"片胸の息継ぎ" 第8話
「着買った?」
律子は驚いた。
「何で分かるの」
「その聞き方、絶対買いましたよね」
若いは々、変なところを見ている。
次の曜、律子は民プールへ客として来た。
仕事のとは違う入を通り、料を払い、更へ入った。
っている所なのに、つ側が違うだけで別の建物のように見えた。
清掃スタッフの女性がを拭いていた。
律子は反射に「お疲れさまです」と言いそうになり、やめた。
ロッカーでを脱いだ。
しい着を着る。
子。
ゴーグル。
鏡。
しばらくっていた。
誰かっている利用者に会うかもしれない。
同僚に見られるかもしれない。
傷のことを聞かれるかもしれない。
考え始めると、帰りたくなった。
その、70代くらいの女性が隣でを脱ぎながら言った。
「それしい?」
律子は瞬、自分に言われたのか分からなかった。
「はい?」
「着。きれいなね」
紺だった。
「ありがとうございます」
女性はそれだけ言い、先にプールへていった。
傷など見ていなかった。
見たかもしれないが、言わなかっただけかもしれない。
どちらでもよかった。
律子はプールへた。
初者レーンの端にった。
へ入る。
旅のよりたい。
まず歩いた。
往復。
往復。
それだけで帰ってもいいとった。
しかし、隣のレーンを泳ぐたちを見ていると、しだけ顔をつけてみたくなった。
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壁を掴む。
息を吸う。
顔をへ入れる。
すぐげる。
にが入った。
咳き込む。
恥ずかしくなって周囲を見る。
誰も見ていない。
もう度。
吸う。
顔を入れる。
今度はからし息を吐いた。
ぶくぶくと泡がる。
その音がのくできく聞こえた。
顔をげる。
息が入る。
また入れる。
吐く。
げる。
吸う。
須賀が何度もやっていたことだった。
こんな簡単なことを、老は何ヶも練習していた。
律子も10回ほど繰り返した。
それだけで疲れた。
そのは泳がなかった。
更へ戻る。
シャワーを浴びる。
着を脱ぐ。
傷が見える。
体はし赤くなっていた。
肩が温かい。
脚がい。
律子は鏡ので、自分の体が「使った」の体になっていることを、久しぶりにじた。
治療した体でも、検査される体でもない。
し疲れた体。
それだけだった。
帰りにコンビニへ寄り、アイスを買った。
豆ではなく、チョコレートを選んだ。
べたかったからだった。
須賀が戻ってきたのは、10の終わりだった。最に見てから週ほど経っていた。律子はプールサイドを掃除している途、い子が界に入った瞬、わずを止めた。
し痩せたように見えた。
森本がづき、で何か話している。
須賀は笑っていた。
律子は仕事を続けた。
声をかける理由はない。
ところがレッスンが終わったあと、須賀の方から来た。
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「子の」
律子は眉を寄せた。
「何ですか、それ」
「名聞いてなかったから」
「庭です」
「庭さん」
須賀はをげた。
「、子拾ってもらった須賀です」
「ってます」
「女、退院しました」
「よかったですね」
「で元気に俺を使ってます」
須賀は笑った。
妻は脚を骨折し、ヶく入院していたらしい。退院もので杖が必で、須賀は料理、洗濯、買い物までほとんどでやった。
「70過ぎて初めて洗濯の使い方覚えました」
「今まで誰が?」
「女」
「それはられますね」
「はい」
須賀は素直に頷いた。
「泳忘れたかとった」
「どうでした?」
「全部忘れてた」
でし笑った。
「でもまたやります」
「25メートル?」
「まだ21で止まってるから」
律子は瞬迷った。
それから言った。
「私も、このプール入りました」
須賀の目がきくなった。
「泳げるんですか?」
「ほとんど泳げません」
「仲じゃないですか」
「緒にしないでください」
「俺、先輩ですよ」
「21メートルで?」
須賀は声をげて笑った。
律子も笑った。
それから須賀のレッスンを見ることに、以ほどろめたさをじなくなった。
自分もへ入ったからかもしれない。
から観察するだけだったとは、の音の聞こえ方まで違った。
須賀が顔をへつける。
泡がる。
腕。
腕。
顔が横へ向く。
が面へる。
ほんの瞬。
吸う。
再びへ戻る。
以の律子には、それが技術に見えていた。
今は違う。
息継ぎとは、度息を捨てる作なのだと分かった。
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