"5枚で消された妻" 第12話
佐藤が廊へると、司が待っていた。
「どうだった」
佐藤はく答えた。
「自しました」
司は度だけ頷いた。
その夜。
健は逮捕された。
翌朝。
町の物のシャッターは閉じたままだった。
「どうしたんだろう」
所のたちがを止める。
午には、警察両が入りしたという噂が広がった。
昼過ぎ。
元ニュースが、健の逮捕を伝えた。
12にした妻を、薬物を使って殺害した疑い。
町の々は言葉を失った。
「さんが?」
「あのが?」
「子煩悩だったじゃない」
「毎朝、のを掃いてただよ」
誰も信じられなかった。
奈は、子供を連れて実へ移った。
健と暮らしたへ戻ることはなかった。
逮捕のらせは、浩司から母のよし子へ伝えられた。
「母さん」
「何?」
「健が捕まった」
話の向こうで音が消えた。
「……何で?」
「美幸のことで」
よし子はしばらく返事をしなかった。
「警察が、殺したって……」
そこで浩司の声が詰まった。
12、母は何度も言った。
自分でぬはずがない。
夫を調べてほしい。
誰も聞いてくれなかった。
よし子は話の向こうでさく言った。
「そう……」
泣き声はなかった。
びもなかった。
ただ、その言だけだった。
12待った答えが、あまりにも遅く届いた。
裁判は2006のに始まった。
健は捜査段階で自したものの、公判では部について争う姿勢を見せた。
広告
弁護側は、当初から確な殺があったわけではないと主張した。
薬をませたことは認める。
だがぬとはっていなかった。
そのような主張だった。
しかし検察側は、健が取ったをつずつ並べた。
美幸が婚調を申してた直。
5000万円の命保険を契約。
同じ期に、違法な経からい薬を入。
事件当、美幸と接触。
先回りしてホテルの部を確保。
財産分与のを装い、美幸を呼びす。
薬を混ぜたみ物を渡す。
く眠った、さらに眠薬をませる。
自に見えるよう部をえる。
、保険を請求。
偶発な為では説できなかった。
法廷にはくの証がった。
倉庫業の島。
「事件当、健が女性と緒にいるのを見た」
元ホテル従業員の渡辺。
「女性よりに、の男性が部を取っていた」
田。
「19942に健へい薬を売った」
奈。
「結婚、名のかれた古い薬の袋を見つけ、健に激しく取りげられた」
そして科学捜査による再鑑定。
12には分に分析されなかった血液から、販薬には含まれない薬剤成分が確認された。
証言。
科学証拠。
保険契約。
健自の自。
別々だった線が、法廷で本につながっていった。
20072。
たいがう。
第審判決。
殺罪、罪。
懲役15。
健は控訴した。
しかし級審でもきな判断は変わらなかった。
広告
刑が確定した。
法廷の遺族席には浩司が座っていた。
母のよし子は、膝の状態が悪化し、裁判所まで来ることができなかった。
刑務官に伴われ、健が法廷からていく。
浩司はその背を見つめていた。
12の葬儀。
涙のなかった目。
何事もなかったようにっていった男。
健はこのも、度も遺族席を振り返らなかった。
扉が閉まる。
浩司はしばらくちがれなかった。
裁判所の廊へた、実へ話した。
「母さん」
「うん」
「終わったよ」
「……そう」
「15だ」
い沈黙。
話の向こうで、よし子の呼吸だけが聞こえた。
やがて、彼女は静かに言った。
「終わったんだね」
そのの。
が溶け始めた頃。
よし子は再び美幸の墓を訪れた。
浩司がで送った。
杖をつき、歩ずつ歩く。
以よりさらにがかかる。
墓へ着く。
よし子は腰をろした。
線をてた。
煙がのに流れていく。
いつもは無言でをわせるだけだった。
しかしこのは違った。
よし子は墓へ向かって何かを話した。
声はさく、しれた所にいた浩司には聞こえなかった。
浩司も聞こうとはしなかった。
いが過ぎた。
やがてよし子は杖を握り、ゆっくりちがった。
顔に笑みはない。
だが12ずっと肩へ乗っていたいものが、しだけ軽くなったように見えた。
方。
奈は裁判に健との婚を成させた。
子供を連れ、実にい町へ移った。
物は閉鎖され、やがて建物も取り壊された。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51