"消えた花嫁の名札" 第4話
加茂はそのきを静かに追っていた。
同じアパートの1階にんでいた70代の老婦は、彼にそっと話した。
「613の夜11頃でしょうか。の階から、たいものを階段で引きずりろすような音がしました。ドシン、ではなくて、すっ、すっ、と引くような音でした」
同じのコンビニで夜勤務をしていたアルバイトも、別の証言を添えた。
「夜0半頃、アパートの裏通りでい軽乗用のエンジン音がいこと鳴っていました。7分は続いていたといます」
姉妹が共同で所していたは、い軽乗用1台だった。
織の夜勤のアリバイが成するなら、あの刻にあのを運転できるはいないはずだった。
けれど、それだけでは決定な証拠にはならなかった。
623、加茂は3回目の聞き取りをった。
取調の空気はかった。窓のはで、ガラスに細い筋が流れていた。織は背筋を伸ばして座り、膝ので両を揃えていた。
「妹さんは、613の夕方、おかけのにどんな装でしたか。1回目のご供述では、私だとおっしゃいましたね」
「あ、はい。私でした」
「勤務ではなく、私だったということですね」
「はい。私です。確かに」
加茂は度、鉛を止めた。
そして角度を変えて尋ねた。
「もしかして、美緒さんがその、病院の名札をそのままつけていた能性はありませんか」
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そのだった。
織の答えは、いもよらぬ方向へびした。
「いいえ、勤務のままていきました。カーディガンのに名札もそのままでした」
言葉が終わりかけた瞬、織の目がわずかに揺れた。
「すみません。最あまり眠れなくて、違えてしまいました。さっき勤務だと言ったのは違いです」
だが、言葉はすでにただった。
加茂は帳のの方に赤いボールペンで丸をつけた。
そして余にくきつけた。
「本だけがるはずの装」
同じの夕方、加茂は係に内部報告を提した。係は類に目を通し、しばらく黙っていた。
「物証がない」
「分かっています」
「遺体もない。事件現もない」
「分かっています」
「苅田織さんは域で名の通った病院の護師だ。副主任への昇予定者でもある。は自発失踪、あるいは結婚絡みの駆け落ちの線でめている」
加茂は静かにファイルを閉じた。
「分かっています」
それ以、何も言えなかった。
その夜、彼は自宅の机のに座り、のひらほどの黒い革の帳をいた。公式の報告にはききれなかった観察を、その帳に移していった。
靴箱のいスニーカー。
指輪ケースのダイヤの指輪。
コンタクトレンズと鏡。
流し台の器。
夜0半のい軽乗用のエンジン音。
そして、織の揺れた瞳。
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最のページに、彼はく1だけきつけた。
「苅田織。いつか必ず、もう1度会う」
帳は引きしの1番奥にしまわれた。
それが再びかれるまで、8のを必とすることになる。
1999のは、加茂にとってことのほかいだった。
美緒の失踪事件は、公式には自発失踪の能性が最も力な案件として分類されていた。けれど加茂は、個なに世田区軒茶帯を歩き続けた。
アパートの周辺のクリーニング、コンビニ、公衆浴、タバコ。
「613の夜から14のけ方にかけて、このくで何かおかしいことを見ませんでしたか」
同じ問いを、何回も繰り返した。
だがが経つほど、記憶はれていった。防犯カメラのテープはすでに何度もきされ、消えていた。当の世田の商には、防犯カメラそのものがなかった。かろうじて設置されていたものも、24が経つと同じテープにきされる方式だった。
事件発から数には、決定だったかもしれないい軽乗用のろ姿は、この世から消えたも同然だった。
携帯話の通信記録も同じだった。保期はく、美緒が夕方に最に通話した相を特定することはできなかった。
DNA鑑定の技術はしていたが、当は微量の資料から個を特定するほど精密ではなかった。
捜査チームは、類と証言とに頼るしかなかった。
そして、は容赦なく流れた。
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