"欠陥品と呼ばれた歌姫" 第3話
と笑っていた。私は嫌な予を覚えたが、まさか妹が自分の娘まで捨てるとは、そのでさえっていなかった。
恵がいなくなったのは、たいがっていた夜だった。会社から帰り、マンションの入へづくと、軒にの男性がっているのが見えた。作業着のに褪せたジャンパーを羽織った也で、腕には眠っている良を抱き、元にはきなスポーツバッグがつ置かれていた。
「どうしたの?」
私が駆け寄ると、也はすぐには答えなかった。目のには濃い隈があり、唇も乾いていて、何もまともに眠っていないように見えた。やがてポケットから折り畳まれた便箋を取りし、「恵が、いなくなりました」と絞りすように言った。
には、見慣れた妹の字が並んでいた。
《いつまでたってもちゃんとした仕事しないし、活苦しいし、もう無理。良も分どっかおかしい。全然しゃべらないしマジで疲れる。私は自由にやるから婚届しといて。良はいらないから好きにして》
最には、さらにこんな文まであった。
《子ども産めないお姉ちゃんにでもあげれば? ちょうどいいじゃん》
読んでいるうちに、が震えた。腹がったという言葉ではりず、妹が自分の娘を「飽きたおもちゃ」のように扱っていることが信じられなかった。
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私は便箋を握り潰しそうになったが、眠っている良がわずかにじろぎしたので、慌てて指を緩めた。
「婚届もありました」
也は鞄から封筒をした。恵の欄には署名と印鑑があり、荷物ももかなり減っていたらしい。つまり衝にていったのではなく、何もから準備していたのだ。
「警察には?」
「相談しました。でも成だし、本のでていった能性がいって」
「連絡は?」
「携帯は解約されてました」
也は度俯き、それから眠る良を見た。「申し訳ないんですけど、自分、今夜から夜勤なんです」と言う声には、父親としてのけなさではなく、どうにもできない現実への焦りがにじんでいた。昼働けば保育園のに迎えへけないため、恵がいなくなってから夜勤の警備会社へ移ったという。
最初の数は、良が眠ったあとに仕事へていたらしい。けれど4歳の子どもを夜にで置いていくことが怖くなり、とうとう私を頼ることにしたのだという。私は迷う余もなく、「もちろん預かる」と答えた。
その夜、良とで呂へ入った。を洗ってやりながら何気ない話をしていると、良は突然、「ママ、どこ?」と聞いた。私は答えを探した末、「今、いところにいるの」とだけ言った。
「帰ってくる?」
さな声だった。私は「分からない」
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と本当のことを言う勇気がなく、「お仕事が終わったらね」と曖昧に答えた。良はそれ以何も聞かず、その晩は私の布団の端を握ったまま眠った。
翌朝、也が仕事を終えて迎えに来た。玄関をけた瞬、良は「パパ」とだけ言って抱きつき、也はしゃがんで娘をく抱きしめた。とも泣かなかったが、その様子を見ていると、私の方が泣きそうになった。
「朝ご飯、べていく?」
私が声をかけると、也は慮した。「でも桃さん、仕事でしょう」と言うので、「パン焼くだけだから」と押し切った。也にとっては夕のようなだったが、でテーブルを囲み、目玉焼きと焦げたトーストをべた。
それが、私たちの最初の朝だった。
実の父にも連絡した。恵がいなくなったこと、良が残されたことを説したが、父の反応は驚くほど淡々としていた。「恵はもうだ。自分でていったなら親が追いかけても仕方ない」と言い、孫についても「父親がいるんだろ」と答えた。
「良はまだ4歳だよ」
私がい調で言うと、話の向こうで父は黙った。それでも最には「俺たちにも活がある」と言い、積極に関わろうとはしなかった。母がきていたら絶対に違っただろうとうと、その夜は久しぶりに母の写真ので泣いた。
翌から、私たちの奇妙な共同活が始まった。
朝は私が良を保育園へ送り、夕方は私か也のどちらかが迎えにく。夜勤のは良が私のへ泊まり、也は始発で迎えに来て、そのままで朝をべるようになった。
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