"ETCに残らない白バイ" 第5話
「今だったな」
い沈黙の、そう呟いた。
がいなくなってから、正志の仕事に対する姿勢も変わった。
同僚から見れば以と同じように勤務していたが、彼のではつの目がきくなっていた。
未解決事件に関わる部署への異を希望した。
何度か申請を続けた末、その希望が認められた。
の事件だけを担当できるわけではない。
それでも、過の事件資料に触れる会が増える。
報の照会方法も学べる。
「いつか必ず、の事件を自分で追える力をつけたい」
それが正志の支えになった。
方、島では母親の静子が毎12の湾岸幕張PA通いを続けていた。
季節は何度も巡った。
桜の季節。
暑い。
。
。
のもあった。
いのもあった。
それでも静子はを持って同じ所へった。
「この辺でが最に歩いていたんでしょう」
監カメラに映っていた建物へのを、何度も見つめた。
娘がそこを歩いた姿を像した。
トイレへ向かい、それから戻ってこなかった。
ほんの数分のに何があったのか。
その疑問は毎、母親の胸に残り続けた。
健は自宅のを資料置きのようにしていた。
図。
事件記事。
警察から説された内容をき留めたノート。
未解決事件の聞切り抜き。
々ファイルは増えた。
「もう10になるぞ」
からそう言われても、健は返事をしなかった。
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10経ったからといって、娘がいなくなった事実がれるわけではない。
ただ、周囲のにとって事件が「昔の来事」へ変わっていくだけだった。
テレビでの名がることは、ほとんどなくなった。
しい事件が起きる。
しいニュースが流れる。
々の記憶は、しずつ塗り替えられていった。
だが2013。
失踪から10が経った、状況が変わった。
全国の未解決事件の部を、しい技術を用いて再検討する取り組みがめられることになった。
デジタル画像解析。
過資料のデータベース化。
複数の報を横断に照する技術。
10には分に利用できなかった方法を使い、古い事件をもう度見直す。
島失踪事件も、その対象に入った。
古い記録が倉庫から取りされた。
当提された報告。
監カメラの映像。
目撃者の供述。
速関係の記録。
現写真。
の私活について調べた資料。
それらが改めて理された。
となって映像資料を確認したのは、デジタルフォレンジックと画像解析を専とする本誠だった。
本は最初の会議で、当の捜査員を批判しなかった。
「10の捜査が違っていたということではありません」
資料をにして、静かな声で言った。
「当見えなかったものが、今なら見える能性がある。それを探します」
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最初に選ばれたのは、やはり湾岸幕張PAの映像だった。
が建物へ入る面。
バイが駐されたままの18分。
そして男が乗りる面。
本は映像を1フレームずつ切りした。
拡する。
ノイズを減らす。
暗を補正する。
輪郭を比較する。
最初の数は目った成果がなかった。
犯とわれる物の顔は、どう処理してもヘルメットのに隠れていた。
ナンバープレートが映り込んでいるわけでもない。
それでも本は止めなかった。
物の顔以を見ることにした。
靴。
袖。
袋。
歩幅。
バイクへ乗るの姿勢。
そしてある夜、男がハンドルへをかける瞬のフレームで、本の指が止まった。
「腕計……」
首に、黒い腕計が見えていた。
10の映像では、単なる黒い点にしか見えなかったものだった。
本は首の部分をさらに拡した。
画像を鮮にすると、計には特徴な形状があることが分かった。
級ブランドの計ではない。
装飾もない。
むしろ仕事で使うために作られた、実用性をした製品に見えた。
本は当販売されていた計の資料を調べ始めた。
メーカー。
型番。
企業向けモデル。
数かけて照した結果、似た形状の計が見つかった。
部の運送会社や配送業者で、勤務に使用されていた業務用モデルだった。
配送刻を正確に確認できるよう刻補正能を備え、防性や耐衝撃性をしている。
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