"復讐とんかつの逆転便" 第7話
まだ本当に特許を侵害していると決まったわけじゃない」
父親は首を横に振った。
「あんたの会社にまでが回ったら、取り返しがつかない。うちのことは、うちで始末をつける」
「始末って、を閉めるつもりですか」
父親は答えなかった。
その横で、綾音が唇を噛みしめていた。
何かを言いかけたものの、疲れきった父親の背を見て、俯いてしまった。
をると、11のたい夜が頬を打った。
暗い商を歩きながら、琢磨ののに母親の声が蘇った。
おがないのは、あんたがいるからだよ。
結局、自分が関わったからこうなったのではないか。
自分が商品化を提案しなければ、柏はさなを守りながら静かに暮らせたかもしれない。
自分のが、また誰かを苦しめている。
翌朝、さらに追い打ちをかけるような連絡が入った。
顧問弁護士が、柏の商品を直ちにECサイトから取りげるべきだと助言してきたのである。
「堀川さん、経営者として判断してください」
話の向こうから、落ち着いた声が聞こえた。
「1つの商品を守るために、会社全体を危険にさらすわけにはいかないでしょう」
正論だった。
そのの午、琢磨は全社員を集めて状況を説した。
会議にはい沈黙が落ちた。
8しかいないさな会社である。
1ひとりに活があり、族がいる。
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琢磨の判断ひとつで、彼らの未来まで変わる。
説を終えると、若い男性社員が静かにをいた。
「社」
責めるような調ではなかった。
「俺たちのことも、考えてくださいよ」
その言が、琢磨の胸へく刺さった。
柏からは、これ以関わるなと言われた。
会社からは、商品を切りせと言われている。
どちらかを守れば、どちらかを失う。
琢磨は返事をすることができず、会議を終えた。
その夜、オフィスをた、1でを歩いた。
帰る所はタワーマンションにある。
それでもは、自宅とは反対の方向へ向かっていた。
気づくと、柏ののにっていた。
すでに閉を過ぎているのに、の奥にはかりがついていた。
ガラス越しに、綾音の父親が1で厨にっているのが見えた。
訴えられるかもしれない。
を閉めなければならないかもしれない。
それでも父親は、いつも通り肉へをつけ、とんかつを揚げ続けていた。
その背が、誰かに似ていた。
昼も夜も働き、疲れきっていても、翌朝にはまたをていった母親。
あの頃の琢磨には、何もできなかった。
声をかけることも、母親の苦しみを分かろうとすることもできなかった。
だが、今は違う。
琢磨がちろうとした、の裏がいた。
ゴミ袋を持った綾音がてきた。
琢磨に気づくと、瞬驚いた顔をし、それからさく笑った。
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「こんなに、何してるの?」
「散歩だ」
琢磨はぎこちなく答えた。
「こんなところまで?」
「たまたまだ」
綾音は追及せず、ゴミ袋を集積所へ置いた。
その、琢磨の隣へ戻り、閉じたの窓を見つめた。
「お父さんのこと、ってない?」
「何で俺がるんだ」
「さっき、ひどいことを言ったって、ずっと気にしてたから」
琢磨は首を横に振った。
「ってない。お父さんの気持ちは分かる」
綾音はしばらく俯いていた。
やがて、い息を吐きながら静かに言った。
「私は、堀川君に会えてよかったとってるよ」
何気ない言だった。
だが琢磨は、胸の奥がきくざわつくのをじた。
会えてよかった。
32きてきて、誰かからそんなことを言われた記憶がなかった。
母親には、自分がいるから苦しいと言われた。
学では、貧しいという理由で避けられた。
会社を始めてからづいてきたも、や肩きが目に見えた。
そのものを肯定する言葉を、琢磨はらなかった。
「じゃあ、おやすみ」
綾音はさくを振り、裏からへ戻っていった。
琢磨は暗いに1残り、拳を握りしめた。
今の自分には力がある。
3で積みげた会社がある。
識も、仲も、取引先もある。
それを使わずに逃げるなら、あの頃と同じ、何もできない子供のままだ。
会社を守る。
柏も守る。
どちらかを切り捨てるのではなく、両方を守る方法を探す。
琢磨はその夜、初めて自分ので覚悟を決めた。
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