"兄の嘘、妹のリボン" 第5話
夫婦が誇りにしていた学活も、授業料として渡していたも、息子が語っていた将来のも、全てが嘘だった。
封筒のには、偽造を依頼したことを示すいメモと、印刷業者の号の部がかれた片も入っていた。拓也が1で類を作ったのではなく、協力した者がいたことを示していた。
幸子はへ座り込んだまま、いけなかった。
その夜、眠ろうとしても目を閉じることができなかった。井を見つめているうちに、くなる数、幸が何気なくにした言葉が蘇った。
「今、お兄ちゃんの学へってきたの」
あの、幸子は妹いの娘が兄へ会いにったのだとった。ところが今、その言葉は全く違うを持って聞こえた。
幸は学へき、兄が籍していないことをった。
その、兄へ何かを確かめようとした。
そして数、自宅のくで命を奪われた。
娘のと息子の嘘が、幸子ので1本の線につながった。
「まさか……」
幸子は元へを当てた。
息子を疑うことは、娘を失ったも自分を支えてくれた最の族を疑うことだった。真実を確かめれば、残された庭まで完全に壊れてしまうかもしれなかった。
幸子は数、封筒をにしたまま何もできなかった。
しかし娘の笑顔が浮かぶたび、見なかったことにはできないとい直した。
広告
震えるで話を取り、未解決事件捜査班へ連絡した。
伊は幸子から話を聞くと、すぐに自宅を訪れた。
2は偽造類の入った封筒を挟み、居で向かいった。幸子は何度も言葉を詰まらせながら、娘が兄の学へったと話していたことを伝えた。
伊は封筒から類を1枚ずつ取りした。
4、証拠がなく追及できなかった拓也の空が、再びのに浮かんだ。名学の学という提そのものが嘘だったとすれば、当のアリバイも最初から作られたものだった能性がある。
伊は偽造類の鑑定を依頼し、事件記録を倉庫から運びした。
殺罪の公訴効はすでに廃止されていた。が経ったからといって、犯が罪を免れることはない。
ただし、別の期限が迫っていた。
も事件現のも、数週には取り壊される予定だった。現そのものが失われるに、残されているものを全て確認しなければならなかった。
伊と佐藤は、4の捜査資料を最初から読み直した。
最初に注目したのは、拓也がいたとされる学図館だった。佐藤は当映像を管理していた部会社を調べ、別の会社へ吸収されたもサーバーが保されていることを突き止めた。
削除されたとわれていた映像の原本が、4残っていた。
広告
さらに、当拓也と同じ閲覧を利用していた優という学も見つかった。伊が事件当の記憶について尋ねると、はしばらく考えた、ある頼み事をいした。
「席を見ていてほしいと言われました」
「誰にですか」
「拓也です。学証も預かっていたといます」
はく考えず、拓也の席へ座っていたという。拓也が戻るまでの、必があればカードを使うよう頼まれた記憶もあった。
その話をしている途、の顔から血の気が引いていった。
自分が何気なく引き受けた頼み事が、殺事件のアリバイ作りに使われた能性へ、ようやく気づいたのだった。
の証言によって、完璧に見えた拓也のアリバイへ初めて亀裂が入った。映像を確認すると、事件当の午、拓也が使っていた席には別の物が座っていた。
顔を拡して照した結果、その物はと判断された。
拓也本は、午のい、閲覧にいなかった。
伊は事件当の幹線の刻を調べ、京と故郷を往復する程を再現した。午に図館へ入り、へ席と学証を預けて駅へ向かえば、事件に故郷へ着くことができた。
幸と会い、犯に及んだ、再び幹線で京へ戻る。夕方に学へ戻れば、入退記録を残すことも能だった。
4に伊が帳へき残した仮説が、現実を帯び始めた。
方、封筒に残っていた片から、偽造類を作った渡辺浩司も特定された。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51