"床下の学級日誌" 第12話
「私、護師になりました」
理子の指が。
いた。
「先が私を助けてくれたから」
美は。
しゃがんだ。
理子のを。
両で包む。
「を助ける仕事がしたかったんです」
涙を拭かず。
続けた。
「ずっと謝りたかった」
「先が倒れた、本当のこと言えなくて」
「怖くて」
「先を助けたかったのに、何をしたらいいか分からなくて」
理子は。
静かに美を見ていた。
「ごめんなさい」
美は。
理子のへ。
額をつけた。
「ごめんなさい、先」
その。
理子のが。
いた。
ゆっくり。
美の髪へ触れた。
優しく。
度。
撫でた。
美が。
顔をげる。
理子は。
笑っていた。
記憶が戻ったわけではない。
言葉も。
まだ分には話せない。
それでも。
美には。
昔と同じ笑顔に見えた。
放課。
教へ残った自分の隣へしゃがみ。
「できないんじゃないよ」
と言ってくれた。
あの先の顔。
美は。
声をげて泣いた。
ほかの教え子たちも。
誰も涙を隠さなかった。
健太は。
しれた所から。
その景を見ていた。
11歳の自分は。
ずっと。
先を見捨てたとっていた。
でも。
なくとも。
子どもたちは。
あの。
先を運んだ。
源蔵へ助けを求めた。
できることを。
していた。
違いも。
あった。
恐怖に負けた。
嘘もついた。
それでも。
幼い彼らが。
すべてを背負う必はなかった。
それを。
ようやく。
認められるような気がした。
の窓が。
しいていた。
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が入ってくる。
潮の匂いはしない。
施設は。
からしれている。
ところが。
理子が。
突然。
窓の向こうを見た。
くに。
が見える。
そのは空気が澄み。
平線の向こうに。
ごくさく。
相島のが見えていた。
理子は。
しばらく。
その島を眺めていた。
そして。
万を握った。
健太が。
を差しした。
理子は。
ゆっくり。
震えるで。
線を引いた。
文字をくには。
がかかった。
画。
また画。
全員が。
息を止めて見ていた。
最初の字。
「み」
次。
「ん」
それから。
「な」
文字。
《みんな》
そこで。
理子のが止まった。
健太は。
を見ながら。
泣いた。
名は。
まだない。
相島の記憶も。
完全には戻っていない。
それでも。
理子のから。
最初にてきた言葉は。
自分のことではなかった。
子どもたちだった。
「先」
健太は。
涙を拭った。
「ただいまじゃないですね」
みんなが。
健太を見る。
健太は。
理子へ笑った。
「先の方が、帰ってきたんやから」
そして。
11で。
声をそろえた。
「先、おかえりなさい」
理子は。
ゆっくり笑った。
窓の。
のの向こうで。
相島が。
さくっていた。
1995の夕暮れから。
11。
島の子どもたちが。
胸の底へ沈めてきた秘密は。
ようやく終わった。
けれど。
あの。
藤野理子が守ろうとしたものは。
消えていなかった。
8歳だった美は。
の痛みに寄り添う護師になった。
11歳だった健太は。
真実を見つける刑事になった。
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ほかの子どもたちも。
それぞれの所で。
誰かの親になり。
誰かの隣になり。
自分のを歩いている。
先は。
子どもたちを守ろうとして倒れた。
そして11。
になった子どもたちが。
今度は先の失われた名を。
元いた所へ連れ戻した。
それから理子の記憶が完全に戻ることはなかった。
それでも、教え子たちはに度、になると彼女を訪ねるようになった。貝殻を持ってくる者もいれば、島で採れた苔を持ってくる者もいた。健太は毎、しい学級誌のようなさなノートを冊持参し、そのにみんなのに起きたことをいて読み聞かせた。
ある。
美が結婚した。
翌。
子どもがまれた。
写真を見せると。
理子はい。
赤ん坊の顔を見ていた。
そして。
震えるで。
ノートに。
文字だけいた。
《命》
美は。
その文字を見て。
また泣いた。
相島の古い分は。
もうない。
理子が黒板へ文字をいた教も。
健太たちが秘密を隠した教壇も。
すべて取り壊された。
けれど。
からてきた学級誌は。
現も。
切に保管されている。
最のページには。
19956。
藤野理子が残した。
文がある。
《子どもは、自分で逃げる所を選べない。だからが逃げを作らなければならない》
その言葉を。
健太は。
刑事になってから何度もいした。
美は。
護師として。
傷ついた子どもを見るたび。
いした。
守るということは。
何かきなことをすることだけではない。
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