"吹雪の一杯" 第12話
「どれですか!」
「蓋にいてあるでしょう!」
騒がしい。
でも。
嫌ではなかった。
ある夜。
客が全員部へ戻ったあと。
真帆が囲炉裏のへ座った。
「女将さん」
「何?」
「私、京の仕事をし減らそうといます」
「どうして?」
「週の半分くらい、こっちへ来たいんです」
富美子は。
湯呑みを置いた。
「ここへ?」
「はい」
真帆は。
昔、自分が傷をつけた柱を見る。
「父がくなってから、ずっと気になってたんです。父が最まで事にしてた所が」
俊は。
くなるし。
娘へ度だけ言ったという。
――昔、族を晩だけ元に戻してくれた宿がある。
その。
真帆は。
どこのことか分からなかった。
遺品ので。
古い宿泊券を見つけ。
灯里館の名をった。
その。
仕事で辰リゾートの域資料を調べた。
同じ名が。
発対象のにてきた。
だから。
最初は。
確認するだけのつもりで来た。
泊して。
昔のいを見て。
帰るつもりだった。
「でも」
真帆は笑った。
「噌汁をんだら、帰りにくくなりました」
「そんなに?」
「じゃないんです」
真帆は囲炉裏を見る。
「父と母が笑ってたのじが、まだ残ってた」
富美子は。
何も言わなかった。
「いきなり継者になりたいとか、そういう話じゃないです」
「それは困ります。私、まだぬ予定ないもの」
「ってます」
「じゃあ?」
「週末だけでも」
真帆は。
し緊張したように言った。
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「噌の仕込み、教えてください」
富美子は。
台所の棚へ目を向けた。
番奥。
。
けられなかったさな壺。
隆と最に仕込んだ噌。
い。
蓋をければ。
夫との最のが。
本当に終わってしまうとっていた。
でも。
今は。
し違う気がした。
「、朝5半ですよ」
「いですね」
「嫌ならいいのよ」
「起きます」
「絶対?」
「……たぶん」
「たぶんじゃ困ります」
で笑った。
翌朝。
真帆は。
本当に5半に起きてきた。
し寝癖がついていた。
作業台の。
さな噌壺。
蓋には。
隆の字。
《仕込み 富美子と》
富美子は。
しばらく指で文字をなぞった。
「けます?」
真帆が尋ねる。
「ける」
蓋は固かった。
真帆が壺を押さえ。
富美子が。
ゆっくり回す。
ふわり。
熟成した噌のり。
富美子は。
目を閉じた。
隆が。
隣で。
「今のは来だ」
と笑ったような気がした。
さな匙で。
を見る。
塩気。
甘み。
いり。
し。
涙のもした。
「どうです?」
真帆が聞く。
富美子は。
しばらく黙ってから。
笑った。
「来」
そのの噌汁に。
ほんのしだけ。
その噌を使った。
全部は使わない。
残りは。
しく仕込む噌へ。
量混ぜる。
「の噌を残すんですか?」
「そう。によっては、こうするの」
富美子は。
しい壺へ。
古い噌を匙入れた。
「全部しくしない。のものをし残して、次へ渡すの」
真帆は。
静かに頷いた。
その言葉が。
噌の話だけではないことを。
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とも分かっていた。
昼。
玄関の引き戸がいた。
「ただいま」
し変な本語。
トーマスだった。
今度は。
吹の杉林ではなく。
普通に玄関から入ってきた。
「おかえりなさい」
富美子が答える。
トーマスは。
囲炉裏のへ座った。
噌汁をむ。
目をきくする。
「Different」
「違うでしょう」
目。
し考える。
「But……same」
富美子は笑った。
「そういうものです」
トーマスは。
カメラをそうとした。
富美子が。
で遮った。
「今は撮らないで」
「Why?」
「今は仕事じゃないでしょう」
トーマスは。
し考え。
笑ってカメラをしまった。
で。
を囲む。
ののが。
窓の向こうで静かにっていた。
辰リゾートの調査は。
まだ続いている。
30の旧資材置についても。
県が確認を始めた。
杉本会が。
直接何か正をしたと決まったわけではない。
の付の同も。
誰が作ったのか。
まだ調査だ。
は。
別部署へ移った。
度だけ。
が届いた。
《私はあの旅館の価値を分からないまま、値段だけをつけていました。
今えば、それが番恥ずかしいことでした》
正志も。
謝りに来た。
辰側から。
売買が成した。
紹介料を受け取る約束をしていた。
富美子は。
すぐには許さなかった。
ただ。
追い返しもしなかった。
「働いて返しなさい」
そう言った。
今では。
に度。
かきと薪割りを伝いに来る。
は。
簡単には変わらない。
でも。
しずつなら。
変わることもある。
夕方。
しく仕込んだ噌壺の蓋に。
真帆がで付をいた。
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