"霊場巡礼の嘘" 第8話
1週、結果がた。
薬からは、ベンゾジアゼピン系の眠薬成分が検された。
さらに、遺骨4体からも同じ系統の成分が確認された。
研究員は説した。
「量に摂取すれば、識を失う能性があります。その状態で窒息させられたり、放置されたりすれば、につながる能性があります」
パズルがつながり始めた。
藤堂政治は、老たちに毎晩薬茶を振るっていた。徐々に判断力を鈍らせたで、財産寄の類に署名押印させた。そして最には量にませ、識を奪った。
その、甥の弘に運ばせ、廃坑へ遺棄した。
岸田はさらに記録を洗い直した。
19999、田の座から3200万円が引きされ、同じに修院法座へ振り込まれていた。10、11、12も同じだった。
それだけなら、修院側は「自発な寄」と主張できる。
だが岸田は別の質問をした。
「1999当、修院座から送記録はありますか」
職員が古い帳簿をめくり、やがて顔をげた。
「あります。19999から200012まで、毎送があります」
「どこへ」
「ブラジルです。サンパウロの座です」
「名義は」
「藤堂政治名義です」
岸田の指が震えた。
「額は」
「毎200万円から300万円。計で5000万円ほどになります」
岸田はコピーを受け取り、警察署へった。
「課、決定な証拠を見つけました」
広告
課は類を読んだ。
「老たちが自発に寄したなら、なぜ藤堂政治の個座に、しかもブラジルへ送されているんだ」
岸田はうなずいた。
「最初から逃資を作っていたんです」
この記録を突きつけると、弘は初めて揺した。
「叔父がブラジルに5000万円を送っていた。老たちのでだ」
弘の顔が青ざめた。
「それは布教資です」
「布教資を個座で受け取るのか。しかも犯罪引き渡し条約のない国へ」
弘は唇を噛んだ。
それでも完全にはを割らなかった。
しかし数、彼は弁護士を通じて取引を申した。
「叔父を捕まえるのを伝う。代わりに自分の刑を軽くしてほしい」
面会で、弘は岸田に言った。
「叔父はブラジルのサンパウロ、リベルダージ区にいます。系寺院に入りしているはずです」
「には」
「叔父には点があります」
「何ですか」
「母です。叔父は母に孝を尽くします。毎、母の誕に本へ来ると言っていました」
岸田の目が鋭くなった。
「母親の誕は」
「518です。埼玉県の老ホームにいます」
岸田はその報をもとに、老ホームを訪ねた。
施設は面会者名簿を確認した。
「直1の面会者は、息子の藤堂政治様だけです。の515に来られています。今も、518に来られるはずです」
岸田は名刺を2枚渡した。
広告
「藤堂政治から連絡があれば、すぐに私へらせてください。警察に連絡したことは、絶対に本に言わないでください」
そして510、施設から話が入った。
「刑事さん、政治さんから話がありました。518の午に訪問するそうです。から来ると言っていました」
岸田はすぐに成田空港へ連絡した。
サンパウロ発の便に、藤堂政治の名があった。
13越しの待ち伏せが始まった。
2012518、午9。
岸田刑事は成田空港に到着した。
保チームの控では、数の捜査員がすでに待していた。机のには藤堂政治の写真が置かれている。13の写真よりを取っているはずだが、顔ちは変わらないだろう。
午1140分、サンパウロ発のが着陸した。
岸田は入国ゲートくにち、1ずつてくる乗客の顔を確認した。
族連れの旅者。
仕事で来たらしい男性。
リュックを背負った若者。
その流れのに、黒い角鏡をかけた痩せた男が現れた。
は175cmほど。髪には髪が混じっていたが、写真の面ははっきり残っていた。グレーのスーツに黒い鞄を持ち、ゆっくりと歩いてくる。
岸田は図を送った。
捜査員が同にいた。
岸田は男のにった。
「藤堂政治さんですね」
男はち止まった。
顔がわずかにこわばった。
「どなたですか」
「警察です。
1999、慈源修院で起きた連続殺事件の容疑で逮捕します」
政治の目がきくいた。
「何のことですか。私は布教師です」
岸田は錠を取りした。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51