"50年目の沈黙の部屋" 第3話
膝を抱えるような姿勢で、肋骨のあたりに古い布片が絡みついていた。かつて病院のパジャマだったらしい布が、骨の部に張りついている。
5はけなかった。
廃墟を探索し、古い具や医療器具を見つけることはある。誰かが残した雑誌や、廃棄されたカルテの部を見つけることもある。
しかし、の遺骨は違った。
それは過の残骸ではなく、かつてここにきていた誰かの最だった。
「よう」
誰かが震える声で言った。
5はすぐに穴かられた。
階段をりる取りは乱れ、誰もをかなかった。へた瞬、たい空気が肺に入ってきた。誰かがそのにしゃがみ込み、別の1が警察へ通報した。
「廃病院のに、骨らしいものがあります。壁のに、部があって……」
声は震えていた。
通報から約30分、最初のパトロール警官が到着した。
警官たちは現を確認すると、すぐに応援を請した。やがて福井県警の捜査チームが到着し、病院の周囲には規制線が張られた。
ボランティアたちは証として事を聞かれた。
誰が壁を見つけたのか。
どの具を使ってけたのか。
部に入った者はいたのか。
の物に触れた者はいるのか。
健は何度も首を横に振った。
「には入っていません。覗いただけです。骨を見つけて、すぐにへました」
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その、ボランティアたちの作業は終わった。
しかし、警察にとっては始まりだった。
い防護を着た鑑識係が、懐灯と撮材を持って3階へがった。塞がれていた壁のにはが組まれ、部の周辺が慎に調べられた。
部のは、いが凍りついたような所だった。
空気はく、埃はく積もり、誰かが最にここへ入ったから、ほとんど何もいていないように見えた。
鑑識の調査により、最初の事実がらかになった。
その部は界から完全に隔絶されていた。
塞がれた入以に入りはない。窓もない。換気も確認できなかった。壁はく、内側から破ることは困難だった。
そこは通常の病ではなかった。
懲罰、あるいは独にい構造だった。
骸骨とベッドの残骸に加え、捜査員たちは部の隅にもう1つのな物を見つけた。
の束だった。
それは丁寧に折りたたまれ、紐で縛られていた。は黄ばんで脆くなっていたが、黒いインクでかれた文字は驚くほどよく残っていた。
鑑識係が慎にそれを拾いげ、保護袋に入れた。
表には、病院の名と部番号がかれていた。
しかし、その部番号は通常の病とは違っていた。
番号欄には、ただ横線だけが引かれていた。
それは患者観察記録だった。
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記録の付は、19714から19737まで続いていた。
警察はすぐに、この記録にかれた物を病院の古い資料と照し始めた。
幸い、病院の記録は完全には破棄されていなかった。県の医療記録保管庫に、部が保されていたのである。
鑑識専が遺骨を検査のために搬する、捜査官たちは古い観察記録の読解に没した。
記録は数おき、には毎のようにかれていた。
跡はほぼ同じだった。おそらく主治医か護師、あるいは担当の職員が記録していたのだろう。文字は丁寧で、がなく、事務だった。
だが、その淡々とした記録は、ひとりの患者の劇を静かにらかにしていった。
そこにかれていた名は、吉川。
の照で、その物の名は吉川であることが判する。
彼は19714、この病院へ入院した。
齢は30歳だった。
観察記録の最初のページには、当としては標準だが曖昧な診断が記されていた。
「制御能な攻撃性を伴う宗教妄」
吉川は、自分を預言者だと考えていたという。
神や悪魔について語り、の患者やスタッフと衝突し、薬の用を拒否したと記録されていた。
最初の数かは、標準な治療が試みられていた。
投薬。
診察。
観察。
しかし記録によれば、改善は見られなかった。
むしろ、攻撃な来事は増えていった。
病の具を壊した、付き添いの職員に掴みかかった、夜通し叫び続けた、事を拒否した。
文字は淡々としていた。
だが、そのい文章の裏には、ひとりの男がしずつ追い詰められていく様子があった。
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