"消えた御曹司と500万の罠" 第1話
本悠は、狭いワンルームのベッドに腰をろし、恋のミキが来るのを待っていた。
最のミキはなぜか連絡を避けるようになり、会おうと誘っても理由をつけて断ることが増えていた。それなのに、このは突然「話があるから部へく」とメッセージが届いた。
恋が来るというのに、悠の胸にあったのはびよりもだった。
ミキから何かを頼まれるたび、悠はできる限り応えてきた。価なや事をねだられても、自分の活費を切り詰めて用した。
幼い頃から族をらずに育った悠にとって、自分を好きだと言ってくれる女性がいること自体が信じられないほどありがたかったからだ。
しかしし、ミキからブランド物のバッグをねだられただけは断った。
そのバッグを買えば、これまで貯めてきた結婚資のほとんどが消えてしまう。悠はいつかミキと庭を持つため、さな料のからしずつ貯を続けていた。
「今度じゃ駄目かな。これは、俺たちが緒に暮らすためのおだから」
そう説したが、ミキはひどく嫌になった。
それ以来、連絡は急に減った。
悠がそんなことをい返していると、玄関からノックの音がした。
胸がねる。悠は度く息を吸ってからちがり、急いでドアをけた。
広告
そこにはミキがっていた。
ところが彼女は部に入るなり内を見回し、骨に顔をしかめた。
「あなた、よくこんなところで暮らせるわね」
「え?」
「鳥みたい。ううん、鳥だってこんなところ嫌がるかも」
悠は胸を刺されたような痛みを覚えたが、表にはさなかった。いつものように笑おうとしながら、彼女のために子を引いた。
「だからで会おうって言ったのに。どうして急に部へ来たんだ?」
ミキは座ろうとしなかった。
待っていた質問をされたようにバッグをき、から1枚のを取りして悠へ差しした。
「これ、見て」
「何?」
を受け取った悠は、そこに並んだ文字を目で追った。
産婦科。
妊娠。
悠の目がきく見かれた。
「本当なのか?」
ミキは黙ったままだった。
それでも悠の胸には、気にいものが込みげた。
「俺がお父さんになるのか……?」
声が震えた。
自分にも族ができる。
その事実が信じられなかった。
悠は5歳の頃に記憶を失った状態で保護され、そのは児童養護施設で育っていた。自分がどこでまれ、両親が誰で、なぜ1になったのか、何ひとつらなかった。
だからこそ、庭というものに倍い憧れがあった。
悠はを持ったままミキへ歩み寄った。
「ミキ、結婚しよう」
ミキの眉がわずかにいた。
「賃貸の初期費用くらいは貯めてある。
広告
きなは無理だけど、さな部を借りて3で暮らそう」
言葉をねるほど、胸がくなった。
「俺、頑張るから。君も赤ちゃんも、本当に切にする」
ずっと見ていた族が、を伸ばせば届くところにあるようにえた。
しかしミキの顔は、悠が話すほどたくなっていった。
「私、どうかしてた」
「え?」
「あなたみたいなと2も付きってたなんて」
悠の笑顔が固まった。
ミキは部をもう度見回し、吐き捨てるように言った。
「最初に会った、朝グループの本社からてきたでしょう? だからてっきり、あそこのエリート社員だとったの」
悠には覚えがあった。
2、運転として本社へを戻した、偶然ミキと会った。彼女の方から声をかけてきて、何度か会ううちに交際が始まったのだ。
しかし悠は最初から隠していなかった。
自分は社員ではなく運転であること。
卒業までしかしていないこと。
児童養護施設で育ち、親が誰なのかもらないこと。
すべて話した。
その、瞬だけ表を曇らせたミキが「そんなの関係ない」と笑ったことを、悠は今でも覚えていた。
「何を言ってるんだ。俺は最初から全部話したじゃないか」
「それでも、もうし何とかなるとってたのよ」
ミキは苛ったように遮った。
「現実に考えてみて。
あなた卒でしょう。学もていない。柄もない。ただの運転」
「……」
「だからしてる彼女が欲しがったバッグ1つ、買ってあげられないんじゃない」
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
不当解雇された高卒技術者の特許逆転劇
