"白い車の義兄" 第6話
まゆと同じくらいだった。
その違を、兄はすぐに振り払った。
偶然だとおうとした。
2003。
まゆが消えてから7目。
志はその女性と結婚した。
女性の名は渡辺桜。
26歳。
静かで数のない女性だった。
しかし、結婚活が始まってすぐ。
桜は夫に違を覚え始めた。
最初はさなものだった。
話にる、必ずへる。
引きしには鍵をかける。
酒をむと急に無になる。
そしてある夜。
決定な来事が起きた。
志が眠りながら、名を呼んだ。
「……まゆ……」
桜は目をけた。
暗い部の。
夫の寝言だけが響いた。
最初は昔の恋かとった。
しかし違った。
声のにあったのは、懐かしさではなかった。
何かに追われるような苦しさだった。
その夜から。
桜は夫を注く見るようになった。
そして数ヶ。
掃除をしていた。
タンスの奥から古い箱を見つけた。
には古い領収。
帳。
そして1枚の写真。
若い女性が笑っていた。
裏側には名がかれていた。
「糸うまゆ」
そして。
「96」
桜は息を止めた。
この名をっていた。
夫から聞いたの妻。
あき子。
その妹。
1996、田原で消えた女性。
桜のが震えた。
なぜ夫は、この写真を隠していたのか。
なぜ7も切に持っていたのか。
その疑問は、やがて恐怖へ変わっていった。
桜は1で調べ始めた。
図館へき、1996の聞を探した。
広告
「田原 女性失踪」
その文字を入力した瞬。
さな記事が見つかった。
23歳女性。
面接へ向かったまま方。
名。
糸うまゆ。
桜はしばらく画面を見つめていた。
そして決した。
1週。
桜は兄へ話をかけた。
自分が志の妻だとは言わなかった。
慎に事件について尋ねた。
数。
2は横浜の喫茶で会った。
桜はすべてを話した。
寝言。
写真。
鍵のかかった引きし。
兄の顔から血の気が引いた。
い信じていたものが崩れていく。
そんな覚だった。
喫茶をた兄は、そのまま警察署へ向かった。
刑事はまだ勤務していた。
7ぶりの再会だった。
兄は震える声で言った。
「刑事さん……」
「私が違っていたようです」
刑事は何も言わなかった。
ただ、引きしから古い捜査資料を取りした。
7、保管していた資料だった。
兄は涙を流した。
刑事が諦めていなかったことを、その初めてった。
捜査は再された。
今度は7とは違った。
しい証言。
しい協力者。
そしてが方していた。
再び調べ直された公衆話記録。
すると、7には確認できなかった事実が判した。
公衆話から志のへ。
通話。
40秒。
そして、そのににいたのは妻のあき子だった。
何かを確認した能性。
アリバイを作るためだった能性。
その話は、たな証拠になった。
広告
さらに。
7に黙っていた物が警察を訪れた。
柄周辺で働いていた林という男性だった。
「本当はあの、話すべきでした」
「でも怖かったんです」
彼は1996924。
林へ入っていくいを見たと証言した。
そして警察が写真を並べる。
林は1枚を指差した。
「このです」
指差した物。
それは志だった。
警察は再び林を捜索した。
そして。
7に見つけられなかった所。
林の奥。
がしだけ違う所。
そこから布が見えた。
茶。
まゆが最に着ていたのだった。
発見されたもの。
黒いバッグ。
片方の茶い革靴。
そして、さな髪飾り。
7、ので見つかったものと同じだった。
DNA鑑定の結果。
致した。
7、林の奥に眠っていたのは糸うまゆだった。
刑事は兄へ話をした。
「見つかりました」
その言を聞いた兄は、声を失った。
話の向こうから泣き声だけが聞こえた。
その、志は逮捕された。
証拠を突きつけられた志は、最初は沈黙していた。
しかし。
2003の取り調べ。
静かな部ので、ついにをいた。
まゆへ特別なを抱いていた。
拒絶された。
姉にられることを恐れた。
そして、事件の。
でまゆを連れした。
7。
族のでしむ姿を演じ続けた。
その理由を聞かれた志は言った。
「そうしなければ、自然だったからです」
広告
その言葉に、刑事は言葉を失った。
裁判では、計画性が争われた。
しかし検察は主張した。
半の休暇。
移経。
証拠隠滅。
そして7、族ので演技を続けたこと。
裁判所もその主張を認めた。
判決。
兄は何も語らなかった。
ただ、裁判所ののベンチに座り、空を見げていた。
1996の。
まゆがをたの空と同じように。
く澄んだ空だった。
しい妻となっていた桜は、その志と婚した。
るに、兄へを残した。
「妹さんが私に教えてくれました」
「を信じることの切さを、そして疑う勇気も必だということを」
刑事は事件解決、田原の町を歩いた。
まゆが最に暮らしていた所。
今でははなくなっていた。
残っていたのは、ただのだけだった。
刑事はそこで静かに目を閉じた。
23歳。
就職したくて。
姉に迷惑をかけたくなくて。
希望を胸にをた女性。
そのが突然止まったのことをった。
7というがかかった。
しかし最には真実がらかになった。
最もくにいた。
最も信頼されていた。
その物が、最もきな秘密を隠していた。
糸うまゆ。
彼女が最に歩いた1996のの。
その記憶を、決して忘れてはいけない。
彼女がきた23を。
そして、7待ち続けた族の苦しみを。
私たちは覚えておかなければならない。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51