"午前0時30分の空白" 第2話
しかもそれは、ただ置かれていたのではなかった。
朝ので、煙をげていた。
1991926午8頃。
平塚内のが交差するガードに設けられた歩者用を、の男性が通りかかった。
仕事へ向かう途だった。
朝の帯である。
周囲ではすでに通勤や通学のため々がき始めていた。完全にの気配が消える所ではなく、が昇れば常に誰かがき来する空だった。
へづいた男性は、異変に気づいた。
煙だった。
の奥から、煙ががっている。
脇や空きで何かが燃えているのとは違う。半ば閉ざされた空に煙が漂っているため、通り過ぎるには自然だった。
男性はを止めた。
の入から奥を見る。
約10mほど入った所に、きなドラム缶のようなものが置かれている。
そこから煙がていた。
何かのごみを燃やしているのか。
誰かが廃棄物を処理しているのか。
当、所によってはドラム缶で雑や廃材を焼く景が全く珍しいものではなかったとも考えられる。けれど、歩者用ので燃やすとなれば話は別だった。
男性は警察へ通報した。
やがて警察官が到着し、現を確認する。
のには煙が滞留していた。
ドラム缶は、入からすぐの所ではない。
約10m奥。
通から完全に見えなくなるほど奥まっているわけではない方、から目見ただけではの様子が分かりにくい位置でもあった。
広告
警察官たちはを消し止めた。
そして、を確認した。
その瞬、朝のは常の空ではなくなった。
ドラム缶の内部から、のものとみられる痕跡が見つかったのである。
状態はひどく損なわれており、そので元を判断できるような状況ではなかった。
警察による確認と司法解剖がめられる。
性別。
齢。
体特徴。
残された歯など、元につながるわずかな報。
そうしたつつを積みねた結果、ドラム缶のから見つかった物は、約12から方が分からなくなっていた若い女性である能性がまっていった。
清田け子。
24歳。
藤沢にむ会社員。
族が帰りを待っていた女性だった。
藤沢駅で取りが途切れていた女性と、平塚ので見つかったドラム缶。
つの所が、最悪の形でつながった。
しかし、そのつながりのには12もの空があった。
司法解剖では、してから発見までおよそ1週ほど経過しているとみられた。
この判断をそのまま系列へ置くと、解な差が残る。
け子が方になったのは914未。
発見されたのは926。
約12。
方、から発見までは約1週。
もちろん司法解剖による期の推定には幅があるため、単純な引き算だけで結論をすことはできない。
それでも、失踪した直に命を奪われ、そのまま12まで放置されていたとだけ考えるには、のずれがした。
広告
失踪からまでの、け子はきていたのか。
どこかに滞していたのか。
監禁されていたのか。
あるいは期の推定に幅があり、実際にはもっとい段階でくなっていたのか。
もしに別の所で保管されていたのなら、どこだったのか。
公されている報では答えがない。
ただ、確かなのはつだった。
け子が消えた所と、見つかった所は同じではなかった。
藤沢から平塚。
そのに、誰かが彼女を移させた能性が極めてい。
そして、その最終段階で使われたのが、あのドラム缶だった。
警察は現周辺を調べた。
ドラム缶そのもの。
。
周囲の。
両ができる所。
目撃者がいなかったか。
審な物を見なかったか。
け子が失踪した藤沢駅周辺の報と、平塚での発見をつなぐ何かがないか。
しかし、事件を難しくしたもののつが、ドラム缶の状態だった。
が使われていたため、内部に残されるはずだった痕跡の部は失われていた能性がある。
さらにドラム缶には、空気を通すためのものとも考えられる穴がけられていたという報がある。
もしそうであれば、単にへ入れて放置したのではなく、「燃焼させる」
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第22話
側溝の底のGPS
六年前に娘を事故で亡くし、近所から「不注意な母親」と後ろ指を指されながら暮らしてきた私。ある朝、向かいの名士宅との境界にある側溝の泥から、泥まみれの「娘の見守りGPS」を掘り出した。壊れた端末のログを開くと、六年間、豪雨の深夜になるたび、向かいの家のWi-Fiと通信を繰り返していた。問い詰めた夫が無言で開けた物置には、壁一面に貼られた隣家の行動記録と、五年間密かに改造されていた配管図面があった。ミステリー|因果応報|裡切られた|真相3.3万字5 223 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51