"8年目の生マイク" 第9話
遺骨の指の骨のそばで見つかった、だらけの結婚指輪の写真だった。
正弘の線が反射に写真へ向いた。
その瞬、瞳孔がきく揺れ、が刻みに震えた。
はその瞬を逃さなかった。
机のにを乗りし、正弘の目をまっすぐ見た。
「本田さん、お芝居は終わりです。もう台からりるですよ」
2007327。
たい空気の漂う取り調べで、は再び正弘と向かいっていた。テーブルのには鑑定結果が置かれ、赤い線が引かれている。
はたな証拠写真を取りした。
「遺骨を包んでいたビニールです。あなたが1999311に物で買ったものと、成分から製造期まで致しました」
正弘の指が、テーブルのできを失った。
は続けた。
「さらに、物の帳簿が残っていました。スコップ1本、農業用の型ビニール2枚。カード記録を残さないために現で支払っていますね」
隣に座っていた弁護士が慌ててを挟んだ。
「それは憶測です。畑の入れのために購入したものです」
は弁護士に瞬だけ線を向けた。
「畑の入れに、失踪にスコップと型ビニールを買い、け方に妻を呼びす必があるんですか」
取り調べは沈黙した。
はさらに類の束を置いた。
「あなたの自宅を捜索した際、斎の隅から古いパソコンが見つかりました。
広告
捨てずによく保管しておられましたね。サイバー捜査で復元しました」
正弘の顔から血の気が引いた。
「1999310、事件の2。あなたはパソコン通信と初期の検索エンジンで、こう検索しています」
は蛍ペンで塗られた部分を示した。
「失踪届続き。推定期。宣告処理」
正弘の両が、制御できないほど震えた。
弁護士さえも、線をそらした。
今度の沈黙は、正弘の首にかかった縄のようだった。
やがて、耐えきれなくなった正弘が、両で顔を覆った。
肩がきく揺れる。
「全部……全部話します」
は録音の作ランプを確認した。
「最初から、1つも漏らさずに話してください」
正弘は赤く充血した目をげた。
「1999310でした。さゆりが甥の匠に1000万円を渡してしまったことをったんです」
は静かに尋ねた。
「どうやってりましたか」
「で通帳の記帳をしたら、私の退職を預けていた座から1000万円が切で引きされていました。私の実印を勝に持ちしていたんです」
正弘の声には、りがにじんでいた。
「30、ニュースキャスターとして血のにじむいで稼いだです。リストラで期退職させられ、血の涙を流して守っていたなのに、相談の言もなく」
彼は拳を握りしめた。
「夜1140分頃、耐えきれずに1階にいるさゆりに話をかけて問い詰めました。
広告
匠は親もいないかわいそうな子で、居酒も潰れてに追われて首をくくる寸だった、と妻は言いました」
はを交えずに聞いた。
「それで」
「その夜、もできませんでした。退職してから、ので私の居所はなくなっていたんです。経済権を握られ、事をするにも、靴を1買うにも、さゆりの顔をうかがわなければならなかった」
正弘はテーブルを叩いた。
「30、このの黒柱は私だった。私が稼いできたでべてきたくせに、退職した途端、私を厄介者扱いし始めた」
は淡々と確信を突いた。
「それで、あの夜に計画した」
正弘は諦めたように頷いた。
「パソコンをつけて調べました。失踪届はどうすのか。として処理されるにはどれくらいかかるのか。そして翌、物で具を買いました」
佐藤が必にき留める。
は続けた。
「312のけ方、何がありましたか」
正弘は苦しそうに目を閉じた。
「午347分、自分の携帯から1階にいるさゆりに話しました。所の倉庫で静かに話をしようと」
「なぜ倉庫だったんですか」
「のではきな声をせません。隣のの老婆に全部聞かれてしまうので」
正弘は目をけた。
「さゆりはためらいましたが、4を回った頃に倉庫の方へ来ました。ダウンジャケットを羽織って、『何の話があって、こんなけ方にを呼びつけるの』と苛っていました」
が再び震えた。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51