"消えた五輪候補" 第6話
子も荷物をまとめるために入った。
にはもう誰もいなかった。
ゆかりもほかの選たちも、すでに帰っただった。
子はロッカーのに座り込んだ。
疲れ、、痛み。
すべてが体をくしていた。
その、ロッカールームのドアがいた。
子は振り返った。
そこにっていたのは、兄の健だった。
「兄さん……どうしてここに」
健は自然な笑みを浮かべていた。
「、頑張れよって。応援に来たんだ」
子は驚きながらも、し嬉しそうに顔をほころばせた。
兄が自分を応援してくれる。
それは、子にとってなことだった。
これまで健は、彼女の体操にほとんど関を示さなかったからだ。
「でも、どうやってここに入ったの? 関係者以、入れないはずだけど」
「警備員に、妹に会いに来たって言ったら通してくれたんだ」
健はそう答え、ロッカールームのをゆっくり見回した。
「へえ。こんなところで練習してるんだな」
子は荷物をまとめながら答えた。
「、父さんも見に来るって」
「ああ、聞いた」
健の声が、しくなった。
「子、お、本当にオリンピックにけるとってるのか」
子はを止め、兄を見た。
「けるよ。絶対に」
健はさくつぶやいた。
「そうか」
そしてポケットから、さな布の袋を取りした。
「これ、持っていけよ」
「お守り?」
「ああ。、持っていろ」
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子はそれを受け取った。
「ありがとう」
健はく笑った。
「じゃあ俺、帰るわ。、頑張れよ」
そう言って、ロッカールームをていった。
子は兄がくれたお守りを見つめた。
族が応援してくれている。
それが彼女の力になった。
子は荷物をまとめ、ロッカールームをた。
廊は静まり返っていた。
、ここで自分の運命が決まる。
彼女は呼吸をし、へ向かった。
しかし子はらなかった。
健が渡したお守りの裏に、どんな惑が隠されていたのかを。
そして、訓練センターで過ごすが、残りわずかであることを。
318、最終選考当。
子は午4に目を覚ました。
ほとんど眠れなかった。夜の、首の痛みと本番へので何度も目が覚めた。布団から起きがると、窓をけた。はまだ暗く、たい空気が部に流れ込んできた。
子はく息を吸った。
今で、すべてが決まる。
父の期待。
これまでの努力。
貧しいを変えたいという。
すべてが今という1に集まっている。
午5、子がをようとすると、正司はすでに起きていた。
「子、朝飯をべていけ」
卓には噌汁、ご飯、焼き魚が並んでいた。
「父さん、今、本当に来るの?」
「ああ。10には会に着く。おのれ台だ。絶対に見るからな」
正司は嬉しそうに言った。
子は笑顔で頷いた。
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しかしのでは、プレッシャーがさらに膨らんでいた。
父が見ているで、失敗はできない。
訓練センターに到着したのは、朝630分だった。
ロッカールームにはすでに何かの選が来ていた。皆、緊張した表で準備をしている。ゆかりも鏡ので髪をえていた。
「おはよう、子さん」
「おはよう」
子はく答え、自分のロッカーへ向かった。
荷物を置き、練習着に着替えようとした、昨健が渡したお守りが目に入った。
さな布の袋だった。
に何かいものが入っている。
子は袋をけてみた。
には、さな片が入っていた。
「頑張れ」
健の字で、そうかれていた。
子はし微笑んだ。
兄も応援してくれている。
その事実が、彼女のを支えた。
午9、選考が始まった。
審査員たちは体育館の角に座り、選たちの演技を見守っていた。斎藤コーチも審査員席のくにっている。
選たちは緊張した面持ちで順番を待っていた。
子の順番は5番目だった。
最初の選が平均台でバランスを崩した。審査員たちが何かをメモする。2番目、3番目と演技が続き、4番目はゆかりだった。
ゆかりの演技は完璧に見えた。
段違い平棒、運、すべてのきが滑らかで美しい。着も乱れなかった。演技が終わると、会に拍が起こった。
ゆかりは笑顔で礼をし、退した。
次は子の番だった。
子は呼吸をし、体育館の央へ歩みた。
首の痛みは相変わらずだった。けれど今は、それを気にしている余裕はなかった。
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