"18万円の甘い嘘" 第14話
以は写真を見るたび、
「あなたのおを無駄にしてごめんなさい」
と泣いていた。
今夜は違った。
「正雄」
節子は写真へ微笑んだ。
「私、まだやってるよ」
返済は続いている。
全部が終わったわけではない。
の傷も完全には消えていない。
夜に目が覚めることもある。
くでシャンパンの栓が抜けるような音を聞くと、体が張るもある。
それでも朝になれば起きる。
顔を洗う。
を着る。
仕事へく。
昼には自分で作った弁当をべる。
帰宅すれば、温かい噌汁を作る。
そんな々を、節子はもう「何もない」とはわなくなった。
62歳のあの夜。
ムーンライトの扉をけなければ、違うだったかもしれない。
涼介に会わなければ、貯も失わなかった。
借もしなかった。
仕事も失わなかったかもしれない。
けれど過は戻らない。
「もし」を何度考えても、あのの18万円は戻ってこない。
失ったも戻らない。
ならば残ったをきるしかない。
節子は写真を箪笥へ戻し、窓をしけた。
のたい空気が入ってくる。
くに京のかりが見える。
宿のネオンとは違う。
宅の窓。
の灯。
さなコンビニの板。
誰かの活を照らす普通のだった。
節子はしばらくそれを眺めた。
以なら、
「向こうには族がいる。私には誰もいない」
とっただろう。
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今は違った。
は清掃の仕事がある。
週末には茂が来ると言っていた。
来には田と昼をべる約束もある。
何より、自分自がここにいる。
節子はカーテンを閉めた。
布団へ入る、計簿をいた。
気代。
費。
賃。
返済額。
つずつ数字をく。
最に、そのの残額を確認した。
昔の節子なら、そこからさらに何百円削れるか考えていた。
今夜は違った。
余にだけいた。
『自分のため 3000円』
病院でもいい。
好きな事でもいい。
しい靴でもいい。
何に使うかはまだ決めていない。
節子はその文字を見て、さく笑った。
円の無駄も許せなかった女が、自分のために3000円を残した。
誰かの笑顔を買うではない。
誰かにされているとうためのでもない。
自分がをきるためのだった。
気を消す。
部が暗くなる。
以と同じ、の夜。
それでも節子は、もう自分を完全な孤独だとはわなかった。
甘い言葉に狂った代償は消えない。
借を返し終えても、あの受けた傷が完全になくなるとは限らない。
だが、その傷と緒にきていくことはできる。
節子は目を閉じた。
もう、涼介の笑顔を待つ必はなかった。
の朝、自分で目を覚まし、自分のでちがる。
それで分だった。
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