"ETCに残らない白バイ" 第4話
族から鍵を預かり、換気をし、郵便物を確認する。
洗面台にはが使っていた化粧品が並んでいた。
クローゼットには普段着が残り、棚にはバイ隊員として参加した交通全イベントの写真が飾られていた。
部全体が、だけを切り取ってを止めたようだった。
「今も探したよ」
正志は誰もいない部で、さく呟くことがあった。
「まだ見つからない。でも絶対に諦めないから」
両親も娘を待ち続けた。
毎12になると、母親の静子は湾岸幕張PAを訪れるようになった。
駐の角から建物を眺め、を供え、をわせる。
「お母さんはここにいるからね」
誰にも聞こえないほどの声で語りかけた。
「いつでも帰っておいで」
父親の健は、より現実な方法で娘を捜し続けた。
全国で起きた未解決の失踪事件。
女性が連れられた事件。
速周辺で発見された元者。
聞記事を切り抜き、ファイルへ理した。
似た特徴があれば警察へ確認し、自ら問いわせた。
「もう警察が捜査している」
周囲から言われても、やめなかった。
元警察官である健は、捜査にがかかることも、報がなければ警察にも限界があることも理解していた。
だからこそ、自分にできることをやめられなかった。
捜査本部も、の事件を放置していたわけではない。
広告
監カメラ映像。
目撃証言。
速の通記録。
当湾岸幕張PAへち寄った能性のある両。
膨な報が集められた。
しかし2003という代には、と比べてきな制約があった。
現なら商業施設や周辺の至るところに設置されている防犯カメラも、当は主施設に限られていた。
湾岸幕張PAには映像が残っていた。
しかしバイがその先をる全区を、連続して追跡できるほどのカメラ網はなかった。
携帯話から得られる位置報も現ほど細かくない。
の携帯話自体も発見されていなかった。
ETCも普及途だった。
ETC利用については通過刻のデータが残る方、現払いの両については、個々の運転者をから追跡する報が非常に限られていた。
バイそのものはETCを使用していない。
だから通常の料所を通過すれば、係員の記憶や何らかの記録が期待された。
それでも何も見つからなかった。
「どうして消えるんだ」
夜まで続いた会議で、ベテラン刑事が子へく座り込みながら呟いた。
「バイだぞ。それも目つ両だ」
捜査員の線が、壁に貼られた1枚の写真へ集まった。
監カメラから切りした画像。
のバイを運転する物。
顔はヘルメットとサングラスで隠れている。
体格から男と見られたが、それ以は分からない。
広告
警察官の制のようにも見える装をしていたため、般の通が見れば、本物のバイ隊員だとった能性があった。
全国の警察へ両報が回された。
同型のバイ。
審な警察両。
部品として売却された能性。
様々な方向から照会した。
何もなかった。
「計画だったんじゃないか」
ある捜査員がにした。
内が静かになった。
もし偶発な犯なら、なぜ犯はバイを持ちったのか。
なぜわざわざのような警察官を狙ったのか。
バイを運転できるだけの技術があり、速から通常の料所を通らずに両を消す方法をっている。
それだけを見ると、度に準備された犯のようにもえた。
「警察官を狙った誘拐だとしたら、相当な準備が必だ」
「だが求がない」
代の求は度もなかった。
警察への脅迫もない。
政治な声もない。
犯から何の連絡もない。
目が見えなかった。
ただ1の女性警察官が消え、バイも消えた。
それだけだった。
だからこそ、事件は捜査員たちを苦しめた。
事件から1が経過した。
がいなくなった部には、まだくの物がそのまま残されていた。
正志は結婚式を最終に解約したが、招待状の見本だけは捨てなかった。
机の引きしにしまい、折取りして眺めた。
2が結婚する予定だったは、何事もなく過ぎた。
その朝、正志はいつも通り仕事へった。
帰宅すると、と撮った写真のに座った。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 142 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51