"18万円の甘い嘘" 第3話
い歯を見せる爽やかな笑顔。
「こんばんは。涼介です。よろしくお願いします」
男はそう言って、節子の隣へ座った。
節子は背筋を伸ばした。
こんな若い男性とで話すのは何ぶりだろう。
いや、仕事以では記憶にないほど久しぶりだった。
「お仕事は何をされているんですか?」
涼介が尋ねた。
節子は最初、曖昧に答えた。
「でし……」
「?」
「お弁当を作るところよ」
「毎ですか?」
「週5」
「変ですね」
その言い方に、節子はわず涼介を見た。
いつもなら「まだ働いているんですか」と驚かれる。
あるいは、何も言われない。
涼介は違った。
「すごいじゃないですか。62歳で毎働いてるなんて、なかなかできないですよ」
「そんな……活のためだから」
「それでもです」
涼介は真剣な顔で言った。
「頑張ってるんですね」
その言が胸へ入った。
頑張っている。
そんなふうに言われたのは、いつ以来だろう。
節子自でさえ、自分の毎をただ「仕方なく続けているだけ」とっていた。
涼介は節子の元へ線を落とした。
「、見せてもらっていいですか?」
「こんな、見ても仕方ないわよ」
節子は慌てて隠そうとした。
仕事との乾燥で、指先は荒れ、何か所もひび割れている。
けれど涼介は、そのをそっと取った。
「働き者のですね」
節子の体が固まった。
「こんなに頑張ってきた証拠ですよ。
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僕は素敵だといます」
節子は言葉を失った。
荒れた。
太い指。
節くれった関節。
自分がずっと隠したいとっていたものを、この若い男は「素敵」と言った。
「そんなこと……夫にも言われたことないわ」
わずからた。
「ご主は?」
節子はし黙った。
「3にくなったの」
涼介の顔から笑みがれた。
「すみません」
「いいの。もう3だから」
そこから、節子はしずつ話し始めた。
夫の病気。
医療費。
葬儀。
残った借。
子供がいないこと。
毎へき、帰宅してで焼酎をむだけの活。
いつもならに話すはずのないことを、議なくらい次々ににしていた。
涼介は遮らなかった。
何度も頷き、々「変でしたね」と言った。
「節子さんはいですね」
その言葉に節子の目が潤んだ。
「くなんてないわよ」
「いですよ。でちゃんと活して、今も働いてる。僕ならできないといます」
「でも……寂しいだけよ」
節子は笑おうとしたが、声が震えた。
「帰っても誰もいないしね」
涼介はそっと節子のを握った。
「ここではじゃないですよ」
その瞬、節子は堪えきれず涙をこぼした。
若い男ので泣くなんてみっともない。
そうったのに、涙は止まらなかった。
涼介は急かさず待ってくれた。
「今は特別なにしましょう」
しばらくして、涼介がメニューをいた。
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「せっかく来てくれたんですから、しだけいいお酒をみませんか?」
節子は迷った。
「いんでしょう?」
「節子さんには幸せな気分で帰ってほしいんです」
涼介が笑った。
その笑顔を見た瞬、節子ので「断る」という言葉が消えた。
「じゃあ……今だけね」
「ありがとうございます」
しばらくして、シャンパンが運ばれてきた。
節子は値段を確認しなかった。
涼介が嬉しそうだったから。
「節子さんの幸せに」
グラスをわせる。
さな音がした。
節子は笑った。
から笑ったのは、いつ以来だっただろう。
はあっというに過ぎた。
計を見ると23を回っている。
「もうこんな」
節子がとうとすると、涼介は残そうな表をした。
「もう帰っちゃうんですか?」
その顔を見ると、帰るのが惜しくなった。
結局、節子がをたのは午1くだった。
入まで送ってくれた涼介は、最にもう度を握った。
「また来てくださいね」
「私みたいなおばさんでも?」
「何言ってるんですか」
涼介は笑う。
「僕、節子さんと話すの好きですよ」
タクシーの部座席で、節子は何度もその言葉をい返した。
に戻ると、そこにはいつもと同じたい部があった。
けれど、その夜だけは違った。
胸のに涼介の笑顔が残っていた。
「僕、節子さんと話すの好きですよ」
節子はで微笑んだ。
翌朝。
郵便受けに枚の封筒が入っていた。
からの請求だった。
節子は封を切り、額を見た。
18万円。
瞬、が理解できなかった。
何度見ても数字は変わらない。
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