"消えた五輪候補" 第8話
防犯カメラを確認していますが、今のところにた形跡はありません」
「じゃあ、まだこのにいるのか」
正司が尋ねた。
「能性はあります。現、建物全体を捜索です」
正司はロッカールームに案内された。
子のロッカーは空だった。
荷物も練習着も消えていた。
「子の荷物はどこだ」
正司が叫んだ。
刑事は困惑した表で答えた。
「それも分かっていません」
その夜、健にも連絡が入った。
正司からだった。
「健、子が消えた」
「え……どういうことだ」
健は驚いた様子で尋ねた。
「訓練センターで方になったんだ。お、昨センターにっただろう。何かおかしなことはなかったか」
健はし沈黙した。
「いや、何も。昨、応援にっただけだ。今はってない」
「そうか」
正司は力なく答えた。
「父さん、子、きっとすぐ見つかるよ」
健はそう言った。
だが、その声には、どこか自然な響きがあった。
警察の捜索は夜通し続いた。
しかし子は見つからなかった。
翌、聞にはきな見しが載った。
「オリンピック候補選が失踪」
記事を見た正司は、そのに崩れ落ちた。
「子、どこにったんだ」
彼は何度も娘の名を呼んだ。
警察は本格な捜査を始めた。
まず、斎藤コーチが取り調べを受けた。
「さんとの関係は」
「教え子です。才能のある選でした」
「最に会った、様子はどうでしたか」
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「疲れているようでした。を怪していて、痛そうでした」
「怪を隠していたのですか」
「ええ。選考からされるのを恐れていたのでしょう」
刑事たちは、斎藤の過も調べた。
昭56、選を怪させた件が浮した。
「あなたは過に、選を怪させたことがありますね」
刑事に追及されると、斎藤はく否定した。
「それは誤解です。選が勝に無茶をしたんです」
しかし、厳しい指導、過の問題、そして最に子と会っていたという事実。
すべてが斎藤を疑わせた。
次に、ゆかりも取り調べを受けた。
「さんとはどんな関係でしたか」
「ライバルでした。でも、悪い関係ではありません」
「さんが消えて、あなたが得をしますね」
刑事が鋭く尋ねると、ゆかりの顔が変わった。
「そんなこと、考えたこともありません」
しかし、ゆかりには確なアリバイがあった。
午230分から3の、彼女はの選たちと待にいた。複数の証言があり、関与は否定された。
健も警察から事を聞かれた。
「あなたはに訓練センターへきましたね」
「妹を応援しにきました」
「何頃ですか」
「午7過ぎです。練習が終わったです」
「ロッカールームで妹さんと会ったのですか」
「はい。し話をして、お守りを渡しました」
健は落ち着いた様子で答えた。
刑事たちは彼の様子を観察した。
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だが、当の健には確なが見えなかった。
妹を応援していた兄。
そう見えた。
が経つにつれ、捜査はき詰まった。
証拠がない。
防犯カメラに、子がへた映像はない。
訓練センターのを何度探しても、見つからない。
まるで煙のように消えてしまったかのようだった。
昭594。
事件から1かが過ぎた。
正司は毎のように訓練センターのにち、娘の帰りを待った。
「子、帰ってこい」
その声は虚しく響くだけだった。
昭60を迎えても、子は見つからなかった。
警察の捜査は徐々に縮されていった。証拠がない。がかりがない。目撃者もいない。刑事たちは別の事件へ移っていった。
しかし、正司だけは諦めなかった。
毎、訓練センターのにち、娘の名を呼び続けた。
「あき子、帰ってこい」
その声はににくなっていった。
の仲たちは正司を配した。
「さん、もう休んだほうがいい」
それでも正司は首を横に振った。
「娘を待たなきゃいけないんだ」
方、健は事件の、急に真面目に働き始めた。
建設会社に就職し、毎現にるようになった。
「父さん、俺がを支える」
健はそう言った。
正司は息子の変化にし驚いた。
だが、ぶ余裕はなかった。
子がいないは、暗く、たく、気がなかった。
正司は子の部をそのままにしていた。
布団も、教科も、練習用の物も、すべて子がていったのままだった。
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