"欠陥品と呼ばれた歌姫" 第4話
最初は、それが数週だけ続くとっていた。
けれど1ヶ経っても、半経っても、恵からの連絡は度もなかった。
也は、恵のことを度も良ので悪く言わなかった。「ママは勝だ」「俺たちを捨てた」と責めてもおかしくないのに、良がたまに母親のことを聞けば、「今はくにいるんだ」とだけ答えた。私にはその姿が派に見える方で、すべてを自分でみ込もうとしているようにもじられた。
活は楽ではなかった。夜勤の警備だけでは保育料や賃を払うとほとんど残らず、也は昼にの配送仕事まで入れるようになった。それでも良の運会には必ず休みを取り、授業参観の予定が分かれば何週もから勤務を調していた。
ある、良がをした。也は夜勤へる直で、私は翌朝どうしても休めない仕事があったため、瞬どうしようかとで顔を見わせた。すると也は会社へ話をかけ、「娘がをしたので今は休ませてください」とをげた。
話を切ったあと、也は「これで次の契約切られるかもしれないですけど」と笑った。私は腹がって、「そういうに笑うのやめなよ」と言い、蔵庫へ解剤を取りにった。活が苦しいほど、は余裕を失うものだとっていたのに、也は自分の苦しさを良のへ持ち込まないよう必だった。
広告
その頃から、也は夜勤けにノートパソコンへ向かうようになった。古で買ったオーディオインターフェイスとさなMIDIキーボードを机に並べ、無料の音源ソフトや古い編集ソフトを使って曲を作っていた。バンド代はベースしか弾けなかった彼が、ネットの掲示板や画を見ながら独学で作曲や編曲を覚え始めたのだ。
「また音楽?」
最初に聞いた、私はしになった。族を置いてへ戻るのではないかという怖さがあったからだが、也はすぐに首を振った。
「昔みたいにはしません。良が寝てるだけです」
「何でそこまで?」
「諦めたくないから。でも今度は、のために族を犠牲にするんじゃなくて、族を守りながら続けられる方法にしたいんです」
その言葉を聞いた、私は初めて也というを、妹の元夫ではなくの男性として見た気がした。
数ヶ、也が初めてネットへ曲を公した。成音声を使った静かなラブソングで、イラストも画編集も自分で覚えたという。で朝ご飯をべながら再すると、良は途からべるを止め、最までじっとスピーカーを見ていた。
「どう?」
也が娘へ聞くと、良は「きれい」と言った。也はそれだけで満したように笑い、「じゃあ100回再されたら祝いだな」
広告
と冗談を言った。ところが、その曲は数週にSNSで紹介され、気づけば再数が10万回を超えた。
最初に驚いたのは也本だった。「桃さん、これ数字おかしくないですか」と携帯を見せてきた、私は笑って「壊れてないよ」と答えた。コメント欄には次の曲を求める声が並び、そこからさなゲーム会社や個の映像制作者から楽曲制作の依頼が来るようになった。
もちろん、すぐに音楽だけでべられるほど甘くはなかった。それでも夜勤を週5から3に減らせる程度の収入にはなり、その空いたをまた制作に使うことで、しずつ仕事が増えていった。数には若のデモ曲や同音楽作品へも関わるようになり、也の表から以のような疲労が消えていった。
その頃、私も変わっていた。
仕事を終えると自分のマンションではなく、也と良のアパートへ帰ることが増えた。夕を作り、洗濯物を畳み、良の宿題を見るうちに、いつのにか私用の歯ブラシが洗面所へ置かれ、蔵庫には私の好きな無糖ヨーグルトまで常備されるようになった。
それでも、私はその活に名をつけなかった。
也は妹の元夫であり、良は妹の娘である。私が族の所へ入り込むことを、世よりも自分自が許せていなかった。
そんなある夜、邪をひいた也を寝かせ、良が眠ったあとに台所で皿を洗っていると、背から声がした。
広告
おすすめ作品
-
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 612 -
完結第16話
四十九日の追放、母の隠し遺言
「十年世話しただけの妹に、実家の取り分はないわ」 母の四十九日、喪服の兄夫婦は親族の前で澄子を指差し、台所の冷えた板の間へ追いやった。信金を辞め10年間、720万円の私財を投じて母を看取った澄子に、兄は「今週中に出て行け」と冷酷に通告する。 母のキャッシュカードは7年前から兄が独占し、消えた年金は1240万円。 家財すべてが二束三文で業者に売り払われようとする中、母が50年愛用した古い足踏みミシンの奥底から、厳重に隠された「ある物」が滑り落ちた。 「その言葉、そっくりそのままお返しします」 あの日からちょうど49日後、審判の幕が上がる――。兄弟姉妹|修羅場2.3万字5 434 -
