"「子なし」離婚の大誤算" 第6話
私は数秒黙った、笑った。
「渡辺健さん」
「何だ」
「あなた、実業でしたよね」
「どういうだ」
「私を潰すために、体いくら使うつもりですか?」
話の向こうが静かになった。
「1000億ですか。1兆ですか」
私はパソコンの暗号化ファイルをいた。
卒業式で撮した写真が並んでいた。
陸を見て凍りつく健。
嫉妬に顔を歪める美咲。
私のにって守ろうとする陸。
「あなたが権力を使うなら、私にはレンズがあります」
「何を言っている」
「この写真と緒に、『息子を奪うため元妻の事業を潰そうとする財界』という記事がたらどうなるでしょうね」
健の呼吸が変わった。
「あなたに圧力をかけられた取引先が匿名で取材に答えたら?」
「さゆ」
「世はどちらを見るといますか?」
私は卒業式で健が凍りついた写真を1枚送った。
「ゲームを変えましょう」
そのまま話を切った。
翌、インターネットに掲載されたのは、渡辺健のスキャンダル記事ではなかった。
国内でも響力のきいノンフィクション系メディアに、「写真・さゆと10の仕事」というい特集がた。
私は健の名を度もさせなかった。
婚相の正体も伏せた。
記事が扱ったのは、ただ私と陸の10だった。
結婚をに度仕事をれた女性が、婚に妊娠をり、1で産したこと。
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古い根裏部で赤ん坊を育てながら写真館を始めたこと。
仕事がなく、活を切り詰めた期。
い材と幼い子供を連れ、真の撮現へ向かったこと。
陸がをした夜、抱いて病院へったこと。
その全てを最もくで見ていた彩佳が、記者の取材へ答えていた。
写真も慎に選んだ。
さな写真館。
赤ん坊の陸。
成する息子。
仕事を続ける私。
最は卒業式で、陸のネクタイを直している写真だった。
記事は爆発に読まれた。
コメント欄には、私を応援する言葉が溢れた。
写真館「」には予約が殺到した。
健からの圧力で契約を打ち切った企業には、逆に消費者から問いわせが集した。
私は誰かを直接攻撃しなかった。
ただ、自分が何をしてきたなのかを見せた。
それだけで分だった。
夕方、再び健から話が来た。
「話がしたい」
声から、以の余裕が消えていた。
「交渉がしたい」
私は所を指定した。
部からが入りにくい静かな茶。
健は1で来た。
級スーツではなく、濃いのセーターを着ていた。
けれど目は赤く、疲れが隠せていなかった。
「まず謝る」
席に着くと、健は言った。
「君の仕事へ圧力をかけたのは違っていた」
私は黙った。
「陸を見た瞬、理性を失った」
健は目を伏せた。
「10、をらなかった。あの子の資料も見た」
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し言葉を止めた。
「君が、本当によく育てた」
その声には、初めて本当の苦しさがあった。
しかし次にた言葉で、私はやはり何も変わっていないと分かった。
「面会させてほしい」
健は条件を並べ始めた。
陸名義の信託基。
教育費は全額負担。
留学も支援。
吹投資の株式10%を陸へ譲る。
「私の族にも会わせたい」
私は湯呑みを置いた。
「必ありません」
健が顔をげた。
「何?」
「陸は今、何もしていません」
「の問題じゃない。あの子には自分のルーツをる権利がある」
「公平を言うんですか?」
私は笑った。
「10、私を捨てた、公平を考えましたか?」
「それは……」
「あなたが今欲しいのは父親としてのじゃない」
健の顔が固まった。
「あなたは、自分に属するはずのが自分の支配にないことが耐えられないだけ」
「違う」
「陸が優秀だから余計に欲しくなった」
私は真っ直ぐ言った。
「もし陸が成績も悪く、何の才能もなく、あなたの自にならない子だったとしても、同じように取り戻したいと言いましたか?」
健は答えられなかった。
その沈黙が答えだった。
私はちがった。
「あなたが本当に父親になりたいなら、まず失った10をで買えないと理解してください」
ドアへ向かった。
「待ってくれ」
私はを止めた。
「じゃあ、どうすればいい」
健の声は掠れていた。
私は振り返らなかった。
「簡単です」
「何だ」
「全世界へ向けて、10に私を捨てたことを公に謝罪する」
健が息を止めた。
「吹投資の株式51%を陸へ無償譲渡する」
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