"床下の学級日誌" 第5話
ほとんどの島民が答えた。
「そんなもんない」
「先は島が好きやった」
「子ども置いて黙ってるやなか」
しかし。
本側で理子の過を調べると。
いくつか事がてきた。
奨学と。
教師になるに借りた額の活資。
さらに。
赴任まで交際していた男性と。
別れ話でもめた期があった。
それらは。
決して失踪するほどきな問題ではなかった。
だが。
事件を説する材料にはなった。
《借》
《男性関係》
《島活への疲労》
《荷物の持ちし》
《桟のスカーフ》
そして。
「夕方、桟に理子らしい女性を見た」
という員の曖昧な証言。
警察の見方は。
しずつ固まっていった。
藤野理子は。
自分ので島をた能性がい。
争った痕跡はない。
血痕もない。
遺留品も。
失踪を示している。
ただ。
だけは。
ので。
それを否定していた。
理子は。
失踪したの夕方。
美を守るため。
児童相談所へくと言っていた。
島から逃げるではない。
目を持って。
に乗ろうとしていた。
は。
何度も警察に話そうとした。
だが。
話せば美の庭の問題が公になる。
「証拠もないのに、子どもの庭の話を勝にするな」
そんな島民の声がをよぎった。
迷った。
そして。
黙った。
それが。
彼の最の過ちになった。
警察が島をったあと。
澄は浜乃でに言った。
「私は信じんよ」
広告
「何を?」
「先が逃げたって話」
澄は包丁を止めた。
「先は、あの子ら置いて黙ってていくやなかった」
は返事をしなかった。
できなかった。
それより。
たちをもっとにさせたのは。
子どもたちの様子だった。
先の失踪。
11全員が。
急にを閉ざした。
「最に先見んかった?」
そう尋ねれば。
目を逸らす。
健太も。
美も。
ほかの子も。
誰として。
「見た」
とは言わなかった。
澄は。
度だけ。
健太の腕をつかんだ。
「健太。あんた何かっとるね?」
健太の顔は。
見る見る青ざめた。
「らん」
「本当に?」
「らん!」
腕を振りほどき。
って逃げた。
そのの夕方。
子どもたちは。
閉鎖された教へ集まった。
先がいなくなって。
しい担任が来るまで。
数だけ無になった教だった。
健太が。
理子の机の引きしから。
学級誌を取りした。
美が。
机のに残されていた黒い万を持っていた。
「これ、警察に渡したら」
が言った。
「先のこと分かるんやない?」
「そしたら、美んのことも分かる」
別の子が言う。
美は。
震えていた。
「お父さん、私たちみんな追いすって言った」
誰も答えられない。
警察へ持っていく勇気は。
なかった。
捨てることもできなかった。
先のものだから。
健太は。
教壇のを見た。
板の枚が。
以からし浮いていた。
「ここに隠そう」
「何で?」
「いつか」
広告
健太は。
子どもながらに必で考えた。
「いつか俺らがになったら」
油を探した。
理科にあった実験材料を包む。
そこへ。
学級誌と万をくるんだ。
板を持ちげ。
奥へ押し込んだ。
「いつか絶対」
健太は言った。
「本当のこと言えるが来たら、これそう」
ところが。
その「いつか」は。
誰もっていたより。
ずっとかった。
それから10が過ぎた。
島から若い世代がしずつれ、子どもの数も減った。分は数に休となり、やがて正式に閉じられた。窓ガラスにはひびが入り、潮にさらされた造舎は褪せ、漏りした井の部には黒い染みが広がっていた。
200510。
老朽化した舎は、ついに解体されることになった。
澄はくから作業を見ていた。
70歳を越え、腰もし曲がっている。
が壁を崩すたび。
理子が黒板のにっていた姿をいした。
「ここで先、毎笑いよったとにねえ」
隣にいた老へ言う。
老も黙って頷いた。
作業が旧教へ差しかかった。
板を剥いでいた作業員が。
を止めた。
教壇があった所の。
と板の狭い隙。
茶く変した油の包みが。
奥へ押し込まれていた。
「何や、これ」
引っ張りす。
油はになっていた。
から。
古い学級誌。
黒い万。
誌の表。
《1995度 相島分》
担任。
《藤野理子》
万のキャップにも。
さく。
《藤野理子》
と刻まれていた。
島のなら。
その名を忘れてはいない。
駐所へ連絡が入り。
さらに本の警察署へ報告された。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51