"霊場巡礼の嘘" 第7話
弘の表がこわばった。
「何を捜索するんですか」
「裏の廃坑です」
弘はスコップをろした。
「なぜそこを」
岸田はたく言った。
「あなたがる必はありません。案内してください」
午10、捜査チームは修院の裏のを登り始めた。は険しく、の根やがかった。弘が先を歩いたが、その表は暗かった。
1ほど登ると、古い鉄格子が現れた。
「ここが廃坑の入です」
鉄格子は錆びていたが、まだ頑丈だった。
鑑識班が切断器で鉄格子をけると、湿った空気が奥から流れした。
岸田は懐灯をつけた。
「入ります」
坑は狭く、1ずつ通れるほどの幅しかなかった。にはが溜まり、壁からは滴が落ちていた。音が暗い空に反響する。
20mほどむと、坑はに分かれた。
岸田は弘を見た。
「どちらですか」
弘は答えず、ただを指差した。
捜査チームはの坑へんだ。
10mほどむと、し広い空にた。
その、鑑識班の1が叫んだ。
「ここに何かあります」
懐灯のがの角を照らした。
が規則に掘り返された所があった。まるで誰かが急いで埋めたようだった。
岸田はスコップを受け取った。
「掘ってみよう」
をし掘ると、い布の切れ端がてきた。
さらに掘ると、布はきな袋の形になった。
鑑識班が慎に袋を持ちげた。
広告
から、骨が現れた。
蓋骨、肋骨、腕の骨、の骨。
骨だった。
原がろでつぶやいた。
「桐さんの言う通りだった」
岸田は弘を振り返った。
弘は壁にもたれ、を垂れていた。額から汗が落ちている。
「藤堂弘。これは何ですか」
弘は答えなかった。
岸田はい声で命じた。
「もっと掘ってみろ」
鑑識班が周囲をさらに掘り返した。
2mほどれた所から、また袋がてきた。
そのにも骨があった。
さらに別の所から、また別の袋が見つかった。
最終に、計4体の遺骨が発見された。
岸田はそのに膝をつき、暗いのから現れた骨を見つめた。
13、この暗のに埋まっていた。
誰にも見つけてもらえず、誰にも覚えてもらえず、ただたい廃坑の底で眠らされていた々だった。
岸田はちがった。
「藤堂弘。体遺棄、および殺幇助の容疑で逮捕する」
原が錠をかけた。
弘は抵抗しなかった。ただを垂れたまま、坑のへ連されていった。
鑑識班は遺骨を慎に回収し、科学捜査研究所へ送った。
翌、研究所から連絡が入った。
遺骨の元は、田子、佐藤子、林子、子と確認された。
13に消えた4だった。
しかし、藤堂政治の姿はすでになかった。
312、彼はブラジルきのに乗っていた。ブラジルには本との犯罪引き渡し条約がない。
広告
岸田は報告を聞き、机を叩きたい衝を抑えた。
犯のは見えている。
遺骨も見つかった。
だが、主犯は国のへ逃げていた。
捜査は、またきな壁にぶつかった。
弘の取り調べは難航した。
岸田が向かいに座り、淡々と質問をねても、弘はを閉ざしたままだった。
「廃坑から発見された4体の遺骨は誰のものですか」
「弁護士が来るまで供述しません」
「藤堂政治はどこにいますか」
「りません」
「3にブラジルへ国した。どこへったんですか」
「りませんと言ったでしょう」
弘は「らない」と「弁護士が来るまで話しません」を繰り返すだけだった。
遺骨はある。
だが、因は骨だけでは正確に特定しにくい。
体遺棄だけでは主犯の全体像を暴けない。
岸田は13の神刑事の報告を読み直した。
そこには、いメモが残されていた。
「薬。岡田文。再調査が必」
その文字を見た瞬、岸田はちがった。
翌朝、彼は岡田文のもとを訪ねた。
岡田は82歳になっていたが、甥ので暮らしていた。
「薬茶を覚えていますか」
「ああ、覚えています。院がずから入れてくださったの。体に良いと」
「その薬は、今も残っていませんか」
岡田は最初、首を横に振った。
「全部みましたけど……あ、でも、私がてくる、袋を1つこっそり持ち帰りました。何かおかしいとって。
まだ台所の引きしにあるはずです」
岸田の臓がねた。
そのの午、薬の袋は科学捜査研究所へ送られた。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51