"床下の学級日誌" 第6話
10。
自ら島をたとされた若い教師。
その遺品が。
なぜ。
教壇のへ。
油に包まれて隠されていたのか。
報告は。
いくつもの机を回り。
捜査課の若い刑事のところへ届いた。
「賀」
先輩刑事が類を机へ置いた。
「お、相島やったな?」
賀健太、21歳。
島をれ。
卒業に警察官になった。
まだ刑事になってにも満たない。
「はい」
「昔、女の先が消えた事件あったやろ」
健太のが。
止まった。
「舎のから遺品がたらしい」
の。
《藤野理子》
その名を見た瞬。
10閉ざしていた記憶が。
気にいた。
がりの桟。
赤い夕焼け。
倒れた先。
浩の声。
――誰にも言うな。
自分たちがへ隠した。
学級誌。
万。
健太は。
指先が震えるのを。
机ので握りしめて隠した。
「ってる先か?」
先輩が聞く。
健太は。
しを置いてから。
「俺の担任でした」
「そうか」
先輩は。
それ以く考えなかった。
「応昔の記録見直すらしい。元分かるなら伝え」
健太は返事をした。
その夜。
もできなかった。
警察官になった理由を。
自分でも。
ずっと曖昧にしてきた。
の役にちたい。
父親とは違う仕事がしたい。
本で暮らしたい。
全部本当だった。
でも。
もっといところに。
もうつの理由があった。
11歳の自分が。
先を助けられなかったこと。
本当のことを言えなかったこと。
広告
その罪悪から。
逃げたくなかった。
いや。
本当は。
逃げ続けていた。
警察官になっただけで。
先のことは何も調べなかった。
島へも戻らなかった。
いさないようにきた。
けれど。
の包みは。
まるで。
10の自分が。
今の自分へ送ってきたのようだった。
翌朝。
健太は司へ言った。
「相島の件、俺に調べさせてください」
「お、関係者やろ」
「だから正式な担当は無理なのは分かってます。補助でもいいです」
司はしばらく考えた。
「私入れるなよ」
「はい」
数。
健太は。
10ぶりに連絡へ乗った。
デッキにつ。
潮の匂いが顔へぶつかった。
何も変わっていない。
その匂いだけで。
11歳に戻りそうだった。
が相島の桟へづく。
健太は。
ある点を見た。
理子が倒れた所。
10と同じように。
をつなぐ係柱があった。
ただ。
の角だけが。
波とに削られ。
し丸くなっていた。
島は。
何もらない顔で。
そこにあった。
健太が最初に訪ねたのは浜乃だった。
引き戸をけると、奥から澄がてきた。髪が増え、背も曲がっていたが、健太の顔を何秒か見つめたあと、すぐに目を見いた。
「健太ちゃん?」
「ご無汰してます」
「まあ……」
澄は濡れたを掛けで拭き、健太の腕をつかんだ。
「刑事さんになったって聞いとったけど、本当やったとね」
「まだっ端です」
「派になって」
広告
澄は笑った。
しかし。
健太が。
「藤野先のことで来ました」
と言うと。
その笑顔は消えた。
「から、誌がてきました」
「聞いたよ」
「あれを隠したのは」
言葉が止まる。
澄は。
じっと健太を見た。
「やっぱり、あんたたちやったと?」
健太は。
頷いた。
澄は責めなかった。
ただ。
いため息をついた。
「子どもら、何かっとるっていよった」
「すみません」
「今さら私に謝ってどうすると」
声は優しかった。
「先に謝りなさい」
胸に刺さった。
健太は。
同級たちへ連絡を取った。
何かは島に残り。
何かは福岡内や隣の町へ移っていた。
最初に会ったのは。
同級の達也。
今は島で父親の漁を継いでいる。
「先が消えたのこと」
健太が言った瞬。
達也は顔を背けた。
「もうよかやろ」
「よくない」
「10やぞ」
「だからだ」
達也は。
漁網を握ったまま黙った。
「俺、今でも見る」
やがて言った。
「先が倒れた音」
健太は息を止めた。
達也も覚えていた。
全部。
ただ。
話したくなかった。
「浩さん、もう島おらんぞ」
「ってる」
「何か、くなったって」
「それも聞いた」
「じゃあ今さらどうすんや」
健太は答えた。
「先が逃げたってことになってる」
達也のが止まった。
「借と男で島捨てたって。俺ら、それってて10黙った」
い沈黙。
「それだけは」
健太は言った。
「終わらせたい」
達也は。
何も答えなかった。
ほかの同級も同じだった。
は。
話で泣いた。
「掘り返さんで」
別の女性は。
会うことすら拒んだ。
「子どもだったんよ。怖かったんよ」
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51