"18万円の甘い嘘" 第12話
彼は仕事をしていただけだと言った。
ただ、節子はそれを本物のだと信じた。
「終わったんだ」
さく呟いた。
へ乗り、窓のを流れるネオンを見る。
胸は痛んだ。
それでもへ戻りたいとはわなかった。
に帰る。
机に座る。
内職の封筒を枚取る。
枚5円。
100枚で500円。
以なら馬鹿馬鹿しいほどいとったかもしれない。
しかし今は違った。
この5円には嘘がない。
節子が枚けば5円。
かなければ0円。
誰かの笑顔によって額が変わることもない。
枚。
また枚。
き続けた。
単調な作業だった。
けれど、その単調さが節子にはよかった。
半ほど経った頃。
区役所で鈴と面談した。
「桂さん、顔がずいぶん良くなりましたね」
節子はし照れた。
「ちゃんとべるようになったからかもしれません」
「仕事はどうですか?」
「続いてます」
「良かった」
公な支援についても、収入の状況にわせて見直しがわれた。
節子は言った。
「しずつでも、自分で暮らせるようになりたいです」
鈴は頷いた。
「焦らなくていいですよ」
借もしずつ減っていた。
いはかかる。
それでも、毎決まった額を返せば、いつか終わる数字になっていた。
ある夜。
節子の携帯話に、懐かしい名が表示された。
弟の茂だった。
「姉さん、元気か?」
何もまともに話していなかった。
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「どうしたの、急に」
茂はし言いにくそうにした。
「田さんってから連絡があったんだ」
節子は驚いた。
田は弟にまで連絡していたらしい。
「余計な配かけたわね」
「何言ってんだよ」
茂の声がしくなる。
「姉さん、俺の姉さんだろ」
節子の目から涙が落ちた。
ずっとだとっていた。
正雄がくなった瞬、自分には誰もいなくなったとい込んだ。
でも弟がいた。
疎になっていただけだった。
「今度、会いにくよ」
「こんな狭い部よ」
「部なんかどうでもいい」
週。
茂が訪ねてきた。
59歳になった弟は、昔より髪が増えていた。
「姉さん、痩せたな」
「今はちゃんとべてるわよ」
節子は簡単な料理をした。
茂は部を見回した。
「父さんと母さんのこと、覚えてるか?」
突然そう聞いた。
節子はし黙った。
「忘れるわけないでしょう」
の両親は酒に依し、庭は荒れていた。
節子と茂は若い頃から、
「あんなふうにはならない」
と言いってきた。
茂は俯いた。
「田さんから、姉さんが酒もかなりんでたって聞いて……怖かったよ」
節子は何も言えなかった。
「姉さんまで同じところへくんじゃないかって」
「ごめんね」
「謝るなよ」
茂は鞄から封筒をした。
「これ」
には10万円が入っていた。
節子は慌てて返そうとした。
「受け取れない」
「使ってくれ」
「借なら自分で返す」
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「借だけじゃなくて」
茂は姉の古いセーターを見る。
「自分にも使えよ」
節子はを止めた。
「姉さん、昔からそうだっただろ。自分には何も使わない」
その言葉に、涼介が最初に言った、
『もっと自分を切にしてください』
という言葉をいした。
同じ言葉なのに、今度は違って聞こえた。
茂は何も売ろうとしていない。
10万円を受け取ろうともしていない。
むしろ自分のを差ししている。
節子は封筒を握った。
「ありがとう」
翌。
久しぶりにを買った。
級品ではない。
普通のセーター。
かいコート。
そして、スーパーではなくさな定へ入った。
焼き魚。
噌汁。
ご飯。
鉢。
温かい定をに、節子は箸を持ったまましばらくけなかった。
以、ホストクラブでは晩に何万円も払った。
その頃、自分は昼の数百円を惜しみ、だけで働いた。
「本当に、馬鹿だったなあ……」
笑いながら涙がた。
でも今は、ご飯を自分のために買った。
誰かに褒めてもらうためではない。
誰かをつなぎ止めるためでもない。
自分がきるためだった。
それから1。
節子の活はきく変わらなかった。
朝起きる。
仕事へく。
帰宅する。
内職をする。
事を作る。
眠る。
派なことは何もない。
ただ、以とはし違った。
は必なにはつけた。
膝の診察にもった。
事を極端に削らなくなった。
「無駄」とっていたもののに、きるために必な支があると、ようやく理解した。
それでも夜になると、々を見た。
涼介が笑っている。
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