"18万円の甘い嘘" 第10話
警察官は配そうに見ていたが、節子はそのをれた。
終に乗った。
窓に映る自分の顔は、別のようだった。
髪は乱れ、化粧は崩れ、頬は落ちている。
涼介はいない。
仕事もなくなる。
もない。
節子は吊り革を握ったまま、ので呟いた。
「もう、何もない……」
翌の昼過ぎ。
インターホンが鳴った。
節子はに横になったままかなかった。
度。
度。
やがてドアを叩く音。
「桂さん。田です」
節子はゆっくりちがった。
ドアをけると、田が配そうにっていた。
「に来なかったから……」
「もうかないわ」
「まだ今いっぱいは働けるでしょう?」
「どうせ首になるもの」
田は部のを見た。
には請求。
空の酒瓶。
脱ぎっぱなしの。
以の節子なら、にこんな部を見られることなど絶対に耐えられなかった。
「桂さん、このままじゃ駄目です」
田が言った。
「役所へきましょう」
「無駄よ」
「無駄じゃありません」
「放っておいて」
「でも」
「にして!」
節子は声を荒らげた。
田はしそうな顔をした。
「分かりました」
帰り際、振り返る。
「でも何かあったら、絶対に連絡してください」
その夜。
節子は久しぶりに正雄との結婚写真をした。
若いが笑っている。
「正雄……」
写真を胸へ抱いた。
「ごめんなさい」
節子は泣いた。
正雄が残してくれたを失った。
自分たちがかけて貯めたも消えた。
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「私、何やってるんだろうね」
泣き疲れ、そのままで眠った。
に正雄がてきた。
昔のままの顔で笑っていた。
『節子、丈夫か』
節子はのでを伸ばした。
正雄はざかる。
「待って」
目が覚めた。
朝だった。
それから数。
節子は何もせず部にいた。
そんな夕方、らない番号から話が来た。
「桂節子様ですか?」
女性の声だった。
「区役所の福祉担当です」
節子は構えた。
「田様からご相談がありまして」
節子は目を閉じた。
あのは、本当に連絡したのだ。
「経済にお困りだと聞いています。度、相談にいらっしゃいませんか?」
「結構です」
反射に断った。
「丈夫ですから」
女性は急かさなかった。
「活について使える制度があります。借の相談先も緒に探せます」
節子は黙った。
「来週の曜、10はいかがでしょう?」
しばらくして、節子はさく答えた。
「……分かりました」
週末。
節子はに散らばった請求を集めた。
全部で12通。
曜には久しぶりに呂へ入った。
鏡を見る。
自分でも驚くほど痩せていた。
62歳というより、もっとに見えた。
曜。
節子は古いのセーターとコートを着て、区役所へ向かった。
3階の福祉窓。
「桂節子です」
待っていると、30代くらいの女性職員がやってきた。
「桂さんですね。鈴です」
個へ案内された。
「まず、お話を聞かせてください」
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節子は俯いた。
「何から話せば……」
「ゆっくりで丈夫です」
節子はしずつ話し始めた。
正雄がくなったこと。
暮らしになったこと。
で働いていたこと。
寂しくて夜のへ入ったこと。
若い男の言葉を信じたこと。
を使ったこと。
借。
騙されたサービス。
仕事を失ったこと。
途から涙が止まらなくなった。
「すみません」
節子は何度も謝った。
「本当に馬鹿な話で……」
鈴は首を横に振った。
「謝らなくていいです」
「でも全部、自分でやったことです」
「それでも、今困っていることに変わりありません」
鈴はティッシュを差しした。
「誰でもるはあります。切なのは、これからどうするかです」
その言葉に節子は顔をげた。
涼介も同じように優しいことを言った。
瞬、怖くなった。
しかし鈴は節子のを握らなかった。
「特別」だとも言わなかった。
机のに資料を並べ、つずつ説した。
借は法律の専へ相談すること。
活について利用能な公支援を確認すること。
齢や体の状態を踏まえて仕事を探すこと。
「つずつ理しましょう」
節子はその言葉を聞いて、初めて現実の面へ戻ってきた気がした。
翌。
紹介された弁護士事務所を訪れた。
という50代の弁護士が、借の類を枚ずつ確認した。
「まず、連絡はこちらで受けます」
節子は驚いた。
「取りての話、止まるんですか?」
「続きをめます」
その言葉を聞いた瞬、節子は泣いた。
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