"親友に夫を譲った日" 第5話
義母のを訪ねたのだろう。
すでに義母は、施設へ移る準備のため別の所に滞していた。
「お母さんなら、にはいないわよ」
「どこにいるの? 教えなさい!」
「どうしてあなたに教えなきゃいけないの?」
「おを持ってるでしょう! それが駄目なら、あのを売ればいいじゃない!」
私は言葉を失った。
子は友幸の妻になれば、義母の財産まで自分のものになるとっていたらしい。
「それ、私に聞かれてもいいの?」
「別にいいわよ。婚届をしたら、あんたはになるんだから」
私が義母へらせる能性すら考えていない。
子は昔から、自分よりだとったの気持ちを像できない女だった。
「分かったわ。お母さんがいる所を教える」
「だったら最初から素直に言いなさいよ」
私は義母が入居を予定している介護施設の所を伝えた。
話の向こうで子が笑いす。
「すぐって、を売る続きをさせるわ」
「それは無理よ」
「何? 悔しいの?」
「そうじゃなくて、はもうないから」
子の笑い声がぴたりと止まった。
「どういうことよ」
「お母さんが売ったの。介護施設の入居費用にするためにね」
義母に施設入居を勧めた、最初は費用の問題で断られた。
そこで私は、自宅を売却して入居費用に充てる方法を提案した。
義母はく悩んだ末、を放す決をした。
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ただし、友幸に婚準備を悟られないよう、売却も買い主へ賃を払いながらみ続けていた。
すでに売却代の半は、施設の入居や今の活費として管理されている。
友幸や子が自由に使えるではない。
「じゃあ、あの女はおを持ってないの?」
「あなたに渡すおはないわね」
「ふざけるんじゃないわよ! 全部あんたのせいじゃない!」
子は断末魔のように叫び、話を切った。
それ以、私は2からの話になかった。
弁護士を通し、友幸と子へ慰謝料を請求した。
く揉めるとっていたが、2はにも提示された額を受け入れた。
浮気の証拠だけでなく、妊娠を自分たちで認めた録音もあったため、争っても勝ち目がないと判断したのだろう。
婚届も弁護士を通じて友幸へ渡した。
3か、私は正式に友幸と婚した。
しいまいも見つかり、葵との活が始まった。
義母も施設へ入り、穏やかに暮らしている。
すべてが片づいたとった頃、弁護士事務所を訪ねた私に、1通の封筒が渡された。
「島さん宛てに、こちらへ送られてきました」
に入っていたのは、結婚披パーティーの招待状だった。
友幸と子の名が並んでいる。
私の所をらない子が、弁護士を通して送りつけてきたのだ。
夫を奪われた惨めな女として参加しろ。
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おそらく、そういうだろう。
破り捨てようとして、私はを止めた。
友幸の会社関係者も招かれるはずだ。
それなら、見せてあげよう。
夫を奪われ、何も残らなかった女が、今どうなっているのかを。
会はホテルの披宴会だった。
結婚パーティーという名目だが、装飾も料理も本格で、実質は結婚披宴だった。
借があるはずなのに、ずいぶん張り切ったものだ。
私が会を見回していると、背から声をかけられた。
「来てくれたのね。ありがとう」
振り返ると、派なドレスを着た子がっていた。
隣には友幸がいる。
子のお腹はかなりきくなっていた。
「ここまでやるなら、普通に結婚式をすればよかったのに」
「妊娠だから、ウェディングドレスが着られないのよ」
子は私の全を眺め、満そうに笑った。
「でも来てくれて嬉しい。絶対、来られないとってたから」
そう言うと、わざとらしく目元を押さえた。
「ごめんね、弥。私、あなたから旦さんを奪っちゃって」
周囲の客がこちらを見る。
すぐに線を逸らすもいれば、ややかな目を向けてくるもいた。
子は自分に都の良い話だけを伝えているのだろう。
私は何も言わず、会内に目の物を探した。
やがて混みの向こうに、美さんを見つけた。
「ごめんなさい。りいが来ているから」
私は子かられ、美さんの方へ歩いた。
予どおり、子と友幸もついてきた。
私を勢ので笑いものにする会を逃したくないのだろう。
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