"形見を捨てた嫁の代償" 第2話
拓哉もこのへ戻れば、昔のことをはいすのだろう。
妻がいなくなってから、拓哉は実を避けているように見えた。
仕事が忙しい。
向の予定がある。
彩の実へかなければならない。
理由はいくらでもあった。
私も無理に来いとは言わなかった。
だが、本音を言えば寂しかった。
妻がきていた頃は、に何度か族で帰ってきた。
妻はそのたびに何もから献を考え、向がべられそうなものを用していた。
私は「そんなに作ってもべきれないぞ」と笑っていた。
すると妻は決まって言った。
「余ったら持って帰ってもらえばいいでしょう」
その声も、今はもう聞こえない。
私は居へ3を案内し、用していた料理を卓へ並べた。
煮物。
卵焼き。
焼き魚。
簡単な汁物。
派な料理はない。
妻が族に作っていた、ごく普通の庭料理ばかりだった。
彩は子へ座るなり、スマートフォンを取りした。
私はてっきり向の写真でも撮るのかとった。
ところが彩は料理へスマートフォンを向け、何枚か撮した、画面を確認しながらさく笑った。
「インスタ映えしないですね」
私はを聞き返しそうになった。
彩は料理を見比べながら続けた。
「全部茶っぽいし。すぎて、写真にしても全然映えない」
拓哉がわずかに顔をげた。
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しかし何も言わなかった。
私は箸を置こうとしたを止めた。
るほどのことではない。
そう自分に言い聞かせた。
彩は若い。
私とは価値観が違う。
料理を写真に撮って楽しむことも、見た目を切にすることも、私には分からなくても今のには普通なのかもしれない。
「昔ながらの料理だからな」
私は笑って返した。
「おばあちゃんがよく作ってた料理なんだよ」
そう言いながら向を見ると、孫は卵焼きをに入れていた。
「甘い」
「嫌か?」
私が尋ねると、向は首を横に振った。
「おいしい」
その言で、し救われた気がした。
拓哉も黙って卵焼きをべていた。
私は息子の表を見た。
きっと妻のをいしている。
そうった。
「母さんのと似てるだろ」
私が声をかけると、拓哉は箸を止めた。
「ああ」
い返事だった。
「ちょっと違うけどな」
「そりゃそうだ。何度作っても同じにはならん」
私が苦笑すると、拓哉もほんのしだけ笑った。
その瞬だけは、昔の息子が戻ったように見えた。
だが彩は、そんな私たちのやり取りにはあまり興がないようだった。
スマートフォンを見たり、料理をしずつべたりしながら、部のを眺めている。
「お義父さん、この、物がいですよね」
突然そう言われ、私は顔をげた。
「そうか?」
「使ってないもの、かなりありますよね。
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古い器とか、置物とか。全部理したら、すごくすっきりするといますよ」
妻が選んだ器だった。
棚に置かれたさな置物も、旅へくたびに妻が1つずつ買ったものだった。
私にとっては、どれもただの古い物ではない。
「まあ、そのうちな」
私はそれだけ答えた。
彩は肩をすくめた。
「私だったら、使わないものはすぐ捨てちゃいます。残してても仕方ないですから」
悪気はないのかもしれない。
自分の考えを話しているだけなのだろう。
そうおうとした。
だが、胸のどこかにさな棘が刺さった。
その棘が、このあれほどくなるとは、そのはまだっていなかった。
事が終わりにづいた頃、向が壁に飾ってある古い族写真を見つけた。
まだ拓哉が学だった頃に撮ったものだ。
妻が拓哉の肩へを置き、その横で私はし緊張した顔をしている。
「これ、お父さん?」
向が笑った。
「ああ。おのお父さん、さいだろ」
「変な髪型」
「おい」
拓哉が苦笑した。
久しぶりにのへ笑い声が響いた。
私は写真のの妻を見た。
今の向と同じくらいの拓哉を見つめる妻の顔は、とても穏やかだった。
「隣にいるのがおばあちゃんだよ」
私が言うと、向は写真へ顔をづけた。
「おばあちゃん?」
「そうだ」
「僕、覚えてない」
「さかったからな」
向はしばらく写真を見ていた。
私はその横顔を眺めながら、今なら形見を見せてもいいとった。
玄関へ向かい、飾っていた柄のエプロンをに取った。
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