"18万円の甘い嘘" 第11話
話が鳴るたび体が震える活。
ドアを叩かれる恐怖。
それがしでも止まる。
それだけで、世界が変わるようにえた。
は借の理をめることになった。
費用についても分割で相談できると言われた。
節子は何度もをげた。
その週。
鈴と緒に仕事も探した。
清掃。
軽作業。
内職。
62歳でも応募できる求はいくつかあった。
節子は清掃会社の面接を受けた。
さな会社だった。
社は履歴を見ると、
「齢は気にしません。真面目に来てくれれば」
と言った。
週。
採用の話が来た。
週3。
数。
以より収入は減る。
それでも節子は、話を切ったしばらく笑っていた。
田へメッセージを送った。
『仕事が決まりました』
すぐに返信が来た。
『良かった。本当に良かったです』
節子は携帯話を握りしめた。
以なら、この画面で待っていたのは涼介からの甘い言葉だった。
今は違う。
何かを売るためでもない。
を使わせるためでもない。
ただ配してくれるからの言葉だった。
節子はようやく、その違いに気づき始めていた。
清掃の仕事は楽ではなかった。
廊を拭き、トイレを掃除し、ゴミを集める。膝は相変わらず痛んだが、弁当のように速いラインへ追われることはなかった。
同僚には節子と同代の女性もいた。
「膝悪いの?」
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初に声をかけられた。
「しね」
「無理しない方がいいよ。いのは私が持つから」
節子は戸惑った。
「いいの?」
「その代わり、いところお願い」
笑いながら言われた。
誰も節子を「使えない寄り」と呼ばなかった。
失敗すれば注はされた。
それでも鳴られなかった。
仕事を終えると、節子はさな達成を覚えた。
2か。
3か。
活はしずつ落ち着いてきた。
賃のい1階の部へ引っ越した。
階段をらなくて済むだけで、膝はかなり楽だった。
引っ越しのには田も伝いに来た。
荷物はダンボール5箱ほどしかない。
「しい発ですね」
田が言った。
節子は部を見回した。
狭い。
古い。
それでも議と、以の部よりるく見えた。
「ありがとう」
「何がです?」
「全部」
田は笑った。
「私は話本しただけですよ」
「その本がなかったら、私、今ここにいなかったかもしれない」
田はしばらく黙った。
「だったら、今度は桂さんが自分を助けてあげてください」
その言葉は、節子の胸に残った。
節子は清掃の仕事に加え、でできる簡単な内職も始めた。
封筒の宛名をく。
箱を組みてる。
単価はい。
それでも、自分ので稼いだだった。
借についても、から定期に連絡があった。
理をめ、無理のない範囲で返済を続けていく。
かつて話が鳴るたび怯えていた節子は、ようやくで眠れるようになった。
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ある。
スーパーで買い物をしていると、に並んでいる女性のろ姿に見覚えがあった。
若い。
綺麗な髪。
そうなバッグ。
節子の胸がざわつく。
ムーンライトで、涼介の隣に座っていた女だった。
節子は咄嗟に顔を伏せた。
女性は節子に気づかず、そのまま会計を済ませてていった。
へ帰ったも、その姿がかられなかった。
若かった。
綺麗だった。
「私、何を張りってたんだろう……」
で呟く。
自分より40歳く若い女と競うために、い酒を注文した。
を借りた。
事を抜いた。
あの頃の自分をいすと、恥ずかしくてたまらなかった。
同に、涼介の笑顔も蘇った。
翌。
仕事が終わると、節子は宿へ向かった。
自分でも理由は分かっていた。
もう度、ムーンライトを見たかった。
戻りたいわけではない。
ただ、本当に終わったのか確かめたかった。
のへつ。
扉の向こうから音楽と笑い声が漏れている。
節子はいそこにいた。
扉がいた。
らないホストがてくる。
「いらっしゃいませ」
節子は首を横に振った。
「いいえ」
そして歩きした。
数歩んだところで、が止まった。
振り返る。
ネオンに照らされた『MOON LIGHT』の板。
あの、自分はあのを「救い」だとった。
誰かが待っている所だとった。
今なら分かる。
そこにあったのは仕事だった。
客をばせ、を使わせるための所。
涼介が悪いだったのかどうか、節子にはもう分からなかった。
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