"消えた背番号1" 第3話
それでも、族のではでいなければならなかった。
数、の黒話が鳴った。
受話器を取ると、プロ球団のスカウトだった。
『宮崎君、選抜会が終わったら正式に話をしたい。現点でも、契約はなくとも500万円を考えている』
「500万円……」
『会で結果を残せば、さらにがる能性もある』
「ありがとうございます」
話を切った、武志は震えるで受話器を置いた。
500万円。
母親を入院させられる。
妹をへかせられる。
弟にもをさせずに済む。
暗のに、ようやくさなが見えた。
だが、その翌朝だった。
台所からきな物音がした。
武志が駆けつけると、母親がに倒れていた。
「母さん!」
返事はなかった。
武志は所のへり、救急を呼んでもらった。
病院へ運ばれた母親は、すぐに検査を受けた。い廊で待っていた武志のに、医師が刻な表で現れた。
「お母さんは、すぐに入院が必です」
「お願いします。何とかしてください」
「期の治療になる能性があります。費用についても、ご族と相談しなければなりません」
武志は何度もをげた。
「お願いします。母を助けてください」
だが、今すぐ払えるはなかった。
契約を受け取れるのは選抜会のだ。それまでの治療費や活費を、どうすればいいのか分からなかった。
その、武志は練習を休んだ。
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事を聞いた監督は、武志の肩にを置いた。
「今は族のそばにいろ」
「すみません」
「ただし、選抜は諦めるな。おが投げなければ、チームは勝てない。お母さんも、おが投げる姿を見たいはずだ」
「はい」
武志は答えたが、は決まっていなかった。
方、武志のいないグラウンドでは、藤原が黙々と投げ続けていた。
チームメイトの1が声をかけた。
「藤原、武志が戻れなかったら、おがエースだな」
藤原はすぐに否定した。
「武志は戻ってくる。俺は控えでいい」
しかし、胸の奥では別の声がしていた。
もし武志が選抜会へけなければ。
もし自分が背番号1として投げれば。
プロのスカウトは、自分を見てくれるのではないか。
藤原はその考えを打ち消そうとした。
友が苦しんでいるに、何を考えているのだ。
それでも、にまれた期待は消えなかった。
318。
選抜会への発まで、あと2となった。
武志はグラウンドへ戻ったが、投球はらかに乱れていた。
速球はく浮き、変化球はで面に落ちた。
監督がマウンドへ歩いてきた。
「武志、どうした」
「丈夫です」
「丈夫な球じゃない」
武志はうつむいた。
のは、母親の治療費でいっぱいだった。入院費、薬代、妹の学費、弟の費。
すべてが自分の肩にのしかかっていた。
練習、藤原が武志の隣に座った。
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「本当に丈夫か」
武志はしばらく答えなかった。
やがて、かすかな声で言った。
「健。俺、どうすればいいんだろう」
藤原は驚いて顔を向けた。
音を吐かない武志が、初めて助けを求めた瞬だった。
「選抜へけよ。おが投げれば、プロが認める。契約で全部何とかなる」
「それまで待てないんだ。今、が必なんだ」
藤原は迷った末に言った。
「俺の親父に頼んでみる。を貸してくれるかもしれない」
武志は首を横に振った。
「できない」
「どうしてだ。友達だろ」
「友達だからだ。返せるかも分からないを借りられない」
藤原は何も言えなくなった。
武志を助けたい気持ちは、本物だった。
しかし同に、助けなければ自分がエースになれるという考えも消えなかった。
友か、自分のか。
藤原はそので揺れていた。
319。
発の午、武志は母親の病を訪れた。
母親は酸素を吸いながら、苦しそうに呼吸していた。それでも武志を見ると、精いっぱいの笑顔を浮かべた。
「武志、は発ね」
「うん」
「頑張って。お父さんも、きっと見ているわ」
「母さん、俺……」
選抜へけないかもしれない。
そう言おうとした、母親が先にをいた。
「私のことは配しないで。あなたは野球をしなさい」
「でも」
「武志がマウンドにつことが、お母さんの願いよ」
武志は何も言えなかった。
丈夫なはずがないのに、母親は丈夫だと言った。
その優しい嘘が、胸にく刺さった。
病院をると、空は夕焼けに染まっていた。
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