精密機械メーカーの技術者・中村誠は、高卒叩き上げであることを理由に、名門大卒のエリート上司・北川部長から「掃除とオイル交換しかできない無能な雑用係」と見下されていた。ある日、大口顧客向けの製品に二百個超の大量不良が発生。北川は自らの設定ミスを隠蔽し、誠を犯人に仕立て上げて責任を押し付ける。深夜に真相を暴くアクセスログのUSBメモリーを確保した誠だったが、直後に車に撥ねられ全治三ヶ月の重傷を負ってしまう。病室から連絡を入れると、北川は「好都合だ、クビにしておく」と嘲笑し電話を切った。だが誠が病室のベッドから特許庁へ出願した一枚の技術書類と、彼が去って完全沈黙した工場の製造ラインが、欺瞞に満ちた組織に前代未聞の崩壊をもたらす――。職場逆転|人生逆転2.5万字5 430 -
完結第14話
高卒エースを掃除係に落とした無能社長
大手玩具メーカーの営業エース・篠田零司は、高卒叩き上げながら十二年間にわたりトップの成績を維持してきた。だが、恩師である先代の矢吹会長が病で倒れ、新社長に就任した倉島哲也から全社報告会で突如「先月の達成率は三十パーセント、部内最下位のお荷物だ」と虚偽の数字で公開処刑される。強烈な学歴コンプレックスと嫉妬を燃やす倉島は、篠田を社長室の雑用係へと追いやったばかりか、彼が一年かけて心血を注いだ総額百億円の大型独占契約を故意に破談へ追い込む暴挙に出る。しかし、篠田の手元には「確定売上高一億四千二百万円」を証明する売上管理ファイルの原本が存在していた。理不尽の極みの中で静かに退職届を差し出した篠田。だが、現場の異変を察知した車椅子の矢吹会長が立ち上がり、握りつぶされた証拠が暴かれたとき、欺瞞に満ちた社長室に前代未聞の鉄槌が下される――。職場逆転|人生逆転2.9万字5 204 -
完結第11話
「子どもを産めない」と捨てられた妻の逆転
結婚前は優しく誠実だった夫・誠。 しかし結婚後、彼の本性は少しずつ姿を現していった。 子どもを望めない妻を「役立たず」と罵り、家では暴言を浴びせながら、自分は若い女性との時間を楽しむ。 かな子は「自分が悪いのだ」と耐え続け、愛した人との生活を守ろうとしていた。 だが、ある夜、夫の裏切りを示す決定的な証拠を見つける。 そして離婚を決意したかな子のもとに、長年知らされていなかった父からの連絡が届く。 そこで明かされたのは、彼女自身も知らなかった巨大な財産と、人生をやり直すための力だった。 すべてを失ったと思っていた妻が、実は何も持たない弱者ではなかったと知った時――。 誠の傲慢な要求と、隠されていた真実が次々と崩れ始める。 愛だと信じた結婚の終わりから、かな子の本当の人生が始まる。夫婦|第二の人生|不倫1.6万字5 397 -
完結第23話
締め出された新社長
父から印刷会社を継ぎ、代表取締役として誰よりも早く出社した初日の朝、私のカードキーだけが赤く点滅して通用口が開かなかった。清掃員や入社三カ月の新人、配送トラックが次々と通過していく中、古参の会計は「先代の指示で権限を削除した」と告げる。社内では判断を下せる者がおらず、営業と現場の怒号が響き合い、輪転機が完全に停止した。私は閉ざされたガラス扉の脇にパイプ椅子を置き、冷たい缶コーヒーを握りしめた。職場逆転|人生逆転|怒り|親子関係|修羅場3.5万字5 216 -
完結第14話
年商一兆円の父にワインをかけた婚約者
創業家の御曹司との顔合わせ当日。ボロ車で駆けつけた私の父を見た義母は、「貧乏人の娘が」と父の頭から赤ワインを浴びせかけた。婚約者も冷笑し、父を詐欺師呼ばわりしてロビーで土下座を迫る始末。 だが、父は一言も取り乱さず、静かにワインを拭った。 「この縁談はなかったことに」 指輪を投げ返し、父の向かった先は日本中が恐れる巨大財閥の最上階。傲慢な親子が信じていた“金と権力のルール”で、静かな断罪劇が幕を開ける。因果応報|人生逆転|金銭問題|修羅場2.1万字5 129 -
完結第13話
二十七年目の嘘
58歳で急死した夫の遺品を整理していた美智子は、引き出しの奥から27年前の「採用内定通知書」を見つける。当時不合格だと思い込んでいた東京の出版社からのものだった。封筒の裏には夫の筆跡で「辞退連絡済」。夫はなぜ私の人生を勝手に奪ったのか。さらに、夫の出世作となった伝説の住宅企画が、かつて自分が書いた企画ノートそのものだったことを知る。奪われた名前と人生を取り戻すため、妻が下した決断とは。人生逆転|夫婦|真実|第二の人生|親子関係2.0万字5 57