完結第27話
妻を追い出した翌朝、7枚のブラックカードが止まった
結婚3年目の夜、美桜が帰宅すると、夫・達也は若い愛人と義両親を囲み、離婚届を突きつけてきた。「無能で地味な女」「1円も稼げない寄生虫」と嘲られ、慰謝料もなく豪邸から追い出される。 だが4人は知らなかった。美桜の正体は、世界経済を動かす巨大グループの総帥。倒産寸前だった達也の会社を救い、資金も仕事も与え、彼を“天才社長”に見せていたのは全て美桜だった。 さらに豪邸も別荘も、7枚のブラックカードも、達也自身の資産ではなく美桜の法人名義。 離婚届が受理された瞬間、美桜は静かに全カードを停止し、豪邸の退去手続きと会社への特別監査を開始する。 勝ち誇っていた一家がまだ知らない、本当の“無一文”への転落が始まろうとしていた――。修羅場|熟年離婚4.0万字5 285 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 2848 -
完結第11話
貧乏老人を嘲笑った行員の末路
「あんな貧乏臭い爺い、適当にあしらっとけばいいのに」ボストンバッグを抱えた老人に、新入行員は嘲笑の声を浴びせ、エリート課長代理は別の窓口へ強制的に追い返した。母親の入院費のため百万を引き出しに来ただけの、よれよれのジャケットを着た年寄り――。だが、彼こそが全日本経済の裏を牛耳るクオンホールディングスの会長・久音次郎その人だった。侮辱に耐えかねた新人の篠崎水希が一人で抗議する中、老人が静かに古びたバッグの金具を閉じた瞬間、端末の画面で一千万円、一億円と出金通知の数字が狂ったように跳ね上がり始めた。絶望の淵に立たされた傲慢な行員たちの運命を決定づける、驚愕の審判の行方は――。職場逆転|修羅場1.6万字5 1861 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251 -
完結第10話
洋食屋の絆と、高級寿司屋の逆転
岡田悠斗は、高校生の時に両親を交通事故で亡くし、高卒の自動車整備士として働きながら、三歳下の妹・真央をたった一人で大学の法学部まで育て上げた。真央は猛勉強の末に難関の司法試験を突破し、弁護士として初任給をもらう。悠斗への感謝を込めて予約した高級寿司屋の席で、悠斗の職場の傲慢な上司・西村が偶然居合わせ、「工場で油まみれになって働く底辺の作業員」と悠斗と真央を激しく侮辱する。絶望と怒りが交錯する中、隣の席に座っていた一人の客が立ち上がり、西村を冷徹に一喝する。その男の正体は、かつて両親の営む洋食屋「ひまわり」で無銭の少年時代に助けられた大手IT企業の社長・藤井宗介だった。過去の恩返しと、血を分けた兄妹の絆が奇跡を引き起こす感動のヒューマンドラマ。兄弟姉妹|修羅場1.5万字5 641 -
完結第25話
底辺受付嬢を見下す役員たちの誤算
父の会社は、最も信頼していた人間の裏切りによって無惨に食い物にされた。巨額の負債を背負い、絶望の中で病に倒れた父。私はその冷酷な真相を暴くため、ハーバード大の博士号を隠し、ただの「受付嬢」として敵の中枢である星空グループに潜入した。 誰からも見下され、理不尽な侮辱に耐え忍ぶこと3年。息を潜めて集めた証拠が示したのは、あまりにも残酷な真実だった。父を破産に追い込み、私から全てを奪った黒幕の正体は、父が家族のように慕っていた古参役員だったのだ。 「黒幕は役員会の中にいる」――私を守るため、父が命懸けで残してくれた最期のメッセージを知った時、胸の奥の悲しみは絶対的な冷酷さを持つ復讐の炎へと変わった。私の素性を知る新社長のハルトや、父の旧友たちと共に、私は決して逃れられない完璧な包囲網を密かに築き上げていく。 そして迎えた運命の役員会。全てを掌握したと信じ、私の前で勝ち誇る黒幕。だが彼はまだ知らない。無力な受付嬢だと思っていた私が、彼を社会的死の淵へと突き落とす致命的な罠を仕掛けていたことを。仮面を脱ぎ捨てた時、強欲な悪魔を地獄の底へと引きずり下ろす、容赦なき反撃が幕を開ける――。因果応報|真相|修羅場3.8万字5 1809