"真っ暗な部屋の退学届" 第8話
美緒は驚いた顔をした。
「お母さんの記?」
「ほとんどおの記録」
最初は恥ずかしそうにしていたが、ページをめくるにつれて何度も笑った。
「私、こんなことしたの?」
「保育園で男の子殴ったらしい」
「理由いてある?」
「『プリンを取られたため』」
「最じゃん」
「姉さん、『正義がい』っていてる」
「親バカすぎる」
ページをめる。
やがて。
入学。
学の話。
織の文章。
〈美緒が京の学も見てみたいと言った。
寂しい。
ものすごく寂しい。
でも「県内にしなよ」と言いそうになってした。
親が寂しいことと、子供のは別。
危なかった。〉
美緒はそのページでを止めた。
「お母さん……そんなことってたんだ」
「織も普通の母親だったんだな」
「もっと『好きにしな』ってじだとってた」
「言わないだけだったんだろ」
次。
〈学費を計算。
きつい。
でも何とかする。
孝太郎にはんでも借りない。
あいつ絶対「返さなくていい」とか言うから腹つ。〉
「何で俺だけ悪者なんだ」
美緒が声をげて笑った。
そして。
し先。
〈直へ連絡した。
腹がった。
でも、美緒のためなら私のは関係ない。
父親としてくらいせと言った。
すと言った。
し見直した。
ほんのしだけ。〉
あの座の理由だった。
そして。
ノート最のページ。
途で途切れていた文章。
〈私にとってこの子は宝物だから、もし私に何かあったとしても――〉
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以はそこまでだった。
だが美緒がページを指でめくろうとして。
「あれ?」
裏表との隙に、いが挟まっていることに気づいた。
折り畳まれたメモだった。
織の字。
〈続きをくがないのでこっち。
もし私に何かあっても、美緒には自分のをきてほしい。
両親も孝太郎もいる。
直だって、役につくらいあるかもしれない。
に頼ることを恥ずかしいとわない子になってくれたら、それでいい。
私は美緒をで育てたつもりだったけど、本当は周りにいっぱい助けられてた。
本だけ、それに気づくのが遅かった。
美緒は私よりく気づいてね。〉
読み終えた美緒は。
しばらく何も言わなかった。
やがて。
「お母さんさ」
「うん」
「で育てたって、ずっとってたのかな」
「たぶんな」
「でも最は違うって分かったんだ」
「そうみたいだな」
美緒はメモを胸に当てた。
「私も、遅かったな」
「17なら分いよ」
美緒が笑った。
試験当の朝。
俺は珍しく6に起きた。
朝を作る。
と言っても、できるのは焼いた鮭とインスタント噌汁。
卵焼きは。
し焦げた。
美緒はそれを見て。
「すごい」
と言った。
「見た目はともかくは保証する」
「何を根拠に?」
「」
「番信用できない調料だね」
笑いながら。
全部べた。
玄関。
靴を履いた美緒へ。
俺は何もげさなことを言わなかった。
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「ってらっしゃい」
美緒も。
「ってきます」
それだけ。
ドアが閉まった。
俺はで息を吐いた。
本より。
俺の方が緊張していた。
試験が終わってからの数週。
美緒は妙に落ち着いていた。
「もうやることやったから」
そう言っていたが、発表の夜だけは何度もスマートフォンを確認していた。俺も気になっていたものの、あえて何も聞かず、普段通りテレビを見た。
第志望は教育学部。
織が元教師だったわけではない。
美緒自が決めただった。
「学の先になりたい」
願をした頃。
初めてそう聞いた。
理由は。
母親ではなかった。
学代。
学へけなくなりかけた友達を、担任が半かけて支えていた。その姿を見て、自分も誰かが「じゃない」とえる所を作れるになりたいとったらしい。
発表当。
俺は会社だった。
10。
会議。
11。
取引先。
12になっても連絡なし。
こちらから聞くのはやめようと決めていた。
1317分。
スマートフォンが震えた。
美緒。
メッセージは。
〈帰ったら話す〉
それだけ。
「何で今言わないんだよ……」
に見られた。
「どうした?」
「今、姪の格発表」
「話すれば?」
「帰ったら話すって」
「落ちた?」
「やめろよ」
午の仕事はほとんどに入らなかった。
定。
すぐ帰った。
ケーキへ寄るか迷った。
格していたら必。
格なら。
それでも甘いものはべるだろう。
結局買った。
半と同じ。
チョコレートケーキ4種類。
玄関をける。
「ただいま」
「おかえり」
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