"嘘葬りの豆腐店" 第13話
塀も建物も消え、そこにはただの空きが残った。
産として売りにされたが、物騒な噂のせいで誰も見向きもしなかった。
「あそこから遺体がたんだって」
「ボイラーのからだろ。気が悪い」
通りすがりの々が空きを指差し、ひそひそ囁いた。
空きには名もらぬ雑だけが伸びていた。
になり、涼しいが吹く頃、藤刑事が再びその所を訪れた。
トレンチコートの襟をて、片に焼酎の瓶、もう片方には甘いスティックコーヒーの袋を持っていた。
藤は雑のにち、焼酎の蓋をけた。
透な液体が、乾いたへ染み込んでいく。
「美さん。これからは狭くて暗い所じゃなく、広いところでゆっくり休んでください」
続いて、スティックコーヒーの袋を破り、をのへさらさらとまいた。
「甘いものが好きだったと聞きました。お湯がなくてすみません」
が吹き、コーヒーのが空へ散った。
その、どこからともなく、豆を煮たような甘くし青い匂いが漂ってきた。
藤は目を細めた。
「匂いってのは、ひどく持ちするもんだな」
の向こうから、主たちの話し声が聞こえた。
「あののことを考えると、今でも鳥肌がつよ」
「幽霊よりの方がよっぽど恐ろしいね」
藤はタバコを面に押しつけて消し、く呟いた。
「が恐ろしいんじゃない。と血筋に狂えば、獣以になるのがなんだ」
の空が赤く染まり始めていた。
藤のいが、廃墟となった跡のを通り過ぎる。
やがて彼の背は、商の暗がりのへ消えていった。
残された空きでは、雑だけがに揺れ、かさかさと音をてていた。
割れた瓦の欠片のに、落ち葉が1枚い落ちる。
誰も訪れない。
誰もいしたくない劇。
けれど、そのコンクリートので6沈黙していた美の声は、ようやく世のへ届いた。
男と逃げた女ではなかった。
子どもを捨てた母親でもなかった。
彼女は最まで、息子のためのさな指輪を握りしめていた。
そしてその事実だけが、汚された彼女の名誉を、静かに取り戻していた。
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