"10年目のボイラー室" 第3話
警察は青龍旅館にいた関係者を順番に調べ始めた。
最初に疑いの目を向けられたのは、従業員の田だった。
理由は証言の変化だった。
最初は「午11頃に田を見た」と確に話していたのに、になると「くからだったので分からない」と言い直している。
刑事が理由を尋ねると、田は線を落とした。
「そのの朝、し酒が残っていたんです。だから記憶がはっきりしなくて」
さらに調べると、田には銭な問題があることも分かった。
最になって何度も佐藤夫婦へ料の借りを頼んでいた。では、にも借があるらしいという噂まで流れていた。
「客へを盗みに入ったんじゃないか」
「田さんに見つかって、何かあったんじゃないのか」
そんな話が元で広がった。
しかし、田を疑う証拠はなかった。
田の部や持ち物も調べられたが、田のものは何も見つからなかった。田自も、何度尋ねられてもく否定した。
「俺は何もしていません。そのは掃除をしていました」
ただし、そのに田が掃除をしていたことを証できる物もいなかった。
次に疑われたのが佐藤夫婦だった。
青龍旅館の経営が苦しいことは周囲にもられていた。借もあり、客の減に悩んでいた。
警察は夫婦の預や借入状況まで確認したが、田の失踪につながるようなのきは見つからなかった。
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佐藤は調査されることにい満を示した。
「20くここで商売してきました。客と問題を起こしたことなんて1度もありません」
妻も同じように訴えた。
「私たちだって困っているんです。宿泊していたがいなくなったんですから」
警察が旅館へ何度も入りするようになると、では別の噂も広がった。
青龍旅館で何かあったらしい。
あの旅館は危ない。
宿泊客が消えた。
葉の季節にもかかわらず、予約を取り消す客まで現れた。
ただでさえ苦しかった旅館経営に、事件はきな打撃を与えた。
方、警察が気にしていたのは午4にかかってきた話だった。
「田さんの部につないでほしい」
そう言った男は誰なのか。
警察は田の勤務先へ連絡し、同僚全員へ確認した。しかし、そのに青龍旅館へ話した者はいなかった。
田の親戚やも調べられた。
それでも該当者はてこなかった。
話の男は、名すら残していなかった。
警察は、田が誰かと曽で会う約束をしていた能性も考えた。
そこで再び注目されたのが、2階の宿泊客による証言だった。
正午頃、1階から男2の声が聞こえた。
もし1が田だったとすれば、午9にした田は、その旅館へ戻っていたことになる。
そして誰かと話していた。
それは誰だったのか。
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佐藤なのか。
田なのか。
それとも、旅館へから入ってきた第者なのか。
警察は当宿泊していた客にも再び話を聞いた。
しかし、田と話したと認める者はいなかった。
数が経つにつれ、捜査は急速にき詰まった。
防犯カメラが至るところにある代ではない。携帯話の位置報もなく、田が最にどこへったのかを示す客観な記録は残っていなかった。
川へ落ちたのか。
で事故に遭ったのか。
自らどこかへったのか。
それとも誰かに何かをされたのか。
どれも能性にすぎなかった。
やがて田の名は方者として登録され、捜査規模は縮された。
佐藤。
田。
午4に話をかけてきた正体の男性。
疑わしい物はいた。
しかし、誰が何をしたのかを示す証拠は1つもなかった。
が経つにつれ、田誠の失踪はしずつ々の記憶かられていった。
警察の類には未解決事件として残ったが、しい証言も証拠もなかった。担当者が別の部署へ移ると、積極に捜査する者もいなくなった。
名古の会社でも、田はいずれ戻る物ではなく、期の方者として扱われるようになった。
借りていた居も理され、残された私物は方にいる親戚へ引き渡された。
青龍旅館にも、きな変化が訪れた。
事件、客が目に見えて減ったのだ。
葉の期になっても空が増え、話で宿泊予約を入れた客が旅館の名を聞いた途端に断ることもあった。
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