いも、もう彼のからはてきませんでした。
自分の嘘が、自分の見栄が、全ての退を断ち切ったのだと、ようやく理解したのです。
私は振り返りませんでした。
同の余は1mmもありませんでした。
控をると、廊には数の警察官が静かに待していました。弁護士が事に配していたのです。
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彼らは無言のまま私に軽く会釈をして、控のへ入っていきました。
「佐藤健さんですね。同をお願いします」
静かな声が聞こえました。
健は暴れることも叫ぶこともありませんでした。
「……はい」
かすれた声が1つだけ聞こえました。
抵抗する気力すら、彼にはもう残されていなかったのでしょう。
かつて「俺は特別なだ」と豪語していた男の、あまりにも静かで惨めな幕切れでした。
パーティーが終わった、私は華やかなレセプションホールへ戻りました。
な扉をけると、そこは眩しいと穏やかな音楽に包まれていました。勢の招待客がグラスを片にやかに歓談しています。
先ほどの控でのく暗い空気が、嘘のようにれ渡っていました。
「由美、終わったかい」
祖父がワイングラスを持って静かにづいてきました。
私はさく頷きました。
「はい。これで過の全てが終わりました」
私の言葉に、祖父は優しく微笑み、私の肩をぽんと叩きました。
「よく頑張ったね、由美。おは本当にくなった。くなったお母さんも、今の派なおの姿を見たら、きっと泣いてぶだろう」
その言葉を聞いて、私の目がしだけくなりました。
「ありがとうございます、おじい様。私がここまで来られたのは、おじい様がずっと信じて待っていてくれたからです」
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「私は何もしていないよ。おが自分でちがり、自分ので歩きしたんだ。さあ、これからはおの未来だけを見なさい」
私はホールのきな窓ガラスにづきました。
窓の向こうには、に濡れた京の夜景が宝のようにきらめいています。ガラスには、真のドレスを着た私の姿がうっすらと映っていました。
昔の私は、いつもを向いていました。
自分の見を言うこともできず、ただの顔をうかがうだけのでした。
けれど今の私は、背筋を伸ばし、しっかりとを向いています。
健たちを罰したことで得られたのは、勝ったという優越ではありません。
ただ、自分に嘘をつかず、切なものを自分ので守り抜くことができるという、静かな自信でした。
「由美様、皆様が会のご挨拶をお待ちです」
弁護士が静かに声をかけてくれました。
私は振り返り、会にいる勢の々に向けてゆっくりと歩きしました。
温かい拍が、私のしいを祝福してくれていました。
そして華やかなパーティーが全て終わったのことです。
私が自宅へ向かうに乗り込んだ、静かな内でスマートフォンがく震えました。
画面に表示されていたのは、自宅で留守番をしてくれている政婦さんからのメッセージでした。
そこにはい画ファイルが添付されていました。
再ボタンを押すと、画面のにパジャマ姿の桜が映しされました。
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