"「子なし」離婚の大誤算" 第8話
「ありがとうございます。でも使えません」
健の顔が止まった。
「なぜ?」
「競技では、会に用された材料だけを使うルールだからです」
「私は主催者だ。しくらい――」
「それなら勝っても僕たちの勝ちじゃありません」
陸ははっきり言った。
「自分たちで考えます」
そしてチームメイトへ向き直った。
「モーターを変えられないなら、ギア比を変えよう。力を増やす構造にしたらどうかな」
3は再び作業を始めた。
結局、優勝はできなかった。
それでもダニエル教授は表彰式で陸を特別に呼んだ。
「最も良い条件を持つ者が、最も優秀とは限りません」
教授は会へ言った。
「陸君はした条件ので、発を変えました。こういう考こそ、研究者に最も必なものです」
会からきな拍が起きた。
私は陸を見た。
そしてしれた所にいる健を見た。
彼も拍していた。
しかしその表には、初めて敗を受け入れたのがあった。
宿最終。
族も招かれた終式と晩餐会がかれた。
健は主催者として台にち、能分野への投資について話していた。
私は陸と会の隅でデザートをべていた。
その、入りが騒がしくなった。
赤いドレスを着た美咲が現れた。
健が眉を寄せた。
招待していなかったのだろう。
美咲は迷わず私たちのところへ来た。
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「随分楽しんでいるようね」
私は何も言わなかった。
「婚したのに、元夫のリゾートで1週も休暇なんて。本当に図々しい」
陸の表がくなった。
私は息子のを軽く叩いた。
「そうですね」
美咲が瞬戸惑った。
「渡辺代表は本当にが広い方ですもの」
私は続けた。
「何しろ、今の奥様と再婚するためにの妻を急いで捨てるくらいですから」
くの席からさな笑いが漏れた。
美咲の顔が真っになった。
「あなた……!」
「1つだけ忠告します」
私は声をくした。
「ご主をしっかり見ていた方がいいですよ。世のの女性が皆、渡辺へ入りたがっているとわない方がいい」
美咲がシャンパングラスを持つをげた。
その瞬、健が首を掴んだ。
「やめろ」
「健さん!」
「これ以恥を晒すな」
美咲が泣きそうな顔をした。
「私が侮辱されたのよ!」
健は私を見た。
「さゆ。くな」
私は陸のを引いていた。
「今、全部はっきりさせたい」
私はを止めた。
「いいでしょう」
鞄から携帯話を取りした。
画面には、送信のメールがあった。
宛先には吹投資の主株主、役員、国内のメディア関係者。
添付ファイル。
婚協議。
健と美咲の交際期を示す資料。
健が私の取引先へ圧力をかけた記録。
美咲が陸へ向けた発言の録音。
「このメールを送ったらどうなるか、あなたなら分かりますよね」
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健の顔が変わった。
「何を望む」
「簡単です」
私は彼を見た。
「今、私と陸のへ切介入しないこと」
健は黙った。
「連絡も、事業を使った接触も、学を通した接触もなし」
私は続けた。
「陸が成した、自分のであなたと会いたいとえば、そのは陸自が決めます」
健の目が揺れた。
「それまで、あなたは何もしない」
「私は父親だ」
「10、父親ではなかった」
私は答えた。
「今、突然権利だけを主張することはできません」
健は拳を握った。
美咲も黙っていた。
会全体が、私たちを見ていた。
い沈黙の。
健は目を閉じた。
そして言った。
「分かった」
たった3文字だった。
けれどその声には、全の力が抜けたような疲れがあった。
翌朝。
私の弁護士が吹投資の本社へ正式なを持ってった。
内容は現実の法律関係を理したで、今の接触や介入をわないことを確認するものだった。
健は署名した。
午910分。
弁護士から連絡を受けた私は、写真館「」の窓辺にいた。
「終わりました」
「ありがとうございます」
話を切った。
私は携帯話から健の番号を削除した。
パソコンをき、保していた「戦争」という名のフォルダも消した。
その瞬、議なほど静かになった。
勝ったという覚はなかった。
ただ、終わった。
それだけだった。
その夜、陸が夕の途で尋ねた。
「ママ。あの、もう来ない?」
「うん」
私は答えた。
「陸が自分から会いたいとわない限り、来ない」
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